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悪夢
「おはよう御座います。ソリトード」
女の声が聞こえて、煩わしく思いながらも重い瞼を上げる。
「おかあさま…」
なぜ、彼女がここにいるのだろうか。
彼女は僕の顔の左半分を見るなり、がくっと崩れ落ちて泣き出してしまった。
「わたくしは、あなたになんてことを…」
長い眉毛が涙で濡れている。
「ごめんなさい……本当に」
「…おかあさま」
くり抜かれた左眼の奥がズキリと痛んだ。
「謝ら…ないで、下さい。おかあさま」
僕は麻痺の残る顔で歪に微笑んだ。
「僕は……おかあさまが幸せならばそれでよいのです」
「ソリトード……」
僕は彼女の艶やかな琥珀色の髪を撫でると、そっと抱きしめた。
「おかあさまの幸せは、僕の幸せ……僕の体はおかあさまのものです」
抱きしめる手をを解くと、彼女は僕と顔を合わせた。真っ暗な穴のような黒い瞳に吸い込まれそうだ。
「ソリトード」
彼女は僕の脇にするりと手をかけて持ち上げ、ベットに座らせると僕の胸元に耳を埋めた。
「ソリトード……ありがとう、ごめんなさい」
次の瞬間、僕は真っ暗な闇に包まれた。