3ー2-6
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ヴラドに連れられてエリーが連れてこられたのは洒落たイタリアレストラン。どうやら彼のことを知っているらしい従業員に個室へと案内される。
その個室に案内され、二人は向かい合わせに座った。
すると、ヴラドにはワインのような飲み物が、エリーには熱いコーヒーが運ばれてきた。
「ずいぶん洒落た店じゃねぇか?」
「良い雰囲気だろう?この店の料理が我輩のお気に入りでな。……ふっ、今日はそんなことを話しに来たのではないことはわかっているだろう?」
「まぁな。」
二人は争いあうわけでもなく、自分の前に出された飲み物を一口口に含むと話し始めた。
「それで、今回来てもらったのは他でもない。傭兵エリー、お前と少しばかり話がしたくてな。」
「ハッ、一回殺しあったってのに話し合いかぁ?」
「いや、一度殺しあったからこそ……話し合う必要があると我輩は感じたのだ。」
そう言ってヴラドはワインのような飲み物を一口飲んだ。
「率直に質問しよう、お前は……本当に人間か?」
その質問にエリーは目を細める。
「そいつはどういう意味だ?」
「どうもこうもない、そのままの意味での質問だ。」
「アタシが化け物か何かに見えるってかよ?」
「少なくとも我輩の目から見たお前は人間には思えん。」
「じゃあ何に見えるってんだ?」
「近しいものを上げるとすれば同族だ。」
「アタシが吸血鬼だって言いてぇのか?ハッ、馬鹿馬鹿しいぜ。現にアタシは血も飲まなくても生きていけるぜ?」
「うむ、おそらくはそうだろう。だからこそ奇妙なのだ。吸血鬼というものなってしまったが最後、血を飲むということとは離れられん。吸血鬼にとって血を飲むことは人間でいうところの食事と同じだ。飲まなければ餓死する。」
「それなら尚更アタシが吸血鬼だって話にはならねぇだろ。現にこうやって血を飲まなくても生きてるんだからよ。」
そのエリーの言葉に、ヴラドは少し間をおいてから再び口を開く。
「お前は吸血鬼の起源は知っているか?」
「あ?起源だと?」
「うむ、といっても我輩も詳細な起源は知らんのだがな。だが、聞いた話によれば吸血鬼の始祖は血を飲まずとも生きながらえることができるという伝承があるのだ。」
「アタシがそうだって言いてぇのか?」
「くく、まさか……お前が吸血鬼の始祖ならば我輩を殺すぐらいわけないだろう。」
「じゃあ何だってんだよ。」
「簡潔に我輩から言いたいことは一つだ。」
そしてヴラドはグラスに注がれていた液体をすべて飲み干すと、エリーの瞳の奥底を覗き込みながら言った。
「自分の存在を疑え。」
「だからどういう意味だよ。」
「そのままの意味だ。自分は本当に自分なのか?いま一度確かめながら過ごすがいい。」
それだけ言うとヴラドは席を立った。
「今日伝えたかったのはそれだけだ。」
「ハッ、随分パッとしねぇなぁ。」
「またいずれ、相まみえることになるだろうが……その時お前がお前であることを願っているぞ。」
そしてヴラドは去っていった。
「ケッ、結局何が言いてぇのかさっぱりだぜ。」
そう言って煙草に火をつけようとしたエリーのもとへ、店の従業員らしき男がやってきた。
「お客様、誠に申し訳ありませんがこちらは禁煙となっております。」
「げ、マジかよ。しゃあねぇなぁ。」
火をつける前の煙草をしまうと、彼女の前に1枚の伝票が差し出された。
「本日のお会計になります。」
「うぇっ!?」
その伝票にはとんでもなく高いワインの金額と、一杯のコーヒーの金額が書かれていた。
「あんの野郎……金払ってかなかったのかよ。ちっ、しゃあねぇ現金でこんな持ち歩いてねぇからこいつで頼む。」
エリーは店員に黒いカードを手渡した。
「お預かりいたします。」
そして会計を何とかカードで済ませると、彼女は店を後にする。
ラボへと帰る最中、エリーは頭で憎たらしいヴラドの顔を思い浮かべながら、ぽつりと言った。
「ぜってぇこのツケは払わせてやる……。」
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