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二章開幕です。
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「ハッ!!??」
次にエリーが目を覚ました場所は、鬱蒼とした密林の中だった。
「どうなってやがる、アタシは確かに体中を貫かれて死んだ。」
自分の体を確認してみるが、意識が途切れる前に負った傷はどこにもない。
「夢?いや、そんなわけねぇ……あんなリアルの夢なんてあってたまるか。」
自分の身に何が起きているのかわからずに考え込んでいると、ガラガラと何かがこちらに向かってくる音が聞こえてくる。
「この音……それにこの密林、ここはまさか。」
自分が見覚えのある場所にいることに気が付いた彼女は、ふと上を見上げた。するとそこには巧妙に隠されたフラッシュバンが吊るされている。それを見て彼女はあることを確信する。
「……なるほどな。」
エリーはすぐに茂みの中に身を隠す。すると、彼女の予想通り見覚えのある補給部隊が現れた。
(同じだ……。フォーメーションも装備も。つぅことはアイツがブービートラップに引っかかる。)
頭に残っている記憶通り、同じ兵士がブービートラップに足を引っかける。するとピンが抜かれたフラッシュバンが兵士たちの頭上に降り注ぐ。
「Oh!?」
フラッシュバンで一瞬視界が奪われた兵士たち。本来ならエリーはここで飛び出し、兵士を壊滅させる手筈だった。
しかし、今回彼女は身を潜め兵士たちの動向をじっと眺めていた。
視界を取り戻した兵士たちは、即座に周囲の警戒を始める。そして周囲の安全を確保すると、急ぎ足で進んでいってしまった。
一連の動向を観察していたエリーはメイに連絡を送る。
「メイ、応答しろ。」
「あれ?エリー、どうしたの?何か問題でもあった?」
「聞きてぇことがある。」
「きゅ、急にどうしたのよ。」
「まず一つ、今回のクライアントはバックレたな?」
「え!?なんで知ってるの!?予定通りの通信の時間に連絡しようと思ってたのに。」
エリーがメイしか知りえない情報を知っていたことに無線越しにメイは驚いた。彼女が驚いている最中にもエリーはもう一つ質問を投げかける。
「それについてはどうでもいい。もっと聞きてぇのは次の依頼のことだ。メイ、次の依頼……日本の政府のやつからの依頼だな?」
「えぇ!?なんでそんなことまで知ってるのよ!?」
無線越しのメイの反応にエリーはまたあることを確認した。
(記憶があるのはアタシだけってことか。)
「ん、確認は終わりだ。無線切るぜ。後で落ち合うぞ。」
「え、ちょ、エリー!?」
一方的に無線を切ると、エリーは密林から脱出する。
そしてメイとの合流ポイントにたどり着くと、そこにはまだメイの姿はなかった。
「前はメイのほうが先に来てたはずだが……。」
辺りをきょろきょろと見渡しているとメイの運転する車がエリーの前に停まる。エリーが助手席に乗り込むと、疑問をぶつけるようにメイが彼女に質問を始めた。
「え、エリー。無線の話、いったいどうしちゃったわけ?」
「ん、詳しいことは走りながら話すぜ。今はクライアントの場所まで連れて行ってくれ。」
「……わかったわ。」
メイが車を走らせると、エリーは煙草を咥え、メイに語り始める。
「なぁメイ、もし仮によ夢で見たことが現実に起こったらどうする?」
「それって予知夢ってこと?」
「あぁ。」
「それが予知夢ってわかってたら、まぁ良い方向に物事が進むようにすると思うけど……まさか、エリー予知夢でクライアントがバックレることも、次の依頼が日本にあるってことも知ったの?」
「……さぁな。」
「さぁなって……自分でもわからないの?」
「あぁ、あれが本当にただの予知夢なのかさえもわからねぇ。だが、アタシにはどうも……あれが夢の出来事とは思えねぇんだ。」
「エリー、少し休んだほうがいいんじゃない?最近戦場に出てばっかりだったし、疲れてるのよ。」
「そうかもな。」
間もなく、エリー達はクライアントのいる屋敷にたどり着く。エリーが車から下りてハンドガンを二丁構えると、メイが慣れない手つきでハンドガンを扱っているのが目に入る。
(同じだ。)
エリーはメイが使おうとしていたハンドガンの上に手を置くと、彼女にそれをしまっておくように伝えた。
「しまっとけ。アタシが全部やる。」
「でも、エリーだけに任せるのも……。」
「いいからセーフティーしっかりかけてろよ。」
「うん。」
護衛の配置をすべて把握しているかのようにエリーは屋敷を守っていた護衛たちを簡単に排除すると、クライアントが居座る部屋の扉を蹴り破る。
「っ!!」
それと同時にクライアントの頭を打ち抜いて殺してしまう。
「あぁっ!!エリー!?殺しちゃったら……」
「問題ねぇ。」
エリーは部屋に置いてあった金庫の前でしゃがむと、暗証番号を入力し始めた。
(9…7…1…3)
エリーが暗証番号を入力し終えると、金庫が開く。その様子にメイが驚愕する。
「嘘でしょ……。」
驚愕で言葉を失いかけているメイを横にエリーはある決意を固めた。
(どういうわけかは知らねぇが、間違いなくアタシは一回死んで蘇った。)
エリーの脳内に彼女を一度殺した大男の顔が映る。
(殺してやるぜ……クソ吸血鬼。今度死ぬのはテメェだ。)
その後、二人は筋書き通り吸血鬼事件を解決するべく日本へと飛ぶのだった。
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