第13話 2回目の『部活』、そしてサークル系イベントへ!
一人暮らしを始めた!
私たちは一通りアパートをチェックすると、外へ出かけることにした!
クーラーは効かないし、さすがに現代の夏を過ごすのは無理である。 また街へ出て、活動できる場所を探すことになったのだ。
そんなわけで来たのは、近くの大きな駅である。 店がたくさん入っている巨大な駅ビルからは、ゾロゾロと人が吐き出されている。
「先輩ぃ……。こんなところ探して、どうするんですか?」
横を歩く葉月はすでに暑さでやられてクタクタである。 そんな葉月を引っ張るようにして、私はズンズンと歩いていく。
受け入れられないからと言って、引っ込んでてもしょうがない。 堂々と活動できる場所を探すのだっ!
ふだん臆病なのに、なぜか私はこういう時は堂々とするのである。
しかし、問題発生! 駅ビルの中をさまよい始めて1分。
周りには奇麗すぎてピカピカしている飲食店が並んでいる。 私はとっさに吐き気を催した。
「オ”エ”エエエエェェエエ””エ”エエェェッッ!!!!!!!!!」
「先輩っ、大丈夫ですかっ!!!ww」
ヤバい、こんなところにいたら気が狂いそうになる。
こういう汚いものをどこまでも分離しきっていて、上澄みしか残ってないような、生物らしさも人らしさもどこへ行ったのかよく分からないような場所が、私は大の苦手なのだ。
……え、こんなの今どき普通だろって? そうなのよ、普通なのよ。ははっ!w
周りの人たちは、なんてことない様子で、当然みたいな顔で歩いている。
相変わらずよく分からないファッションしてるわねぇ、自分たちの精神の形すら知らないで。
中身を問うことをせずに、表面だけいい感じのものを寄せ集めてるのを見るとAI生成のエロ画像みたいで笑えてくるわ。
意味もなく周囲に合わせて、何もわかってないみたいなボケっとした顔で歩いているのを見ると頭痛がしてくる。
まったく、なんで私はこんなところに来たんだろう。 街が嫌いなのに、毎度毎度、自分から突っ込んでいってしまうのだ。
葉月に肩を支えられながら、私は何とか立ち上がった。 ぜえぜえと呼吸を乱して、人々に奇異の目を投げられながら料理店の通りを歩いていく。
「先輩、頑張ってください!」
「うん。 お”え”ぇっ……ゴバババババババ」
通路を抜けて、私は気を取り直して再び歩き始めた。
しかし、探せどやっぱり良い場所がない!
エスカレーターに乗って上に上り、駅ビルの中をさまよって、今度は地下街を歩いて……。
数十分ウロウロしたのち、結局普通のチェーン店のコーヒーショップに入ることになった!
一人で先に席に座って、私は一人で頭を抱える。 あぁ、もうっ! なんで良い場所がないんだろう?
大体、街の中にいたら息苦しくなる。 どこに行っても、動きはすべて決められている。 地下鉄もデパートも、どこをどう動くべきかは決まっている。 今どき階段の端っこに座り込むなんて、もってのほかだ。
時代が進むごとに、精密機械なんかの技術も発展してくるし、覚えるべきことはきめ細かくなっていく。 時代が進めば、息苦しくなるのは必然なのか?
加えて最近では、スマホで調べれば、何をするにもやり方が出てくる。
観光地での撮影の仕方も、野外キャンプでの火の消し方すら、一から十までズラッと出てくる。
やけどするから、水をかけたら絶対ダメなんだってさ。 火ぐらい自由に消させろおおぉおっぅつっ!!!!!うわあぁあああぁあぁっっ!!!!!!!!!! バシャーンッ!!!ギャーッ!!痛いっっっ!!!!wwwwwww
街にいる限り、もはや外れた行動をすることは出来ない。 精密に張り巡らされた『行動の網目』を、人々はただなぞるように行動している。
……え、当たり前だろって? 考えつくされた上に成り立ってるものなんだから、その網目にも意味があるんじゃないかって?
