2-2-15
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数日後、エリーはリンの家の前で煙草を吸いながらある人物を待っていた。彼女の手には軽量化を施され少し小さくなったパイルバンカーが装着されている。
そして彼女が煙草の煙を大きく吐き出すと、何者かが彼女へと向かって近づいてくる。
「よぉ、来たな。」
そう彼女が語りかけると、夜闇からヴラドが姿を現した。
「クフフ、まるで我輩を待っていたかのような口ぶりだ。」
「あぁ、待ってたぜ?今回でこのクソったれな運命とおさらばするためになぁ。」
吸いかけの煙草を足元に投げ捨てると、エリーはそれを厚底の靴で踏みつけて強引に消した。
「さて、じゃあやるか。」
そう言い放つと同時、エリーはパイルバンカーを装着していないほうに手でハンドガンを引き抜くと、ヴラドへと向かって連射する。
「こんな豆鉄砲では我輩は倒せんぞ?」
「知ってるさ。」
飛んできたその弾丸をヴラドは超人的反応ですべてつかみ取ってしまう。しかしその最中にエリーはヴラドへと急接近していた。
「本命はこっちだ。」
「む!!」
懐へと潜ったエリーは手に収納させていた小型のブレードを展開すると、ヴラドの目を狙って切りかかる。さすがに粘膜への攻撃を嫌ったのかヴラドは、エリーからバックステップで距離を取った。
その動きを見てエリーはあることを確信すると、ヴラドへと向かって語り掛けた。
「どんだけ硬ぇ体でも、目とか粘膜まではカッチカチってわけじゃなさそうだな。今のが効かねぇなら避ける道理はねぇだろ?」
「ほぅ、なかなかの観察眼である。だが、それを見抜いたところで当たらなければ意味はない。」
「あぁ、まったくその通りだ。」
再びエリーはヴラドへと向かって銃を撃つ。しかし今度はヴラドはその弾丸を掴み取ろうともせず、真正面から受け止めた。
「効かぬと言った。」
エリーの放った弾丸はヴラドの眼球めがけて放たれていたが、普通の弾丸では粘膜すらも傷つけることはできず、眼球に当たるとぽろぽろと地面に落ちた。
しかし、飛んできたのは弾丸だけではなかった。
「これもやるよ。」
エリーはヴラドへと向かってハンドガンを放り投げる。するとそれは彼の目の前で煙幕を放出し始めた。
「目くらまし、なるほどそう来るか。」
強者の余裕からか、もくもくと視界を覆う煙幕の中からヴラドは一歩も動かない。そんな彼の目の前に突然エリーのブレードの先端が迫る。
「狙ってくることがわかっていれば対応は可能だ。」
眼球を正確に狙って放たれたそれをヴラドは素手で受け止めた。しかし、掴み取ったブレードの先にエリーの姿はなかった。すでに射出された後だったのだ。
その直後、ヴラドの膝に強い衝撃が走りがくんと崩れる。
「むっ!!」
転ぶ前に足を一歩踏み出し耐えたヴラドだが、少し体勢を崩して低くなった彼の顔面へエリーの蹴りが飛ぶ。彼女の靴の先端からはブレードが生えている。狙いはやはり眼球。
「ぐっこれは……。」
片手もふさがり、体勢も悪いヴラドはそれを避けることは叶わず、右目をそのブレードで深く切られてしまう。
「ぐぅぅっ!!こんなものっ……。」
切られた目に手を当てると、彼の目がジュウジュウと音を立てて急速に修復されていく。しかしそれが治る前にもう片方の左目もスパッと切られてしまう。
「ぐっ!!図に乗るな!!」
目から垂れた血液から即座に槍を作り出したヴラドは、それを高速で回転させ煙幕を吹き飛ばした。
「これで隠れ蓑はもうないぞ!!」
「あぁ、もういらねぇよ。」
ヴラドの背後に現れたエリーはヴラドの膝へと強烈な下段蹴りを叩き込むと、視界を完全に取り戻していないヴラドは思わず膝をつく。
「そこかっ!!」
直後彼女へとヴラドの作り出した槍が飛ぶ。エリーはその槍を屈んで避けると、ヴラドの手首を掴む。そしてその手首をグルンと反対方向へと捻った。するとヴラドの体がアスファルトへと転んでしまう。
この技はリースに使われた籠手返しをそのまま再現したもの。
うつぶせにアスファルトにのめり込んだヴラドの背中を足で踏みつけると、エリーは背中側から弱点部分を見下ろした。
「今までさんざん殺られたお返しだ。今度は外さねぇ。」
ズン……と上から勢いよくパイルバンカーを振り下ろしたエリーは、トリガーを力を込めて引いた。
轟音とともにパイルバンカーから射出された銀色の杭はヴラドを貫き、更にはアスファルトまでも砕いて止まる。
ピクリとも動かなくなったヴラドから壊れかけのパイルバンカーを引き抜くと、エリーは彼のことを見下ろして言った。
「今度はアタシの勝ちだ。」
そして彼女がリースへと無線で連絡を入れようとしたその時……ヴラドの体の下に巨大な目の模様が現れた。
「ッ!!こいつは……。」
「お久しぶり……というには少し短いですねぇ〜。」
目の模様からゆっくりと姿を現したのは、松本ヨシキの身柄を持っていったあの吸血鬼。
「よもやよもや、あのヴラド公を倒してしまうとは、あなたの戦闘力には驚かされましたよぉ〜。」
「なにしに来やがったテメェ。」
「あぁ〜そんなに威嚇しないでください。もうあなたと戦うつもりはありませんからぁ〜。ねぇヴラド公?」
そう語りかけると、弱点部分を貫いたはずのヴラドが何事もなかったかのように起き上がる。
「いかにも。」
「ッ!!なんで生きてやがる!!」
「クフフ、生憎……我輩の核は一つではない。」
そう言ってヴラドは指先で自分の頭をつついた。
「ここにもあるのだ。二つの核を破壊されぬ限り我輩は死なん。我輩のことを随分知っている風だったが、このことは知らなかったようだな。」
「チィッ化け物め……。」
まさに絶望的な状況に、エリーの背中を冷たい汗が伝う。そんな最中、目の吸血鬼とヴラドは少しずつ足元の目の中へと沈み始めたのだ。
「さて、余興にしては随分楽しめたぞ。我輩を楽しませた褒美にその家の娘はくれてやろう。好きに使い、我らに抗ってみせろ。」
「力が使えない状況で、良〜くそんな目上な態度とれますねぇ〜。ま、そういうことなのでぇ私達は失礼しますよぉ。それではまた何処かで……。」
「…………っ。」
余裕を見せて消えてゆく二人にエリーは待てと声をかけることはできなかった。
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