もう友達なんだ!
海から、上がったぼくたちは無言で何も言わなかった。
翌日、ぼーっとしながら一人で街を適当に歩いてた。
と、言うか王子が幾ら話しかけても反応してくれなかったから、今この現状になってるわけで。
その時、後ろ斜め下辺りから声がした。
「あ、人魚のお姉ちゃん」
振り返ると、そこにはこの国に来て行った千珠の家の帰り道で会った女の子が立っていた。
「! ああえっと、スイラちゃん? だっけ?」
「うん。覚えててくれたんだ」
そう言って、スイラは笑っていた。
「この前ねお兄ちゃんがお姉ちゃんの武術見て『女でもあんなこと出来るんだな』って感動してた。
いーなー。あたしも武術習いたいなぁー」
「え? 女の子でも習えるでしょ?」
「うん。でもね、パパもママも『女なんだから、もっと女の子らしいもの習いなさい』って。
怒ってくるんだよ」
そう言いながら、いじけた。
「でもね、いつかぜーったい反対押し切ってでも、習うんだ!」
「ふふん。いい意気込みね。でも、なんでスイラちゃんは武術やりたいの?」
「国は確かにお姉ちゃんが守ってくれるかも知れないけど、あたしもこの国の人だもん。
この国のみんなを守れるような人になりたいの。この国には一杯お世話になったもん」
そう言って、笑うスイラの顔が冗談を言ってる顔じゃなかった。
ああ、本気なんだってその時思った。この国が本当に好きなんだね。この、ヴァレリア国がね。
「おーい! スイラー!! 帰るよー!」
そう言いながら、スイラの近くによってきた男の子が、ぼくの顔を見るなり
「ああ! リロスだー!!」
と、大声で叫んだ。
「Σ(゜□゜;) え、ええ!? な、何!!? 何ですか!!!?」
「いや、ワリー。驚かせちまった?」
「えーっと、まぁ一応……」
「それはすまなかった。リロスってどっかで武術習ってたのか?」
「そんな大層なもんじゃありませんよ」
そう言い苦笑い。
「私の居たところで軽くやってただけですよ。それだから、国では落ちこぼれですよ。武術では」
「やっぱ、そこが人間との差なのかな? お前より強い奴なんて相手してたら、
命がいくらあっても足りないよ」
「あはは~。一応こんなのでも妖怪ですからね。そりゃ、人間よりは強くなければまずいですよ」
「なぁ、リロス。ため口でいいんだぜ?」
「!」
「だってさ、もうお前はこの国の住民だろ?」
「え……居候ですよ(汗」
「ううん。充分お前はヴァレリアの住民だ。この国じゃ、ため口が一般常識。
それに、もうオレたち友達だよ」
今……なんて? とも……??
「と……、と?」
「あたしもー!」
と、スイラも入ってきた。
「……」
「な? もう、みんな友達だぜ。だから、お前もため口で喋れよ! お、じゃぁオレたちはこれで」
「あ、ああ」
「あ、そうそ。リロス、さっきマンクが探してたよ?」
「え? 王子が??」
「急いで城戻った方がいいぞー。じゃぁな。いくぞ、スイラ」
「うん! またね~。お姉ちゃん」
「さようなら……」
さて、王子が探してるだって。マジでか? 一応もうお城戻ろう。
お城に戻ると、玄関で王子が仁王立ちして待っていた。
「た、ただ今戻りましたー……。王子様、ごきげんよう」
ぼくは、機嫌悪そうな王子を目の前に苦笑い気味に言った。
「リロス……」
「は、はい!!」
「いい加減、お前ため口で喋れーーー!!」
そう言って、叫び出した。
「!!?」
「あと、俺の事は王子じゃなくって、マンクって呼べーーー!!」
「お……、マンク様突然何が……?」
「様をつけるな!!」
「な、何事ですか!? 本当に……」
「俺さ、お前とは既に友達だと思ってたんだ」
王子はそう言って俯いた。
は? 何? なんでそんな話に……?
「なのに隠し事されて、俺の事友達だと思われてないって気がついたんだ」
むしろぼくは、居候させていただく家の人としか思ってなかったから、当然だけど。
「よくよく考えたら、お前っていつも俺と話すとき敬語だし、王子って呼ぶってことに気がついた」
えー? 今更ー?
「だから、俺お前とちゃんとした友達になりたいから……だから……」
そう言う王子の顔は半分泣きかけていた。
その様子を見て、ぼくは少し小さくため息をついた。そして、手を差し伸べて
「わかりまし……分かったよ。じゃぁ、もう隠し事しないから。ね?」
「ホントか!」
その瞬間王子の顔が一瞬にしてパアアっと明るくなった。単純な奴だなぁ
「じゃぁ、友達な♪ リロス! ぜってー、俺のこと呼び捨てで呼べよ。あと、ため口で話せよ!」
「はいはい」
終始、苦笑い気味のぼくだった。
その時、大地震が来た。
「!? な、なんだ? 急に」
「王子、早く何かの物影の下に!」
「あ、ああ」
近くにある階段の下が空洞で助かった。すぐに地震は収まった。でも、ぼくには違和感があった。
「どうかしたのか? リロス」
「王子、今のは自然災害じゃありません」
そう、すぐで分かった。その違和感が何か。
「私と同じ、人魚一族がもうじきここへ来ます」
この感じ、忘れたりしない。絶対に。あの、
全てを地獄へと誘い込んだあの匂いを……。




