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リンのことをラボで保護することになってから数日が経った。すっかりエリーがリンに血液を上げるのも毎朝の日課になってしまっていた。
「ぷは……ご、ごちそうさまでした。」
「ん、いいってことよ。」
もちろんリンがここに来てから、エリー以外の血液を飲めるか確認はしたのだが、他の血液はリン曰く美味しくないらしく、結局エリーが血をあげる役割を担うことになったのだ。
「やぁやぁエリー、リンちゃんおはよう!」
「お袋か。」
「リースお姉ちゃん。お、おはよう。」
「うんうん挨拶がしっかりできるのは偉いぞ~。将来は有望だ。さて、リンちゃんもうエリーの血は吸ったね?」
「うん。」
「それじゃあさっそく調べたいことがあるんだけど手伝ってもらってもいいかな?」
「え、エリーお姉ちゃんも一緒がいい。」
「だってよエリー?」
そしてリースとリンの二人がエリーへと視線を向けた。
「まぁ今日は特に何も予定はねぇし、付き合うか。」
「やった!あ、ありがとエリーお姉ちゃん。」
エリーの腰に抱き着いて頬をすりすりとこすりつけるリン。そしてそれが満更でもなさそうなエリーの姿を見て、リースはクスリと笑う。
「ずいぶんリンちゃんが来てからエリーも丸くなったね。やっぱり子供と触れうことで人の心は穏やかになるのかなぁ。」
「子供は優しくすんのが当たり前だろ。」
「そうだね。こんなに道徳からかけ離れてる人間のエリーでもわかるのに。それがわからない人が多いのが悲しいよね。」
そう言ってリースは苦笑いすると、リンの手を取った。
「さ、それじゃあ行こう。」
エリーとリンの二人はリースに導かれるがまま、ラボの中を進んでいくと、とある部屋の前に案内された。エリーはこの部屋には見覚えがあった。
「ここは、確か空き部屋だったよな?」
「うん、急遽リンちゃんのことを調べるためにいろいろ整えたんだ。といってもすごく殺風景だけどね。」
リースがそのドアを開ける。
その部屋は彼女が言った通りとても殺風景で、真っ白い部屋の中には机と椅子が一つ置かれ、その脇に薬品棚が置いてあるだけだった。
「さ、リンちゃんはあそこに座ってて。今準備するからね。」
リンを椅子に座らせると、リースはいろいろな器具を用意し始める。その準備の中でエリーの目を引いたのは赤い液体がビーカーの中に注がれている様子。思わずエリーはリースに問いかけた。
「お袋、そいつは?」
「血液さ。吸血鬼の力を調べるうえでこれは欠かせないでしょ?」
「確かにな。でもよ、そんな血液とかどっから仕入れてんだ?普通のルートじゃ手に入らねぇだろ?」
「んっふふ~それは私独自の信頼できる筋から仕入れてるのさ。」
はぐらかすようにそう言ったリースはリンのもとへと血液の入ったビーカーを持っていく。
「さてリンちゃん、今日はこの中に入っている血を動かせるか……試してみよっか。」
「ど、どうやって?」
「う~ん、そうだね。それじゃあ試しに動け~って強く想いながらこれをじっと見てみてくれるかい?」
「やってみる。う、動け~っ!!」
ぎゅっと目を閉じて、思わずリースに言われた言葉を口にしながらリンが血液の入ったビーカーへと手を伸ばす。すると、誰も触れていないのに血液がざわざわと動き始めたのだ。
「うんうん、実験の第一段階は完了っと。よし、次はそのままボールみたいな丸いものを頭に思い浮かべてくれるかな?」
「ん~!!」
いわれた通り思い浮かべたのか、先ほどまでうごめいていた血液は徐々に丸い形へと変化していく。
「おぉ、こいつはすげぇな。」
「試しにそれエリー持ってみてよ。」
「わかった。」
エリーが出来上がったそれを持ち上げてみると、先ほどまで液体だったそれがカチコチの固形に変わっていた。
「すっかり固形になってるぜお袋。」
「イメージするものによって液体にも固形物にも変わるってことかな。」
エリーはそれをビーカーの中に戻すと、リースがリンに言った。
「リンちゃんもういいよ~。」
「んんっ……はぁ。つ、疲れた。」
これを始める前よりも明らかにリンが疲弊しているのが見て取れる。
「ご苦労様リンちゃん、お菓子食べる?」
「うん。」
リースは白衣のポケットからチョコバーを取り出すとリンにあげた。
「今日の実験はここまでだ。なかなか興味深いデータがとれたよ。」
「めちゃくちゃシンプルな実験だな。」
「そりゃあね、こういうのは少しずつやっていくものさ。いきなり地雷を踏まないようにね。それじゃ、レポートにまとめてくるからリンちゃんのことは任せたよ?」
「あぁ、わかった。」
リースが出ていったあと、エリーはリンがチョコバーを美味しそうにほおばっている姿を眺めるのだった。
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