2-2-10
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エリーとカラスの二人によって謎のスーツの集団はあっという間に全滅した。エリーはその中の一人の体をゴソゴソと漁り始めた。
「ん〜、こいつ等無線と武器以外持ってねぇな。名前がわかるもんさえあれば、どこのどいつだかわかんのによ。」
「恐らくこういう風に返り討ちにあったとしても、自らの身分を明かさないようそういうものは携帯していないのだろう。」
「車ん中はどうだろうな。」
彼らが乗ってきた車の中をエリーは捜索し始める。すると、運転席の近くであるものを発見する。
「こいつは……。」
エリーが見つけたのは、彼女達が空港で受け取った物とまったく同じ銃火器携帯許可証。それでエリーは彼らが政府の回し者だということを確信した。
「な〜るほどな、そういうことか。」
「なにかわかったのか?」
「こいつ等は多分政府の暗殺部隊みたいなもんだ。」
それを聞いたカラスが大きくため息を吐く。
「暗殺に仕向ける者の実力がコレか……。政府の高が知れる。」
「殺しのプロのアタシ達と比べるもんじゃねぇさ。」
「……確かにそうか。」
エリーの言葉に妙に納得したカラスがおもむろに指笛を吹くと、夜闇の中から目元以外を黒い装束で包んだ人達が現れた。
彼らは何も喋ることもなく淡々と死体を担いでは消えていった。
「今のは?」
「私の配下の下忍達だ。」
「アンタに会うまで忍者ってのはすっかり絶滅したもんだと思ってたが……意外といるもんなんだな。」
「忍びとは世からその身を忍ばせる故に忍びと言う。我らは闇に生きるもの、表舞台に立つことは無い。」
「それもそうだな。」
カラスとエリーがそんな事を話していると、下駄を鳴らしてツバキが近づいてくる。
「二人ともお怪我はありませんね?」
「はっ……。」
「生憎、どこも怪我はねぇよ。」
「それは結構でした。それではカラス、後処理は任せますね。」
「お任せを。」
「エリー様は旅館に戻りましょうか。」
そしてツバキとエリーは旅館へと戻り始める。その最中、エリーはツバキへとカラスについて問いかけた。
「あのカラスっていう忍びはずっとアンタのこと守ってんのか?」
「えぇ、私が子供の頃からずっと常に近くには彼女がいました。」
「ツバキさんが子供の頃からってぇと……。」
「ふふふ、もう二十年以上も前からですね。」
「そんなに付き合いがなげぇのか。」
「尤も、私の家系と彼女の家系が少し特殊な関係だったからということもありますが。」
と、会話を弾ませているうちに二人は旅館へとたどり着く。
「エリー様、お部屋にお戻りになる前に一汗流してはいかがでしょうか?」
「あ〜、そうだな。丁度さっきかいた汗が冷めてきやがったし、そうするか。」
エリーは部屋に戻る前に本日2度目の温泉に浸かることにした。
温かいお湯で体を洗い、湯船へと全身を浸けると強烈な心地良さがエリーの体を包みこんだ。
「はぁぁ……染みるわ。」
温泉に浸かり、すっかり脱力状態になってリラックスしていたエリーのもとへ湯浴み姿のツバキが現れた。
「お隣、失礼いたしますね。」
「ん。」
そしてエリーの隣で温泉に浸かったツバキはエリーへとお酒を注いだ。
「体を温めるお酒をご用意しました。良ければ……。」
エリーが猪口を受け取ると、そこから僅かに熱を感じた。
「燗酒か?」
「御名答です。お食事の際にこちらでご用意した辛口の日本酒がお口に合っていたご様子でしたから、そちらを熱燗でご用意しました。」
「冷えてくる夜にはたまんねぇな。」
熱燗の注がれた猪口をクイッと飲み干すと、エリーは徳利を手に取り、もう一つ用意されていた猪口へと熱燗を注いだ。
「ふふふ、ありがとうございます。」
ツバキもその猪口を上品な作法ながらも、一息で飲み干した。
「ツバキさんも結構酒イケるんだな。」
「最初はそれほど強くはなかったのですが、こういう職業柄ですから、いろんなお酒を試飲しているうちにいつの間にか。」
クスリとツバキは笑う。
「そういえば……先ほど何やらお悩みになっているご様子でしたが、今はとてもスッキリされているようですね?」
「こういう楽しめるときは楽しまなきゃな。それに悩みつったって大したことじゃねぇ。アタシの努力次第でどうにかなるもんだからな。」
そう言って笑いながらまた酒を煽ったエリーは、ツバキの目にはある人物と重なって見えていた。
(ふふふ、本当にそっくり……ですね。)
そして二人は暫しの間、湯に浸かりながら酒を嗜むのだった。
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