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26 小さな疑念

 今日はエシルさんとレイモンドをお呼びして、お友達三人のお茶会です。

 あまり形式ばったお茶会にはしたくなかったのですが、さすがに私の部屋にお茶とお菓子だけでは、おもてなしとはいえない気がしました。

 滅多に使わないのに用意してもらうのは気が引けましたが、それでも全く使わない訳でもないと勇気を振り絞り、お世話係に可愛らしいティーテーブルをお願いしました。


 お世話係はお茶会に参加された経験がおありなのか、それはそれは見事なテーブルと椅子を私の部屋に運び込んでくださいました。

 食器もカトラリーも新品の物だそうです。

 お茶もお菓子も王宮に納めている商会の人気の品を取り寄せてくださったとのことでした。




 さすがにレイモンドも、今日は窓から入って来ないでしょう。

 ――そう思いながら窓辺に寄ると、止まった馬車からエシルさんとレイモンドが降りているところが見えました。

 お二人で誘い合って来られたのでしょうか。

 すぐにお社に来られるかと思ったのですが、お二人は何やら立ち話をされています。

 お話しなら、お茶会でできますのに。

 まあ、程なくいらっしゃるでしょうから、私は落ち着いてお迎えしませんと。






「やあ、ベス。今日は何だかいつもと違うな?」

「レイモンド。ご挨拶もなくいきなりそんな――申し訳ございません、当代様。私もご挨拶がまだでした。本日はお招きいただきありがとうございます」

「うふふ。お二人とも、これは非公式なお茶会ですのよ? エシルさんも畏まらないでくださいね」


 私がそう言うと、レイモンドは、「ほらな」と微笑まれ、エシルさんは渋々うなずいてくださいました。

 お二人が席に着かれてすぐに、お世話係がお茶とお菓子を持ってきてくださいました。

 どうしたらこんなに時間ぴったりに運んでこられるのでしょうか。


「今日のお茶とお菓子はお世話係が流行りの物を用意してくださったのです。私は不案内ですが間違いない品を選んでくださったと思いますので、どうぞ召し上がって」


「まあ、素敵。美味しそうですわ」

「オレもいただこう」


「そういえば、お二人は申し合わせて一緒にいらっしゃったのですか?」


 先ほどの光景を思い出してお聞きしただけですのに、お二人の手が同時に止まり、口に運ぼうとされていたカップが宙に浮いてしまっています。

 聞いてはいけなかったのでしょうか?

 正直、私はまだお茶会のホステス役のお勉強が十分ではないのです。


「別に。オレは遅刻しないよう来ただけだからな」

「私もですわ。早すぎても失礼になりますでしょう?」


 ……あら?

 ご一緒にいらっしゃったのでは? なぜそのようにおっしゃるのですか?


 お客様同士が一緒に来られるのは滅多にないことなのでしょうか?

 それとも男女が一緒に来られると、確か――『醜聞』というのでしたっけ? それに該当するのでしょうか?

 もしかして、見て見ぬふりをするべきことだったのでしょうか?

 マナー違反であればお許しいただきたいです。

 ……ただ。二人揃ってそんな風に慌てて言い訳をされますと、私が随分と悪いことをしたみたいな気持ちになります。



 それからはエシルさんが楽しい話題を振ってくださって、何とかお茶会らしいほのぼのとした雰囲気になりました。

 ですが、会話の折々に、エシルさんとレイモンドは、時々二人で見つめ合っては何かを伝えあっているようでした。

 私にはそのような眼差しを向けてはくださらなかったのに。




 お二人が帰られた後、ああでもないこうでもないと、お茶会を振り返って自分の至らないところを見つめ直していたのですが、どうしても同じことをぐるぐると考えてしまいました。

 お茶会の間中、何だか私だけが仲間外れのような――いえ、何を考えているのでしょうか。

 お二人とも私のことを気遣って楽しく過ごしてくださったではありませんか。


 それでも少し寂しく感じたのは事実です。

 それは、お母様とお会いできない寂しさとはまた違う、今まで感じたことのない寂しさでした。

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