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リースの開発したパイルバンカーの絶大な威力の検証はできた、それと同時に一つの欠点が発覚することになる。
「いっ………でぇぇぇ!?」
絶大な威力の代わりに反動がすさまじく、エリーの腕には骨をハンマーで殴られたかのような痛みが走っていた。
「オイ、お袋!!これ3発も耐えらんねぇぞ!!一発目で腕がいかれちまうかと思ったぜ……。」
「そもそも連続使用するものじゃないんだって、一応3発撃てるってだけなのさ。」
「だ、だがまぁ……こんだけの威力がありゃあ、アイツをぶっ殺せそうだな。いや、逆にこれぐらいじゃねぇと足りねぇ。」
「満足してくれたなら何よりだよ。これから先何が起こるかわからないから、外出するときはそれを腕につけておいたほうがいいよ。ふとした時にヴラドが出てきてもおかしくはないからね。」
「あぁ。そうさせてもらうぜ。ちょいと腕が窮屈になりそうだがな。」
そしてカチャカチャと腕に装着されていたパイルバンカーを外しているエリーに、リースが1枚の紙を差し出してくる。
「はいエリー、これもあげる。」
「あ?これは?」
「これの設計図だよ、しっかりと細部まで頭に叩き込んでね♪」
「げっ……そういやこいつを覚えなきゃいけなかったなぁ。」
心底困ったようにエリーは頭を搔く。
「アタシ暗記苦手なんだよなぁ。」
「でも戦闘スキルとか覚えるのは得意でしょ?」
「あぁ……まぁ。」
「それと同じさ、頭の中で組み立てるイメージで覚えればいい。例えるならそうだね……一つ一つの部品ごとに分解されたアサルトライフルを一から組み立てる感じだ。」
「簡単に言ってくれるぜ。」
大きくため息を吐きながらエリーはその設計図を折りたたんで胸の内ポケットにしまった。
「まぁ明日から2泊3日でツバキのところに泊まりに行くんだし、その間にでも覚えればいいじゃない。」
「そうだな。」
腕から外したパールバンカーをエリーは専用のケースにしまう。そしてリースのほうを向き直ると、少し恥ずかしそうにしながら言った。
「……あんがとなお袋。」
「あら、あらあらエリーが改まってそんな風にお母さんにお礼言ってくれるなんて……初めてだよ!!ってことでもう一回!!」
「いわねえよ!!っ、そんなにくっつくんじゃねぇ!!」
「えぇ~、聞きたい聞きたい聞きた~い!!」
その後1日中もう一度お礼の言葉を聞くまでリースはエリーに付きまとっていた。
翌日、エリーとメイはツバキの旅館へと向かって山道を登っていた。その最中エリーは以前ここに来た時とメイの表情が少し違うことに気が付いた。
「メイ、そんなに浮かねぇ顔してどうしたんだ?こういうの好きだろ?」
「あ、うん……私たち日本に来てから依頼一つも成功してないから少し落ち込んじゃって。」
「なぁにそんなこと気にしてんだよ。依頼の失敗の原因はどれもアタシたちのせいじゃねぇ。クライアントが消えちまったり、別の組織が絡んできたりでよ。不幸が重なってるだけだ。」
「それはそうなんだけど……。」
まだ落ち込む様子を見せているメイの背中をエリーはパシッと叩く。
「ま、温泉にでも浸かって一回リフレッシュだ。お袋もそれを見越して用意してくれたんだろうからな。」
前回とは打って変わってエリーが先導する形となって旅館を目指した。そして旅館に着くと、前回と同様に、リースが使っているという部屋へと通される。
その流れのまま、二人は温泉に浸かることになった。
「ふぅ……いい湯だな。」
「嫌なことがぜ~んぶ流れてっちゃうみたい。」
どっぷりと温泉に浸かるメイはもうすでに蕩け始めていた。疲れていた体と心に染み渡る温泉の心地よさと、そこに追加される酒……二つが合わさることで生まれた相乗効果によってメイが酔いつぶれるのにそう時間はかからなかった。
すっかり酔いつぶれてしまったメイをベッドに寝かせると、エリーは煙草を咥えながらパイルバンカーの設計図を開く。
「うげっ、マジでどんだけ部品多いんだよ。な~にが構造は単純だ……お袋の脳みそ的にはこれが単純だってのかよ。」
これから覚えなければならない膨大な情報量に頭が痛くなりそうになるエリーだったが、ぐちぐち言っても仕方がないと割り切って記憶を始めるのだった。
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