4-1-10
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エリーは赤い液体で満たされた注射器を手に取ると、リースへと問いかけた。
「こいつは?」
「彼ら曰く、吸血鬼化する薬の完成版らしいよ?」
「完成版だぁ?なんだってこんなもん寄越しやがったあの野郎。」
「それはエリー……キミを助けるためさ。」
リースは神妙な面持ちでそう言いながら、白衣のポケットからエリーの持つ注射器と同じ型の注射器を取り出した。
しかし、エリーが持っているものとは違い、中は空っぽである。
「彼らは2つ、薬を置いていったんだ。そのうちの一つが、今エリーが持っているもの。そしてもう一つが、今私が持っているコレ。」
「そっちは空っぽじゃねぇか。」
「あぁ、その通り。」
すると、リースはおもむろにエリーの胸に手を当てた。
「もうココに入っちゃってるからね。」
「…………は?」
「実のところ、エリーがここに運ばれてきたときには、既に手遅れだったんだよ。だけど、コレを使うことによって命を繋ぎ止めることができた。」
「つまり、アタシは……もう?」
「そうだね、人間じゃない。」
リースのその言葉に、エリーは一瞬戸惑うも呆れたように笑った。
「ハッ……なるほどな。アタシもいよいよ化け物の仲間入りってわけだ。」
「本意じゃなかったのはわかってる。だけど、助けるにはそうするしかなかったんだ。」
「あぁ、わかってる。正直なとこアタシも助からねぇと思ってたからな。」
そう言ってエリーは笑うと、自分の服を捲って腹部を露出させる。そして傷口に巻いてあった包帯をほどき始めた。
するするとほどかれ、包帯で隠されていた腹部が露わになると、そこはまるで何事もなかったかのように傷一つついていなかった。
「やっぱりな。傷痕も綺麗サッパリ消えてる。だが、それにしちゃあ、体の内側がズキズキ痛むな。」
「それはエリーがまだ血を経口摂取してないからだね。臓器の損傷が治りきってないから。」
「普通に輸血じゃダメだったのか?」
「残念ながらね。というわけで、コレ飲んでくれるかな。」
リースは白衣の内ポケットから血液の入った試験管を取り出す。
「ちなみに誰の血だ?」
「私だよ。彼らの話では誰の血でも構わないって話だったけど、一応今回は血液型が同じ私の血を用意したんだ。」
「なるほどな。」
エリーはリースからそれを受け取ると、試験管の蓋を開けた。すると、ふわりと甘い香りが鼻腔を突き抜ける。
「おいおいお袋……何か甘い匂いがするぜ?」
「特に香料とかは使ってないよ。つまり、エリーの嗅覚が変わった証拠だね。」
「そういうことかよ。」
そしてエリーは一息で試験管に入っていた、リースの血液を飲み干した。すると、すぐに体に変化が起こり始める。
「お……お?」
じわっと腹部が熱くなったかと思えば、先程までの痛みは嘘のように消え去ってしまったのだ。
それと同時に、全身にありえないほど力が漲るのをエリーは感じていた。
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