そうよ、その通りよ。フハっ!w
私も言っておきながら、なんにも否定できないのだ。
これだけ型が決められてて息苦しいんだから、そりゃ創作も盛り上がるはずよねぇ。 私はそんなことを考えながら、テーブルの下で財布をいじり、持ち金を確認する。
金は2000円しか入っておらず、これが今月使える残り全てである。
ヤバい、金がなーーーいっっ!!!wwwwwwwwww 誰か助けてえええええええええええええええええええええええええぇぇぇっっっ!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
入金するのは、月末だ。 あぁ、これから数週間どう生き延びるんだろう。
私が絶望していると、葉月たちがコーヒーを持ってテーブルにやって来た。
あぁ、もういいわっ! 金のことは忘れて、私はクールに話し始める。
「考えたんだけど、葉月は仲間が欲しいんじゃないの?」
一番安いコーヒーを、優雅に持ちながら言ってみる。 小指を立てて、私きまってるううぅぅつ!イェイっ!ww
葉月は席に座りながら、聞き返してきた。
「仲間?」
「うん。 自分の小説と同じような趣味の人っていうか……。 そんな人と一緒に活動したんじゃないの?」
私はスマホを取り出して操作すると、画面を2人にも見えるようにする。
私たちが普段利用している大手の小説サイトには、『サークル』という機能がある。 簡単に言えばグループを作ることができる機能だ。
ファンタジー系のサークルがあったり、オカルト系のサークルがあったり、色々ある。 そこでは互いに好きな作品を語ったりなどの情報交換をしたり、最近ではイベントを開いたりもしているらしい。
例えばオカルト系のイベントなら、話を聞くところによると、最近のオカルトネタをまとめて紹介したり、初心者向けに導入イベントを開いたりしているとのことだ。
入ったからといって、義務があるわけではない。 私も最初は一つだけ民俗系のサークルに入ったのだが、特に何もせず放置している。
「知ってますよ、それは」
葉月は鈍い反応で、口を開いた。 葉月はコーヒーには手を付けず、膝の上に手を置いてかしこまったようにして話す。
「うーん、でもなんか違うんですよねぇ」
そう言いながら、複雑な顔で私のスマホの画面を見つめている。
違うって、どういうことだろう? オカルトはオカルトでも、自分とは違うタイプに思えるってことだろうか?
二見さんは、黙って話を聞いている。
……どうでもいいけど、二見さんってほとんど喋らないから存在感がない。 葉月が強烈だから、たまに一緒にいるのを忘れそうになる。
少しの沈黙を待って、私は言った。
「よし決めた! 一度、サークルのイベントに行ってみようっ!」
「えぇ、行くんですか?」
途端に葉月は、苦い顔になる。 なんで、そんなに嫌がるんだろう? 他人事だと思って、私は調子に乗る。
「いいじゃん。 ともかく行ってみれば、何かあるかもよ。 よーっし、レッツゴーっ!」
「先輩、静かにしましょう。 他の人が見てます」
というわけで、日を改めてオカルト系のサークルイベントに来た!
