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10 【国王視点】

 十五年前のあの日から全てが思うようにいかない。

 何もかもがこの手のひらからこぼれ落ちていく。

 今座っている玉座もそのうちサラサラと崩れて跡形もなくなりそうだ。


 ……我は王ぞ!


 大声でそう叫びたかったが、今では小声でしか喋れない。

 大きな声を出そうとすると、喉が焼けるように痛み、唇がピクピクと痙攣する。

 こんな症状が出るようになったのはいつからだったか。もう思い出すことすらできない。



 医者たちは口を揃えて、「原因不明」と言う。

 フン。医者の評判が当てにならないことがよくわかった。

 それにしても原因不明とは……まさか本当に……まさか……な。



 イライラしていたところに青い顔の従者がやってきた。


「お、恐れながら陛下……」

「今度は何だ?」

「は、はい。厨房にネズミが大量発生しまして――」

「な! ネズミだと!?」

「は、はい。すべて殺して厨房の壁も床も洗い清めましたが、その――ネズミが這いずり回ったと思われる食材は全て廃棄することになりまして――」


 従者が汗を拭って言い淀む。


「どうした? 新しい食材を運ばせればよいだろう」

「は、はい。それが、そのう――城下から運んで来るのに少々時間がかかりますゆえ、すぐには調理ができず――はい」


 何が「はい」なのだ?


「……! おい! 待て待て。そろそろ昼食の時間ではないか。では――」

「は、はい。夕食までには何とか――」

「この国の王がっ! うぅぅ。国王が昼食を食べられないとは何事だ! ぐっ」

「も、申し訳ございません」


 くそっ。怒鳴らせおって。喉が痛いではないか。

 だが、こんなことがあってよいものか。

 それもこれも、すべて聖母の為せる技なのか?

 何世代も前のツケを、今、私が払わされているのか?

 どうして私なのだ? なぜ今なのだ!


 言い伝えにあるような『血の盟約』を初代は本当に結んだのか?!

 初代は馬鹿だったのか?

 それとも聖母にいいように騙されたのか?


 だがあの聖殿に不思議な力があるのは確かだ。

 王位継承権を持つ公爵家だけでなく、王族が降下した家の者までも聖殿に遣ったが、誰一人として扉を開けることができなかった。

 最終的に我が子までをも派遣したのだが、結果は同じだった。


 我が一族は拒絶されたらしい。

 王族の血をどれだけ垂らそうとも扉が開かないのだ。

 つまり、聖母と決裂したのだ。


 私たちはこの先どうなるのだ?

 命までは奪われないようだが……。

 ――いや、本当にそうか? まさかなぶり殺しにされるんじゃないだろうな?


 私の体は至るところが蝕まれ、妃も子どもたちも信じられないような不幸におそわれている。

 この十五年間というもの、状況は日増しに悪化している。来年はどうなっていることやら。


 とうに五体満足とは言えない状態だが、この先どれくらい生きられるのか。

 果たして生きていて幸せと言えるのか?


 ――まさか、死んだ方がマシだと思えるような、そんな未来が待っているのではないだろうな?

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