第19話 古い家で遊ぼう!
田舎に来て、農作業をやった!
この家は1階建てで、葉月が寝転がっているところ以外にもいくつかあり、部屋同士はふすまで隔てられているようだ。
おぉ、畳の部屋なんて久しぶりだーっ!!w 私はテンション上がって、ウキウキで靴を脱いで畳に上がろうとしていると、二見さんの大声が飛んできた。
「黒縁さんっっっ!!!!!!」
私はびっくりして振り返ると、二見さんはぜえぜえと息を切らして玄関に立っていた。 どうしたの。
「何?」
「何これ??!!!」
二見さんはそう言って、大きなビニール袋を2つ取り出して見せる。 二日分の食料として持ってきたものだった。
食料の責任を持った私が、金もないのに身を切って調達したものだ。 中には冷凍食品などがどっさりと入っている。
「それは二日分の食料だよ」
私が普通に説明すると、二見さんはいきなり地面に倒れこみ、地面をたたいて絶叫し始めた。 「あ”あ”ああぁぁあぁぁっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」と叫んで、ダンダンと土間の地面を叩きつけていく。
あら、どうしたのかしら。 もしかして、食事に気を使うタイプとか? 冷凍食品嫌いなの、普通においしいわよ。
そんなことをしていると、玄関に別の人が来た。 おばあちゃんだ。
「フミー!」
祖母は出入り口に立って、大量の野菜を抱えて立っていた。 私が振り向くと、祖母は元気な笑顔で言ってくる。
「これ、使いなさい! あんた、痩せてるわねえーっ! ちゃんとしっかり、食べなさい! ひょッハッハッ!ww」
祖母にバシンと叩かれながら、私は野菜を受け取る。 思わず笑みをこぼしながら、ありがとうとお礼を言った。
帰っていく祖母を見送っていると、床に倒れていた二見さんが音速で起き上がってきた。 黙って私の腕から野菜をもぎ取っていく。 うわ、びっくりした。
二見さんは台所の方へ向かうと、すさまじい速度で料理を作り始めた。
おぉ、そういうことか。 どうやら、料理を作ってくれるらしい。
自分の包丁まで持ってきていて、料理する気まんまんだったようだ。 じゃあ、料理は二見さんに任せようかな。
私はふうと一息ついていると、汗臭くなった自分の体が気になった。
そういえば、風呂ってこの家にあるんだっけ。 この田舎にはそんなに来た回数も多くないし、この家に関しても、私は詳しくは知らないのだ。
私は台所を離れて、家の中を歩き始めた。
しかし、家の中を回っていくが、風呂は見つからない。 私は足を止めて、古びた柱に手をかけて家の中をながめていると、前に調べたことを思い出した。
一般家庭に風呂が普及したのは、意外と最近のことで、たしか戦争の後だった。
この家は、もっと古くに建てられた家だと聞いた。 なら、風呂は無いのかもしれない。
うーん、でも風呂は入りたいなぁ。 何とかならないものか。
私は考えながら、今度は外に出ていった。
ふと見ると、家の横で、銀杏が何かやっていた。 足元には大きなドラム缶が置いてある。
私は近づいて声をかける。
「銀杏さーん、何やってるんですか?」
「風呂作れないかなと思ったんだよ。 この家、古くて風呂がないみたいだから」
おぉ、私も同じことを思っていたよっ! 私は近寄ると、しゃがんで銀杏の手元を見ていった。
そこら辺に落ちていたものを組み合わせて、風呂を組もうとしているみたいだ。
銀杏は「いやこれをこうすれば……」とかブツブツ言いながら、材料を手に取って考えている。 ドラム缶はちょっと汚そうだが、なんとかなるかもしれない。
「作れそうですか」
「あぁ、多分。 あとは水と、燃やすものを調達できればいいんだけど」
「じゃあ、わたし用意してきますっ!」
「よぉし、頼んだっ!!」
そんな感じで私たちはノリで会話をして分かれた。
水は、近くにある井戸水を使えばいい。
この村は、すぐ横に森がある。 燃やすものなんて、そこら中に転がってるでしょっ!
