63.合理的バフ効果!
「おいおい……いきなり土下座かよ!」
「ハハハハハハ!!」
3人組は大声で腹を抱えて笑い始めた。僕は額を地面に擦り付けながらそれを聞く。
次の瞬間、誰かの靴が僕の頭を踏みつけ、そのままタバコを消すようににじった。
「ポイントを集められていたから何か理由があると思ったが……わかったぜ。お前はこうやってコソコソ逃げ隠れるのが得意だから、時間いっぱい粘ろうとしてたんだな」
次の瞬間、僕は横腹に蹴りを食らってそのまま吹っ飛ばされた。木の幹に体がぶつかり、もたれかかるような姿勢になる。
すると、リーダー格のメガネの男が僕の髪を掴んで顔を寄せ、睨みつけてきた。
「だが、残念だったな。どうやら<隠密>を使ってたみたいだが、そっちの女は気配を消せていない。おまけにお前自身のスキルは秘匿スキルの中でも初級。余裕で看破されるぞ」
「さしずめ初心者アサシンって感じじゃね? まあ1年生にしてはよくやってる方でしょ」
「ち、ちが……」
次の瞬間、僕は顔面を殴られ、ちょうど3周地面を転がった後に倒れ込んだ。
「何もわかってねえ1年坊主ってところだな。興味も湧かないから、黙ってポイントを差し出すならこれ以上は手は出さないでおいてやるよ」
「ち、違う……」
「何が違うってんだよ、ああ!?」
違う。何もかも。
「わかってないのはアンタらだって言ってるんだよ」
僕はカーペットを広げるのを逆再生したように勢いよく飛び起きると、脱兎のごとく冬香の方に駆け寄った。
「冬香!! 頼む!! 僕にバフを掛けてくれ!! あれがないと負けちゃうよおおおお!!」
「わ、わかりました……」
冬香はやや引きながら、身体能力向上魔法を僕の体に掛ける。
おお、なんか体が軽い! エナジードリンクを飲んだ後みたいだ!
僕はバフの味を噛みしめながら、再び3人組の前に立つ。
「なんだお前? もしかして俺たちと戦うつもりか?」
「やめとけよ。フィジカル雑魚アサシンが1回バフ貰ったくらいじゃ変わんねえよ」
僕が一歩踏み出した刹那、3人がそれぞれ武器を構え、飛び掛かってきた。
棍棒。槍。杖。どれも学院で貸与しているで実戦をするための、殺傷力を落としたものだ。……とはいえ、まともに食らえばかなり痛いだろう。
「死ねええええええええ!!」
「僕は雑魚アサシンじゃない。世界で一番の合理的なアーチャーだ。それを見誤ったのが運の尽きだったね」
次の瞬間、3人は僕の回し蹴りを食らって同時に吹っ飛ばされた。
ふう、すっきりした。
大人と変わらない体格の男を3人を一蹴か。それもかなりの距離吹っ飛んでいて、木の幹にぶつかって伸びているようだ。
「さてと、ポイントはどうやって回収したらいいのかな?」
3人が転がっている方へ歩いていくと、彼らの体が半円形のバリアに囲まれているのが見えた。六角形の一面に触れてみると硬く、容易には破壊できなさそうだ。
「なるほど、スマートウォッチがバイタルチェックをして、危険だと判断されたらバリアが展開されるのか。体育祭だけじゃなくて冒険にも使えそうだな……」
今度は僕のスマートウォッチに視線を移す。点数が1650に変化しているので、この3人の10点は自動で追加されているようだ。
「うっ……お、俺は……」
立ち去ろうとしたその時、リーダー格のメガネが目を覚まし、頭を触りながら起き上がった。
「ま、まさか……俺たち全員、やられたのか!?」
「ええ、そうですよ。僕の蹴り一発でね」
「ヒッ、ヒイッ!!」
男は僕の存在に気づき、顔を引きつらせながら後ずさった。
「お、おかしい!! お前みたいな、ヒョロヒョロの根暗があんな蹴りを出せるなんて!」
――さて、最後の作業といこうか。
「ええ。確かに僕は弱いですが、彼女ーー『史上最強の白魔術師・紫乃浦冬香』がいるので」
「ま、まさかバフだけであんな蹴りを出せるようになったということか!?」
「ええ、先輩は赤組ですよね? 本陣に伝えてきてください。『史上最強の白魔術師』の恩恵を受けた『合理的アーチャー』がいると」
僕が力丸先輩に協力するにあたり、課した条件の3つ目。
それは、必ず冬香とのツーマンセルで行動をすることだ。
冬香はバフを掛けることが出来る。彼女のバフ効果が強すぎるということにすれば、僕は思う存分力を出せるようになる。
さすがに本気を出すと冬香が規格外になってしまうので、多少は加減するけどね。
「か、影山くんってやっぱり強いんですね……」
「これくらいなら大したことないよ。それより、冬香はよかったの? こんな感じで続けるつもりだから、体育祭の後の学院生活で話題になっちゃうかもしれないけど」
「はい。私、ずっと自分に自信がなくて……こういうことでも、自分が変われるきっかけになるかもしれないので!」
冬香は両手の拳をグッと握って、僕に見せてきた。多分、彼女にとって自信があることを示すポーズなのだろう。
「じゃあ続けるよ。僕の感知できる範囲でこの辺りにいるのは……あと25人!」
「そ、そんなにですかあ!?」
ゾロゾロと顔を出してくる生徒たち。僕は彼らを見据え、ニッと笑った。
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