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4 【エシル視点】

早速ブクマと評価をいただきまして、ありがとうございます。

ストックがあるうちは複数話更新していきますので、よろしくお願いします。


 もう、あれから十五年が経つのか……。


 ――あの日。

 あれだけのことが起きたというのに、市井の人々は何事もなかったかのように平々凡々とした日々を送っていた。

 あの場にいた三人だけが影響を受けたとは、にわかには信じられなかった。


 アレを目の当たりにした時はこの世が終わったと思った。

 聖母とは一体何だったのか。

 元々おとぎ話程度の言い伝えしか知らなかったが、ますます謎が深まった。

 それでも『力』は本物だった。

 

 私は瞬時に消えたあの『力』を探して国中を彷徨い続けた。

 あの『力』を手にすることさえできたなら、望みは何でも叶うのではないか――。

 王家が固く口を閉ざす中、すべての聖教会の聖母像を確認した。

 どこの聖母像もただの像でしかなかった。


 このままくたびれ果てて人生を味わうことなく死ぬのか――そう思っていた時、流れ着いた街であの顔を――十五年前とほとんど変わっていないあの子を見た。

 しばらくは震えて動けなかった。


 ――なぜ?

 ――どうして?

 まさか刹那の瞬間に永遠の若さを願ったの?!



 自分が見た情報を理解するのに時間がかかってしまった。すぐには理解が追いつかなかったのだ。

 だがついに手がかりを見つけた。

 手に届くところに答えがある。

 興奮していきなり全力で掴んで壊してしまわないように、そうっとそうっと近づかなくては。






 あの子の後をつけて家を突き止め、それからというもの、来る日もくる日も行動を観察した。


 パン屋の一人娘。

 取り立てて悪い噂も良い噂もない月並みな娘。

 十人並みの器量。

 

 王家はもちろんのこと聖教会ともなんの関わりもないらしい。

 どういうこと?

 何がしたいの?


 それにしてもパン屋の娘として生まれてきたとはどういう意味なのだろう?

 ただの他人の空似だとでも……?

 いいえ! いいえ、絶対に違う。そんなことあるはずがない。


 確かめなければ。

 やはり直接本人と話す他ない。

 徐々に距離を縮めて本音を引き出すのだ。



   ◆◆◆   ◆◆◆



 驚いた!

 あの子は真っさらな状態だった。

 十五歳のまま生きていた訳ではなく、本当に十五年前に生まれて育ったらしい。

 それでも気になることを言っていた。


 ――夢を見るのだと。


 夢……ふふふ。それが鍵なのかもしれない。

 夢ならば対処のしようがある。

 実家の辺境伯家は腐っても王家の血を引く家系。

 宝物庫から持ち出した宝石や貴重品を売って生活の糧にしていたが、それでも手放さずにいた秘宝がある。

 子どもの頃から一度も触らせてもらえなかった、今では作り出せる人のいない『魔道具』――『真実の日記帳』。


 この日記帳は書き込む人間の内なる本性を、(いや)が応でも顕にする。

 秘めたる想いも、隠していた願望も、本人すら気がついていない欲望も、全てが明らかになるのだ。






「これは日記帳よ」

「日記帳?」

「そう。朝起きて、もし夢を見た気がしたら、この日記帳を開くの。夢の内容を書き留めておこうと思うだけでいいの。最初のうちは思い出せないかもしれないけれど、続けていくうちに書けるようになると思うわ」

「はあ……」



 日記帳への記入を勧めると、やる気のなさそうな答えが返ってきた。

 それでも、ここまで築いた関係性を思えば、一行も書かないということはないだろう。

 書き始めてくれさえすればこっちのものだ。

 一文字でも書けば魔法にかかるはず。



 あの時何が起こったのか。

 あの子はどうなったのか。

 あの力をどこにやったのか。

 ――全部聞かせてもらいましょうか。

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