私は調子に乗って、叫びながら森の中に突入していった。
「フゥウゥウゥウッッッ!!!ああぁあっぁっっ!!!!!wwwwww」
奇声を上げながら森の中に突入していき、薪を拾っていくうぅっ!イェイっ!ww
薪を拾って家に戻ってくると、私は今度は井戸水を汲んでいった。
最初は汚かった井戸水も、何度も汲んでいると使えそうな奇麗さになった。
私と銀杏は、バケツで水を運んでドラム缶の中に流し込んでいく。
風呂の形は、すでに完成していた。 火を燃やす台を作って、その上にドラム缶を置いている。 そばには、上るための台も用意しているみたいだ。
私は最後の水を運んでいきながら叫んだ。
「銀杏さーんっ!! これで終わりだよおおおぅっ!!」
「よおーっし、燃やすぜぇっっ!!!!」
銀杏は畑作業で疲れていたはずだが、風呂を作って楽しくなってきたみたいだ。 今までのどんよりした様子からは想像できないほど、元気になっている。
私は嬉しくなり、意味不明に気分が上がって、一緒に叫んだ。
「燃やそうぅぅっっ!!!!!」
「燃やすぜええええええええええええええええっっ!!!!!!」
「燃やすよおおおぉおぉおおっっ!!!!!!!!!!」
「フゥウウゥウゥツッッ!!!!!!!!!!wwww」
「イェエエエエエエエエェエェイェツッッ!!!!!!!!!!!wwwwwwwwwwwwwwww」
ノリに乗りながら、私たちは火をつけた! 火はチャッ〇マンでつけるのである。 現代人かよっっ!!! カチッとね。
ぼうぼうと燃えさかる炎を見て、私たちは並んで腕を組み、満足げな顔を浮かべた。 よし、なかなかいいじゃないの。
私たちは風呂を作り終えると、一緒に家の中に戻っていった。
家の中では、二見さんがノリに乗って猛スピードで料理を作っていた。 すでに畳の上には、料理が並べられている。
「おぉ、すごっ!」
私と銀杏は、驚いて声を上げた。 天ぷらに、煮つけに、よく分からん和え物もあり、種類が多いのだ。
私は感激して、つまみ食いする。 野菜のてんぷらを一つ、さくっとね。
「んーっ!!|うまいっ!!!!!」
「フォオオオオオオオオオッッ!!!!!!!wwwwwwww」
「え? あぁ、そう」
二見さんはクールな感じで、淡々と答えながら料理を作り続けている。 なかなかやるわね、この子。
水道はなくて、持ってきたペットボトルの水を使わなきゃいけない。 コンロは無くて、かまどでしなきゃいけない。 だというのに、よくここまで作れるものだ。
ところで、畳の上には葉月はいない。 どっか行ったのかな。
と思ってると、玄関から葉月の声が飛び込んできた!
「先輩ーっ! 魚がとれましたよっ!!」
葉月は大声で叫びながら、ドタドタと玄関から入って土間を走ってくる。 片手にはバケツをぶら下げていた。
魚をとってきたの? あなたさっき、畳の上で死んでなかったっけ。 元気ねぇ。
「どこでとったの?」
「山に入ったら、すぐに川があるんです。 そこで魚が取れるよって、先輩のおばあちゃんが教えてくれたんです」
葉月のもう片方の手には、竹で作った釣り竿が握られていた。
「それはどうしたの?」
「先輩のおばあちゃんがくれました」
へぇ、おばあちゃん凄いな。 たぶん、この釣り竿は作ったものだろう。
いつも思うけど、昔の人ってなんでも自分で作る人いるよね。 ものが無かった時代に生きた人にとっては当たり前なんだろうけど、私はそういうのに憧れる。
今の時代、何でも用意され過ぎていて、自分が何もできない子供みたいに思えて情けなくなるのだ。
私は葉月から魚の入ったバケツを受け取ると、台所へ向かった。 まだ動いていた魚を殺して、さくっとさばいていく。
なぜか二見さんが持ってきていた小麦粉を貸してもらって、油で揚げ始めた。
かまどでやるのは自信がないので、持ってきていたカセットコンロを使う。
料理していく私を見て、二見さんが言ってくる。
