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陰キャアーチャーの合理的ダンジョン攻略 ~何って、ダンジョンの外から矢を放って無双してるだけだが?~  作者: 艇駆 いいじ


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70.合理的恋!

「……ねえ、英夢くん聞いてる?」


 比奈の声が聞こえて、僕はようやくハッとした。


 体育祭から数日。昼休み。教室。どうやら昼食を取りながらボーっとしていたらしい。


 比奈は僕の席に自分の席をくっつけ、じとっとした視線をこちらに向けてきている。

 これは、彼女が何か話していたパターンだな。


「英夢くん、今の話聞いてなかったよね?」


「いいや、ちゃんと聞いてたよ。でも、それと同時に凄いことに気が付いたんだ。この世界はもしかしたら5分前に作られたんじゃないかってことに。例えば僕らが今までの17年分の記憶を持って5分前に生み出されたと仮定するならば――」


「今の話聞いてなかったよね?」


「……はい、聞いていませんでした」


 比奈の言葉に圧を感じ、咄嗟に折れてしまった。さすがに誤魔化せなかったか。


「影山くん、最近ずっとボーっとしてますよね。寝不足ですか? 私もつい本の続きが気になって、時々夜更かししてしまいますけど……あまり体にはよくないですよ?」


 比奈の横には冬香もいる。体育祭以来、僕らはこうして3人で昼食を取るようになった。

 どうやら冬香は一部の男子に人気があるらしく、今まで以上にからまれることが多くなったのは考えものだが。


「比奈、ごめんだけど、もう一回言ってくれるかな? 重要な話なんだろ?」


「うん! 実はね、リッキー先輩と刹那さん、最近いい感じらしいよ!」


「……リッキー先輩?」


「力丸先輩のことだよ!」


 いつの間にそんな風に呼ぶくらい仲良くなってるんだ?

 それに、思っていた以上にどうでもいい話題だな……。


「でも、刹那さんは力丸先輩のことをあれだけこき下ろしてたのに……どういう風の吹き回しなんだ?」


「刹那さん、最後の力丸先輩の戦いを見てたんだって! それで、カッコいいって思い直したらしいよ!」


「なんだそれ。あれだけ努力は無意味だとか言ってたのにか?」


「これは私の予想なんだけど! 刹那さんはリッキー先輩のことは嫌いなんかじゃなくて、ただリッキー先輩に不知火先輩のことを諦めて欲しかっただけなんじゃないかなって思うんだよね! そしたら今回の心変わりも、今までの発言も辻褄が合うから!」


 それはかなり結論ありきな予想だと思う、と言いたかったが、比奈の自信満々の様子を見ると言い出せなかった。


「恋ってやっぱり素敵だよね! リッキー先輩が最後に不知火先輩に立ち向かってる姿は最高にかっこよかったし、刹那さんじゃなくてもイチコロだよ!」


「ですよねぇ……今回の体育祭でカップルが誕生したなんて話も小耳にしますし。きっと物語みたいにロマンチックなドラマがあったんだと思うんです!」


 あれ、これは僕が少数派な感じか?

 僕は二人のように恋愛脳ではない。ロマンチックとかドラマチックとか、そんなことをいちいち期待するような人間ではない。


「……けど、あの人はちゃんと掴み取ったんだな」


 格上相手に一対一で勝利し、弱小チームで優勝。最後には想い人に振り向いてもらおうなんてどれも身の丈に合わないような理想で、本来なら叶わないはずだった。

 だが、彼は自分で掴み取った。何が意味があって、何が無意味なことかは最後になるまでわからないということ、か。


「恋、ねえ……」


 物思いに耽りながら窓の外を眺める。これまで考えてもみなかったその一文字について、少し思考を巡らせる。


「英夢くんは、恋してるの?」


 ……やっぱり、そうなのかもしれない。ここ数日ずっと考えていたことの答えが、そこにあるのかもしれない。

 自分ではそう思えない。……が、そうなのかもしれないと思えてしまう。合理的に紐解いていくと、この非合理的な言葉が最後に来てしまう。


「――してるのかも、しれない」


 ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!



 教室中に響き渡る爆音。それは、比奈が自分の机を叩いた音だ。

 彼女は目を輝かせながら顔をこちらに近づける。


「詳しく!!」


 あ、なんか変なスイッチを入れてしまったようだ。


「いや、そういう意味じゃないんだ。恋と言っても比奈が想像している意味ではないというか……」


「どういうこと?」


「僕が恋してるって言ったは……ダンジョンのことなんだ」


 ずっと考えていた。心のどこかにある、不満足感。


 迷惑系配信者に続いて、学院の中でも稀有とされる優等生(オリジナル)、そして果ては学院最強の生徒を撃破。

 実質的に学院最強の名をほしいままにした僕だが、心は満たされない。その理由をずっと考えていた。


 それは、もはや僕が人間相手では満足できなくなったからではないだろうか。


 確かに合理的ハメ技を決めたときは楽しかった。だが、それはダンジョンでフロアボスと戦っていた時のそれとは少し違う。おそらく大きな違いは、格上との戦いでないことだ。


「影山くん? なんだか目が怖いんですが……」


「……英夢くんって、無機物に好意を持つタイプの人だったんだね。いやまあその……応援はするけども……」


「そういう意味ではないと思いますよ!?」


 今日は金曜日。やらなければならない課題もない。よし。やはりやろう。


 明日、僕はダンジョン踏破の自己最高記録を塗り替える!!

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