第十四話:心配
もう何時間パソコンに向かっているだろう…。
始めは動物病院を探していたのだが、チョコが心配でたまらないので
自分なりに、いろんなホームページを見てチョコがどんな病気なのか調べていたのだ。
途中で親が帰って来て、私に何か言っていたが適当にあしらった。
大体予想はつく。勉強のことだろう。
パソコンで犬の病気の資料を見ているうちに、たくさんの悪い予感がしてきた。
チョコの今の症状だけでは難病から薬で直せるものまで、たくさんの病気にあてはまるのだ。
どうか。どうか…。
神様なんて存在を信じたことはないけれど、
チョコの病気が出来るだけすぐ治るようなものであるように、と心から願った。
目が乾いて痛くなっても、パソコンの画面を見続けた。
眠ろうかとも考えたけれど、チョコのことを思うと
目を閉じても悪い事ばかり浮かんできて、眠るなんてものじゃなかった。
あぁ。早く明日になって…。
チョコを一刻でも早く病院に連れて行きたい。
このままだと、私まで心配で心臓が潰れてしまいそうだった。
長時間私に使われているリビングのパソコンも、本体が熱くなり疲れているように見えた。
時計も見ていなかった私は、テレビの上にある掛け時計を見つめた。
もう4時だった。驚く間もなく、気が抜けてしまった私は
自分がこのパソコンと同じように疲れている事に気付いた。
倒れるようにソファに転がる。
目を閉じると、疲れに助けられてチョコの心配も忘れて寝ていた。
ん…。
私の名前を呼ぶ声で目を覚ました。
私の真正面に、母の顔がある。
『あ…。おはよう。』
リビングのソファから起き上がると、母にパソコンの電源が点きっぱなしだったと怒られた。
時計はバスの時間の15分を指している。
急いで制服に着替えて身仕度をし、
チョコの病院の為にあるだけの金を財布に入れて朝食もとらずに家を出た。
バス停まで走っていると、道路を目的のものが通り過ぎていった。
初めてバスに置いて行かれたショックに私はしばらく立ち尽くしていたが、
家に帰る気も起きず、歩いてチョコのいる河川敷まで行くことにした。
これまで【学校から河川敷】の道順で行っていた私は多少迷いながらも、
どうにかチョコの居場所まで辿り着くことができた。
チョコは私を見て、驚いた顔も見せずにいつもどうり寄って来た。
あまり寝ていないのと、歩いてここまで来た疲れとで、草むらをベットに寝転がった。
ここから、学校が小さく見える。
勉強からの解放で私はまた眠気に襲われた。
まだ午前中だし、ゆっくりできると思い
私はそのまま眠気に体を委ねた。
気持ち悪いぐらいの空腹感に目を覚ます。
チョコを見ると、なぜかまた隣に月本がいた。
月本と目が合う。
『前にもこんな事あったね』
自然な問い掛け。
『ほんとに、起こしてくれたらいいのに…』
『はは。 あのさ、昨日は崎田さんに八つ当たりしちゃってごめんな』
『ん。こっちこそ』
何か話さないと恥ずかしい空気だったので、私から話を持ち出す。
『昨日家に帰ってから近くの動物病院探したんだ。で、今日チョコを連れて行こうと思ってるの』
月本は少し考えているように間を空けて、
『いいと思う。でも制服は良くないと思うよ。さぼってるのがばれるかもしれないし』
『あぁ、そうか…』溜め息と一緒に私が言う。
『てか俺もついてってい?だったらうち近くにあるし、男もんだけど服貸すよ?』
『本当?じゃあお言葉に甘えて貸して貰おうかな』
チョコを置いて、月本の家まで歩いた。
月本の家はマンションで、しかも一人暮しのようだった。
部屋に入って適当に服を着替えて、制服は帰りまでここに置いてもらうことにした。
着替え終えて月本を呼ぶと『こっちに来て』と言われて、
声のする方に向かうと月本がご飯を作っていた。
少しすると机にいくつかの料理が並べられた。
お腹をすかしていた私は心行くまで昼食を食べた。
『ありがとう。おいしかった』
月本もご飯を食べ終え、二人で家を出てまた河川敷へと向った。
空腹も満たされて準備万端な私達は、チョコを呼んで私の誘導のもと病院を目指して歩き出した。
ありがとうございました。
もうそろそろラストスパートかと…。
これからもよろしくお願いいたします。