勝てない戦争
「それって、どういう……」
その瞬間、ドアの方からドンドンという音が聞こえた。
「チッ! こんなにも早く……。王子、早く! 早くお逃げください!」
「お前一人を置いて行けと言うのか!? そんなことさせ」
「そんな悠長なこと行ってられる相手じゃないんです!! だって、相手は……」
ドアが一気に開く音がした……。地獄へのカウントダウンの始まりだった。
「……もう、縁を切ったと申したはずでしょう? お父様」
ぼくの問いかけに父親は、うっすらと笑みを浮かべながら答えた。
「それは、そっちが一方的に言っているだけであろう。
人魚の国の王位継承者。リロス・アントアネット」
一息置いてから父親は続けた。
「いや、アンデス・リー・ミカロス。王位継承者、そして本来の人魚としての名は」
「その呼び名で呼ばないでって、何度言ったら分かるの? それに、王位は継がないわ」
「拒否権などお前にはない! 何としてでもお前には王位の座、受け継いで貰うぞ!!」
そう言い父親が手を出すと一斉に城の手下どもが攻撃を始めた。
でも、こんなんでもぼくより格下なんだよ。
そんなのが幾ら集まっても結果なんか見えてんだろ?
「なっ……、どういうことだ!?」
「……リロス?」
「弱いんだよ。もうちょっと骨のある奴はいねぇのか!?」
人魚だから、水使えるのは当然でしょ? だけど、普通の人魚じゃ使えない技を持ってんだよね。
『ビリッ……。ビリリッ!』
「……雷?」
ぼくだけ、唯一雷系の術を使える人魚なんだ。術式では最強の父親ですら使えない。
「ほう。いつの間に……」
「お父様は、どうせぼくの術なんて弾き返すでしょ? 雷でも」
「さぁ? それはどうかね?」
雷のビリッと言う音が部屋中に響き渡る。それと同時に電気がついたり消えたりしてた。
(……流石に、ここで電撃ぶっ放して城を半壊させるわけにはいかないな)
ぼくは咄嗟にそう判断して、城の外へと出て行った。
「逃げたか? 追いかけるぞ!!」
そう言いながら、父親は生き残っている数人の手下を引き連れて追いかけてきた。
国の近くに海があるのはご存じの通り。そこの周りには民家と呼べるものは何一つない。
攻撃するには丁度いい。
海の手前で止まった。砂嵐が静かに吹く。
「……強くなっても相変わらず、その馬鹿な脳みそは治っていないらしいな」
「……」
「何故ならそこを見てみろ」
そう言いながら指をさした場所は海だった。
「海は、私たちの世界の出入り口なんだぞ? そこを戦場に選ぶとは……」
「うるさいのよ!! 黙ってなさい!!!」
電撃と、水の鉄砲弾を一気に攻撃を始めた。
……。暫くして。
「さて、負けたんだ。継承、してもらうぞ」
「……、ああ」
負けた。もう、希望持てないな。
あーあ……自由な生活ともおさらばか。あっけな。
「さ、帰るぞ」
嫌だ。帰りたくない。もう少しだけ、この世界にいたかったよ……。
「おい、待てよ!」
「……!!」
「今更来ても遅いぞ。人間」
「リロス。お前、ふざけるなよ……」
「……」
「散々、人と一緒にいておいて、突然消えるなんて、許さねぇぞ!? お前は……」
「ごめん……なさい。でも、ぼくがこれ以上此処にいたら」
「!」
「きっと、この国はなくなっちゃうよ……?」
一生懸命笑ったけど引き攣ってるのが自分でもわかった。
目から何かが滲み出る。
「王子、ありがとう……」
ぼくは、父親に連れられて自分の本来の居場所へと引き戻された。




