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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
後日、エリーはロシアンマフィアが襲撃する予定のツバキの旅館を訪れていた。
湯船につかって日本酒を嗜んでいる彼女のもとへツバキの護衛のカラスが現れる。
「先日はこちらのフクロウが世話になった。改めて礼を言おう。」
「良いんだよ、アイツの調子はどうだ?」
「概ね回復した。万全にはもう少しかかるが……。」
「ん、まぁなによりだな。」
そしてエリーが自分でまた日本酒を猪口に注ごうとすると、彼女の手から日本酒の入った徳利が消えた。
「まだ礼は終わっていない。」
そう言って、装束を脱ぎサラシだけを巻いた姿になったカラスはエリーの隣に入浴した。
「ここからは拙い手前ではあるが、私が注がせてもらおう。」
「はっ、別に良いのによ。まぁもらえるもんは貰うか。」
エリーの猪口へとカラスは日本酒を注ぐ。それをエリーはグイッと一気に飲み干した。
そして何度かエリーの猪口へとカラスが日本酒を注ぐと、彼女はエリーにあることを問いかけた。
「それで、今宵……この旅館が襲撃されるというのは本当か?」
「あぁ間違いないぜ。」
エリーは端末を取り出すと、それを弄ってある画面を表示させる。そこには地図が映し出されていて、ピコピコと常に赤い点が現在地へと向かって近づいてきていた。
「今はまだ遠いが、メイの計算じゃ夜には着くって話だ。」
「……無粋な輩共だ。」
「全くだぜ。野郎どもにゃここは勿体ねぇ。」
そしてまたエリーは注がれた日本酒を飲み干すと、彼女はチラリと山の方角へと視線を向ける。
「ったく、女が入ってる風呂の覗き見とか趣味悪いぜ?」
そう言ってエリーは、そばに置いていたカバンから血液の入った試験管を取り出す。
その血液を手のひらへと集めると視線の先へと向かって言った。
「撃て。」
その言葉と同時にバシュッと彼女の手から何かが放たれる。
「捕まえろ。」
続けざまにそう命令すると、エリーは湯船から上がり着替えを始めた。
「何をやった?」
思わずそう問いかけるカラスに、エリーは服を着ながら言う。
「ん、ライフルスコープの反射が見えたんだ。だからそこに向かって攻撃した。多分当たってるはずだ。」
そしてジャケットを羽織ったエリーはカラスとともに旅館を出て、ライフルスコープの反射が見えた地点へと急行する。
二人がその地点へとたどり着くとそこには、迷彩服を着込んだ男が足を抑えて転がっていた。
彼の近くにはスナイパーライフルが1丁落ちている。
「こんなもんで覗きたぁいい趣味してんなぁ……ん?」
エリーは男の胸ぐらを掴むと軽々と片手で持ち上げた。
「まぁ誰の指示は大方想像はつくが……一応聞いとくぜ。誰の差し金だ?」
「カッ……い、言うわけ無いだろ。」
「あぁ、なら結構だ。」
興味をなくしたようにそう呟いたエリーは男から手を離すと、地面に落ちていたスナイパーライフルを拾い上げ、男へと銃口を向けた。
「こ、殺すなら殺せ。」
「あ?勘違いすんなよ。」
そう言ってエリーは男の足へと狙いを定めると、容赦なく引き金を引いた。
「グアァァァァ!!」
山に男の悲鳴が木霊する。
「もういっちょだ。」
ライフルのコッキングを済ませ、エリーは男のもう片方の足も同様に撃ち抜いた。
「まぁ、これで逃げられることはねぇだろ。あとはそっちに任せるぜ。こういうのも得意だろ?」
そう言ってエリーはカラスの方を向いた。
「あぁ、尋問、拷問は専売特許だ。任せてもらおう。」
そしてカラスが胸元から小さな笛を取り出すと、山全体に甲高い音を響かせる。
それから少しするとカラスの配下達が続々と集まって来た。
「コイツを尋問しておけ、たっぷりと時間を掛けて……な。全ての情報を抜き出すまではくれぐれも殺さぬよう気を付けろ。」
「承知しました。」
「それと、コイツのようにこの周辺に潜んでいるやつがいる可能性がある。それの警戒にもあたれ。」
カラスから命令が下されると、彼女の配下達は消えていった。
それを見送って、エリーは背筋を伸ばしながらポツリとつぶやいた。
「ったく、湯冷めしちまったぜ。とっとと戻って湯に浸かろうぜ〜。今度はお前も酒に付き合えよ。」
「……ふっ、私は酒にはめっぽう強いぞ?」
「そうこなくちゃな。」
そして二人は旅館へと引き返すと、冷えてしまった体をお湯と酒で温めるのだった。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




