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「さて、敗れはしたとはいえコレは我が配下……打ち破ったものには褒賞を与えなくては。」
血で濡れた手を払うように振るうと、エリーへと向かって血飛沫が飛んでくる。その血飛沫はエリーへと届く間に槍のようなものに形を変えた。
「シィッ!!」
それを横に跳んで躱すと、男は少し驚いた表情を浮かべる。
「ほぅ、なかなか素晴らしい反応だ。ただの人間にしてはよく動く。」
「フゥー……。」
息を大きく吐き出し、集中力をさらに高めるエリー。
(攻撃方法は同じだ、血を操ってそいつを武器にしてる。芦澤カナみてぇな力。血にさえ気を付けりゃあ何とかなる。)
瞬時に脳内で分析を終えたエリーは、男へと向かって一気に距離を詰めた。そしてブレードの攻撃圏内に入った時、男の服に付着していた血液が動き出す。
「チッ!!」
動き出した血液はすぐに形を変え、エリーを迎撃するために槍の形に変化する。
またしてもエリーが距離を取ると、男が面白そうに笑った。
「深追いをしない……状況判断力も高い。ますます面白い。どうだ、こいつの代わりに我輩の新たな眷属になる気はないか?」
そう問いかけてきた男にエリーはこれが返事だといわんばかりに、マグナムを構えた。
「悪いが、そいつはノーサンキューだ。」
そして住宅街のど真ん中だというのに、エリーは躊躇なくマグナムのトリガーを引いた。
「強情……だがそれも良し。ますます欲しいぞ?」
エリーの放った弾丸をアッサリと手で鷲掴みにすると、男はそれを指で弾く。すると、エリーのマグナムが放つ弾丸よりも圧倒的に速い速度で、弾丸がエリーの真横の壁にめり込んだ。
「なっ……化け物め。」
(銃は効かねぇ。となると遠距離戦は無理だ。否が応でも近づくしかねぇってことか。)
エリーはマグナムを胸元にしまうと、覚悟を決めて一歩を踏み出し、男との距離を詰めていく。エリーが射程圏内に入れば男に纏わりついている血が迎撃すべく槍の形に変わる。
(ギリギリまで引き付けて…………ここだっ!!)
迎撃の血の槍を半歩横に移動し、紙一重で躱すとエリーは次の迎撃の合間を縫ってブレードを男の体に叩き込んだ。
「貰ったァッ!!」
バキン……。
エリーの放った渾身の一撃は確かに男を捕らえた。しかし、男に刃が届いた瞬間……ブレードは刃先から歪な音を立ててへし折れてしまったのだ。
「クフフ、惜しいな。」
男はニヤリと口角を上げると、エリーの首元に手を伸ばす。
「ガァッ……クソッ。」
首を鷲掴みにされ藻掻くエリー。最後の抵抗を見せている彼女に男は問いかける。
「さぁ、最後に今一度問おう。我輩の配下にならないか?」
その問いかけにエリーはニヤリと苦しそうに笑うと、男の顔面に唾を吐く。
「ペッ、死んでもお断りだぜ。」
「最後までその威勢を貫く姿……見事だ。華々と散れ。」
「がっ……。」
エリーが誘いを断ると、男のもう片方の腕が彼女の胸を貫いた。エリーの胸を貫いた男の手には未だ力強く脈打つ心臓が握られている。
男が首の手を離すと同時に貫いていた手を引き抜くと、エリーは仰向けに倒れた。
「脳を破壊したわけではない。まだ意識はあるだろう?冥途の土産に我輩の名を持って行け、我が名はヴラド。偉大なる始祖の吸血鬼の血を与えられたものだ。」
男は自分のことをヴラドと名乗り、倒れているエリーに背を向けた。そしてリンのほうへと歩いていく。
「目撃者は一人残らず消さねばな。」
リンにヴラドの魔の手が迫ろうとしていた時、エリーは死ぬ瀬戸際で世界が遅く見えていた。
(あぁクソ……。また勝てなかった。今度は生き返れるって保証もねぇのによ。)
遠巻きにヴラドの背中を眺めているエリーはポッカリと開いてしまった胸の中心の穴を目にしてしまう。
(ははっ、でけぇ穴が開いてらぁ。)
あちこちから血が溢れ出てきているそこに、エリーは少し色の違う液体を発見する。
(こいつは……あぁ、胸のポケットに入れてたあの薬が入った瓶が割れたのか。このままアタシも吸血鬼になったりすんのか?はは、もう死ぬってのに関係ねぇか。)
そして瞼が重くなってきてエリーが眠るように瞼を閉じると彼女の脳内に微かな声が響く。
『……だ…よ…おき……さ……。』
その声が響いたと同時、ドクン……とエリーのないはずの心臓が脈打った。それとともにエリーの意識が覚醒していく。
そしてゆらりと陽炎のように立ち上がった彼女はリンのことを殺そうとしているヴラドのもとへと一瞬で歩み寄った。
「何してんだテメェ。」
「ムッ!?」
エリーはヴラドの胸元を引っ張って引き寄せると、顔面に思い切り拳を叩き込んだ。すると、ヴラドの体は宙に浮き何メートルも飛んでいく。
「リン、今アイツをぶっ飛ばしてやるからな。そこにいろ。」
そしてリンを退避させたエリーは空中で体勢を整えたヴラドへと視線を向けた。
「クハハハハハ!!どういうわけか知らぬが、こちらの仲間入りしたようだな。」
「テメェと一緒にしてんじゃねぇぜ。」
笑うヴラドにまたしても一瞬で距離を詰めたエリーは、高速で格闘を繰り出しヴラドを追い詰める。
「良い、良い!!素晴らしいぞ、もっと激しく踊ろうではないか!!」
そんな状況でもヴラドは笑い、二人が動くたびに飛び散る血飛沫から槍を作り出してはエリーのことを攻撃する。
「その技……アタシにも使えんじゃねぇか?なぁっ!!」
エリーが自分の胸に残っていた血に目を向けると、体に付着していた血が両手に集まっていき、真っ赤な血のブレードを両手の先に作り出した。
「ハハッやっぱりなァッ!!」
エリーのブレードはヴラドの頬をかすめると、彼の頬に一線の傷跡ができ少し血液が垂れた。
「こいつの攻撃ならテメェにも効くみてぇだ…………な。ゴフッ!!」
そのまま勢いに乗ってヴラドを切り刻もうとしたエリーだったが、突然彼女の口内に血が溢れだした。
「なっ、ど、どうなってやがる。」
その様子にヴラドは残念そうに一つ溜息を吐いた。
「適合しなかった……か。残念だ。」
それと同時にエリーの胸を今度はヴラドの作り出した血の槍が貫く。そこで今度こそエリーの意識は闇の中に葬られた。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




