第十話:苛立ち
『すいません。遅くなってしまって』
ドアを乱暴に空ける音と私の荒い息遣いが静かな部屋のなかで響く。
ここまで静かになるとは思いもしなかった為、さすがに気恥ずかしくなった。
5班の机に駆け寄ると、何故か皆はいないし
ポスターは下書きまで完成していて、
私を図書室に行くよう言った先輩らしき人が一人で色を塗っているところだった。
その先輩に、
『あの…。資料持って来たんですが。』と控え目に聞く。
すると
『あぁ。ごめんね。なかなか帰って来ないから皆で適当に意見出し合って書いちゃった。
とゆうわけで色塗りは私一人でやるから、
申し訳ないけどその資料返してきてくれる?
他の子達には先に帰ってもらったから、資料返してそのまま帰っていいから。』
と半ば強引に帰らされてしまった。
仕方なく図書室に戻り、何にも使われることのなかった本を
元の位置に戻し終え帰り道を歩いている途中、
資料を捜すのに手間取った自分自身と、
こき使っておいて有無を言わせぬ態度で追い返した先輩に苛立ちを感じていた。
私はこのままだとチョコに会ってもストレスをぶつけてしまいそうで
行かないほうがいいと思い
久しぶりに、以前はよく使っていた停留所からバスに乗った。
何人かの同じ学校の生徒が一緒のバス内にいて、ざわざわと話をしていた。
イライラしていた私はその雑音にも腹をたてた。
今朝バスから見た木々も今見つめると、美しくもなんとも感じなかった。
その時、人間の心の醜さを感じた。
気分が良い時は、目に見えるもの全てを美しく感じ、
気分が悪い時には、色あせているようにさえ見えてくる。
自分だけかもしれない。こんな風に考えるのは。
それでも仕方ないと思えた。
自分は小さな人間だから。
すぐに怒り、喜び、悲しむ。
一時的な感情に流されて物事を考えしまうのだ。
でもチョコに会えないのは辛かった。
始めに比べ大きく膨れ上がっていた私の怒りも、
チョコと会えない淋しさには成す術もなくしぼんだ。
チョコ、会いたいよ…。
読んでくださってありがとうございます。
なかなか言いたいことが文章にできない自分が
とても悔しいです。
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