「黒縁さん、料理できるんじゃない」
「うん。 まあ、ちょっとは」
私は口ごもりながら答える。 私が作れるのなんて、たかが知れてる。
唐揚げとか肉じゃが程度なら作れるが、種類数も少ないし、料理が得意な人には遠く及ばない。
こういう時、料理ができると言っていいのか不安になる。
二見さんは料理を作り続けながら、言った。
「食生活、気をつけなきゃだめだよ。 黒縁さん、いつもあんな食事してると病気になるよ」
「うーん、でも仕方ないんだよねぇ。 キッチンもないし」
私は箸で魚を突っつきながら答える。
持ってきた冷凍食品のことを言ってるんだろうか。 まあ、冷凍食品はふだんそんなに食べないんだけど、食生活が乱れていることには変わりない。
私も食生活には気を付けたいのだが、色んな意味で余裕がないのだ。
料理をしていると、後ろから声が聞こえてきた。 葉月たちが後ろで、銀杏と一緒にバリバリと料理を食いまくっていた。
「うめえな!」「おいじいいぃーっ!」「これ美味しいぞ!」「いえ結構です、一人で勝手に食べててください」。
お、結構会話弾んでんじゃない。 仲良くなっていってるみたいでよかったわ。
私たちは料理を終えて、本格的に食べていった。 やはり二見さんの料理はおいしく、いくらでも口に入った。
すごいなぁ、こんなに料理作れるなんて。 私が大して作れないからか、素直に感心するのである。
そんな感じで結構食った!
「はー! ごちそうさまっ!」
私は片づけを終えて、畳に手をつく。 あれ、なんか妙な感覚だ。
気づけば畳は、ホコリっぽくなくなっていた。 二見さんが料理しながら掃除してくれたみたいで、家全体がホコリっぽさが消えている。 凄い、同時進行である。
私は満ち足りた気分でいると、風呂のことを思い出した。
さっき料理を食べながら銀杏が外に行って、風呂を作り続けていたみたいだった。 もう銀杏は落ち着いてるけど、終わったんだろうか。
私は振り向いて、まだもりもり食べ続けている銀杏に聞く。
「風呂は?」
「出来たぞ」
じゃあ、さっさと入ってしまいたいんだけど。
別のほうを見ると、葉月ももう食べ終えていて、畳の上でだらけている。
「葉月、先に入る?」
「いえ。 ………………先輩、先に入っていいですよ」
葉月は一呼吸遅れて言った。 ん、何? なんか妙な感じがしたけど、今の間はなんだろう。
まあいいか。 私は立ち上がると、外へ向かった。
外に出ると、もう真っ暗になっていた。
ドラム缶風呂の近くに来ると、火は消されていた。 湯気が出ていて、ちゃんと風呂らしくなっている。
おぉ、いいじゃない。 ただの風呂だが、工夫して作ると、ありがたみが増して感じられる。
私は身をよじって、汚れた服を脱いでいった。 昼間の農作業で絞れるぐらい汗が出たから、納豆を混ぜた雑巾みたいな臭いを発している。
素っ裸になると、そばに置かれた台を上ってドラム缶に近づき、湯加減を確認してみる。 しかし、熱くて手を飛びのかせた。
放っておいたらぬるくなると考えたのか、少し熱めに用意してくれたようだ。
井戸水で湯加減を調節すると、体を洗って、いよいよ風呂へと入ることにした。
私は水面に浮いていた木の板を沈めながら、そっと足を入れていく。 これはドラム缶の底が熱いから、やけどしないようにと用意したものだ。
……とその時、どこからか大声が聞こえてきた。
「先輩ーっ! 一緒に入りましょうっ!!!キャーッっっっ!!!!!!」
見ると葉月が下着姿で、こっちに向かって全速力で走ってきていた。 後ろには二見さんが慌ててついてきていて、葉月を止めようとしている。
私は「え?」と間抜けな声を出して振り向いていると、足を滑らせて板を踏み外し、ドラム缶の熱い底まで突っ込んでいった。
「ぎゃーっ! あついっ!!」
冷凍食品も食べよう!(黒縁)
一人で食べてて(二見さん)




