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人魚姫の末路  作者: 妹明
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人魚さんちの体質事情

 「最近、おかしいんだよねぇ~」


 数日後、ぼくは千珠せんじゅの家に遊びに行っていた。

「おかしいのはいつもだろ? あんたの場合」

「おかしいのは、ぼくじゃなくって王子の方だっての。ってかぼくおかしくないもん」

「いやいや。お前の感覚は大切なねじを一本失ったロボット並みに変だ」

「随分、失礼だなぁ~!」

「んで? 王子のどの辺がおかしいんだって?」

「いや、だからね。最近さぁ、寝不足みたいなんだよね~」


 ただ単に、目の下にクマみたいなのが出来てると言うだけなのだが……。

「それってさ、あんたのせいじゃない?」

「どうしてさ。海に行くときには音立てないようにして行ってるもん!」


 補足。人魚は最低でも週に一日。外気に弱い奴は一日一回。必ず海に行かないと死んでしまう。

デリケートともいえるが、アホみたいに弱い生物なのです。

ちなみに、ぼくは一日一回タイプです。

正直面倒だけど、地上に住んでみたいしでも死にたくないので頑張ってます☆


 「気配で分かるとか、あんた考えないわけ?」

「だって、所詮人間でしょ? 気配なんて、追えないよ~」

「人間にだって、気配追える奴はいるらしいぞ。そう言うのは、武術や剣術の達人と呼ばれる者達で、

その、マンクだっけ? も、一応は武術の達人寸前ぐらいのレベルだろ? なら、追えるんじゃない?」

「あんな、弱い奴がぁ!? あり得ないっての!」

そう言って、爆笑しているぼくに水をさすように、千珠が真顔で言った。


「あんたってさ、相当マンクの事気に入ってんのね」

「え……?」

その瞬間、ぼくの笑いも止まった。

「いや、だってあんた。親以外の話って自分も含めてしないじゃない? それなのに人の事を

話すなんて、あんたが気に入ってるんじゃないかなぁって思っただけのことさ」

そう言って、ヘラっと笑うとお茶を持ってくると言い残しキッチンの方へと向かった。


 あんな王子の事、ぼくは好きなのか? 好きって言うか、気にっているのか?

あんな、虫みたいな奴が? あり得ないっしょ……。

死んでも認めない。


 そう、頭では思っていたけど奥底で思ってた。

『多分、合ってるな』っと。


 その気持ちをぼくは海の奥底に捨てるようにして、無視をした。


 その日の夜。いつものように、ぼくは窓を開けた。最近、日に日に暑くなってきているから、

海に入るのも気持ちいいんだよね。とか、思いつつ、バルコニーに出ようとした瞬間。


 「おい。どこに行くんだ? リロス……」

後ろから、聞き覚えのある声が。恐る恐る振り返ると、そこには

上半身を起こした状態の王子がいた。

「……。いえ、別に眠れないのでちょっと外の様子でも見ようかと」

と、嘘を適当について寝かせよとしたら、嘘だろ? 一蹴されてしまった。

「俺も、ウィリスも知ってんだ。お前が夜な夜な城を抜け出し、どこかへ行こうとしているのを」

「……」

「何を隠れてコソコソやってんだ? お前は」

「……。それを知って、貴方をどうするおつもりで?」

「場合によっては、城外に行くことを禁ずる」

そう言った王子の目は本気で怒っている目だった。説明するのも面倒だったので

「そうですか。では、来ます? 行く先へと……」

とだけ言い手を伸ばした。



 少し悩んだみたいだが、王子は無言で縦にうなずくと月明かりで照らされたぼくの所まで

来て手を添えた。


「では。振り落とされぬように」

そう言い、笑うぼくに王子は若干ビクンとなっていた。

そんなことは気にせずにぼくはいつも通りバルコニーから飛び降りた。

王子の手を握って。

出ていく瞬間、人間の気配がしたけどすぐに立ち去った。

多分、ウィリスさんだったんだろうと思いつつ海へと一直線に向かった。


 海に着くと、王子は不審そうな顔をして、ぼくに聞いた。

「お前はここでなにをするつもりなんだ?」

「マンク様、お忘れかもしれませんが。私は、これでも人魚の端くれです。

海に来てやることなんてひとつですよ」

ぼくは王子に笑いかけた。王子は、さっきの表情を一ミリも変えることなくぼくを見た。

論より証拠。だと思って、ぼくは人魚の姿に戻り海へと飛び込んだ。


 「リロス? なにやってるんだ!? この時期の海はまだ冷た過ぎて泳げんぞ??」

「マンク様。私を何故城に引き入れたのか、ご自分でお忘れになったとでも仰るのですか?」

「……」

「私は、あくまでも人魚です。本来なら水の中にいる方が自然体なのですよ」

そう言ったぼくに王子は何も返せないらしく、無言だった。


 暫くしても動かないので、ぼくは海の奥へと向かった。その時、

ボォォンという飛び込み音がした。びっくりした。

だって、海は冷たいから無理と言っていた王子が海に入ってきたのだから。

「マン……」

「お前に出来て、俺に出来ないことなんてないだろ?」

そう言い、笑いかける王子はそろそろ息の限界地を迎えたような顔をしていた。


ぼくはあわてて王子の手を握った。人魚に触れてる間は水の中でも息をし続けられるからね。

「……!」

「息、楽になったでしょ?」

「どんな魔法だ?」

「人魚さんちの体質事情上、触れた人間は水中でも呼吸が出来るんですよ。

 それに、人魚は本来水の生き物ですから一日のどこかで必ず水中にいなければ……」

と、ここでようやく深夜の消失理由を述べた。すると王子は

「それなら、海まで来なくても城のプールで」

ぼくは、その意見に首を横に振った。

「何故だ?」

「海じゃなきゃ、駄目だからです。私のいた世界ではプールなんてものは存在しませんし、

 第一人魚は淡水生物じゃありませんから」

「そ……うか」

王子はそれっきり無言になった。

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