会場はいたって普通の、築40年ぐらいの古いビルである。 周りを見ると、街の真ん中で、ビルや街路樹がにょきにょきと生えているような場所だ。
「よぉし、行こうっ!」
私は一つ掛け声を上げると、2人を引き連れて建物へと入っていった。
建物の表面は古かったが、中は新しい様子だった。 リフォームでもしているんだろうか、時代のちぐはぐさを感じる。
壁や照明は、最適に奇麗に照らされていて、学習と安定の中に無意味に沈み込んだようなデザインである。 しかしよく見れば端っこにゴミが落ちていて、一枚岩ではないことがうかがえる。 よろしい、これぐらいならいいでしょう。
アホみたいに頷いている私の横で、同じことを感じているのか否か、葉月が言った。
「なんか、圧迫感があるんですよねぇ」
葉月はジトッとした目で、廊下の様子を眺めている。 廊下には人が歩いていて、部屋に出入りしているのが見える。
このビルでは、私たちが普段使っているサイトのサークル系イベントが、よく行われているらしい。
今日も3つほどのイベントが行われているらしいから、廊下を歩いている人たちは参加者だろう。
目的の部屋に入っていくと、席に座っている人たちが十人以上いた。 立って話している人も同じぐらいいる。 まだ人は集まりかけのようで、部屋の半分も埋まっていない。
葉月は部屋に入ると黙り込んで、私の後ろに背後霊のようにしてついてくる。
部屋の中を進んでいき、真ん中あたりの適当な席に座った。
葉月は席に座ると、うつむきながらも時折周りに目をやって、ちらちらと他の人の様子を窺っているようだ。
他の参加者の人も、多くはうつむいているようだった。 だがよく見ると、みんな同じように周りをうかがっているようにも見える。
なんだ、考えてることみんな同じなんじゃないの? この孤独が増えて寂しい時代に、わざわざ現実で集まるぐらいだから、友達を探しているように見えるのだ。
横を見ると、葉月は睨むような顔をして周りを見ている。 あなた、なんて顔してるの。
「……声かけなくていいの?」
「何言ってるんですか先輩っ! こんなところで人に声かけたら、誘拐されますよっっ!!!」
葉月はさっと鋭い表情になると、ピリピリした口調で言ってくる。
いや、あなた何のためにここに来たの。 仲間を作るためじゃなかったのか?
「でも、友達が欲しいんじゃないの? まずは話しかけて……」
「先輩は分かってないんですよっ! 今どき、警戒しすぎて悪いことなんて無いんですよ!!! ヤバいですよ、どこに変な人がいるか、分からないんですよおおっっ!!!」
葉月はガタッと立ち上がると、大声で怒鳴ってくる。 もはや部屋の全員に聞こえているぐらいの声だ。
「いや、でも……」
「警察なんて、今どきあてにならないんですよ!!!! 村社会じゃないんですよ、個人主義ですよっ!! 助け合いの精神なんても”う無いんでず”よ”おおおぉっっっっ!!!!!!」
葉月はおいおいと泣き始めると、私の肩を激しくゆすり始めた。 あなた、どうしたの。
葉月が言うことは、私も分かる。 同じ状況だったら、私も怖いだろう。
でもそんなこと言ったって、始まらないじゃんっ! 私は腕を振り払った。
「うるっさいっ!! まず話しかけないとっ!!」
「ギャーッ!先輩っ!!! 誘拐されますよ、さらわれますよおおぉぉっっ!!!」
大声でわめきたてる葉月を置いて、私は席を立って、人を探していく。 誰でもいいから、適当に話しかけてみよう。
私は自分では堂々とできないが、人のこととなると別に問題なく話しかけられるのだ。 要は、チキンなのである。
私は一番無害そうな女の人に目をつけて、話しかけていった。
「すみません、ちょっといいですか?」
「え? はい」
「この人が友達欲しいみたいで、話しかけてみようと思って……」
説明する私の後ろで、葉月はフーフーと野生動物のように息を荒くしている。
その人は親切にも話をしてくれることになった。
「いいですよ。 えっと、名前は……」
そんなこんなで、2人は話すことになった。 ……でも、会話はいまいち盛り上がらなかったみたいだ。 残念っ! 一朝一夕に友達ができるものでもないだろう。
そうこうしているうちに、イベントも始まった。
内容はちんぷんかんぷんだった。 葉月は「こんなの常識ですよ」などと言っていたが、私はさっぱりついていけなかった。
しばらく話を聞いていた私だが、途中でイベントを抜けることにした。 休憩時間になったのをきっかけにして、2人を置いて先に建物の外に出た。
ハンバーガー食べたい……。(黒縁)




