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二人が温泉旅行から帰ってきて数から日後、またもやメイが購入者リストから身元を割り出してエリーのもとへ持ってきた。
「エリー、次なんだけど……。」
エリーに話をもってきたはよいもののメイは言葉に詰まる。
「ん?どうしたんだよ。なんかやべぇやつなのか?」
「そういうわけじゃないんだけど、ちょっとね。まぁ見てもらったほうが早いわ。」
メイはエリーに資料を手渡した。
「ふん?今回のやつは妻子持ちの男か。名前は……佐々木トオル、職業はホストだが……数日前から出勤を確認できていないか。」
「それだけじゃないわ。そのターゲットの妻もパート先を無断欠勤してるらしいのよ。」
「……こいつが自分の嫁を食っちまったって可能性があんなぁ。」
「うん、でも二人の子供リンちゃんっていうらしいんだけど、その子は昨日も目撃証言があったわ。」
「ガキはまだ生きてるかもしれねぇな。まぁとりあえず行ってみっか。」
エリーはリースのメンテナンスから帰ってきたマグナムを胸の内ポケットにしまい用意し始める。するとメイがエリーにあるお願いを伝えた。
「エリー、その……もし子供が生きてたらどこかの施設に預けてきてほしいんだけど、できる?」
「んぁ?なんでまた、どうしたんだ?」
「そのリンちゃんなんだけど、ずいぶん前から虐待されてたみたいなのよね。通院記録にも虐待の疑いありって書いてある。だから……。」
メイが言葉を伝えきるまえにエリーは彼女の頭に手を置いた。
「わかった、その代わりそこまでのナビゲートは頼んだぜ?」
「ありがとエリー。」
そしてエリーは次のターゲット確保のため、バイクに乗って出かけるのだった。
数時間後、エリーは住宅街に足を運び、とある家の前で足を止めていた。
まじまじとその家を眺めている彼女にメイから無線が入る。
『エリー、そっちの状況は?』
「あぁ、今着いたが……また強ぇ血の匂いがする。中で人が死んでるかもしれねぇ。」
「わかった、その先の行動は任せるわ。とにかく気を付けて。」
「あいよ。」
エリーはメイに渡された鍵を使い、ドアの施錠を解錠すると玄関口に足を踏み入れた。それと同時に彼女の鼻を強い血の匂いが突き抜ける。
「なかなかやばそうだな。」
警戒心をさらに強め、エリーは銀製のナイフを手にして家の廊下を進む。そして血の匂いが強いほう強いほうへと足を運ぶと、最終的にはある部屋の前までたどり着いてしまう。
「ここは、子供部屋か。この先からだな。」
エリーがドアノブに手をかけると、中からすすり泣く子供の声が聞こえてきた。
(ガキはまだ生きてる。となれば……。)
エリーはもう片方の手にマグナムを構えると、ゆっくりと扉を開けた……。
「っ!!こいつは……。」
中へと侵入したエリーの目に飛び込んできたのは、部屋の中心でうずくまってすすり泣く女の子の姿と、惨たらしく、まるで昆虫の標本のように何本も体中に赤い針のようなものが突き刺さり、壁に張り付けにされているターゲットとその妻の姿だった。
「メイ、ターゲットは死んでる。だが、ガキのほうは生きてたぜ。」
メイに一言連絡を入れると、エリーは子供に話しかけた。
「おい、大丈夫か?」
「ぐすっ……お姉ちゃんだれ?」
「お前を助けに来た。そこで死んでるのはお前の親だな?なにがあった?」
そう問いかけると、とんでもない答えが返ってきた。
「お、お父さんはいっぱいリンのことイジメた。お母さんも……だ、だからリンがもうやめてって言った。そ、そしたら二人とも死んじゃった。」
(吸血鬼になったのはこいつの親じゃねぇ……こいつらはまだ年端もいかねぇガキにあんな変なモンを飲ませて吸血鬼にしやがったんだ。)
虫唾が走る真実に気づいてしまったエリーは、メイに無線で連絡を入れた。
「メイ、予定変更だ。今からこのガキをラボに連れて帰る。」
『え?ど、どうしたの?』
「詳しい理由は後で話す。お袋にも伝えといてくれ。」
『わ、わかった。』
無線で連絡を終えると、エリーは女の子に話しかけた。
「お前、名前は?」
「リン……。」
「リンだな。そいじゃあリン、アタシについてきてくれるか?」
「う、うん。」
リンの手を取って、立ち上がらせると、彼女の服にはべっとりと血が染みついていた。
「あ~……流石にその恰好じゃ外には出れねぇな。リン、自分の着替えが入ってるタンスわかるか?」
「ここっ。」
リンは飛び散った血が付いたタンスを引っ張って開ける。その中には2、3着子供用の衣服が入っていた。しかしどれもたたまれておらずぐちゃぐちゃに詰め込まれている。そんな状況だった。
「ん。まぁこいつとこいつでいいか。ほれ、バンザイ。」
「んっ!」
エリーの言葉に従って両手を大きく上にあげたリンの服を脱がせて新しい服を着せていると、エリーがあるものに気が付く。
(こいつは虐待の痕だな。見えねぇように服の下だけやってやがる。)
リンの体に刻まれていたのはおびただしい量の青あざと、煙草を押し付けられたような火傷痕。まぎれもなく虐待の痕跡だ。
(こういうのは吸血鬼の力でも治んねぇのか?それとも……まだうまく扱えねぇだけなのか。)
そんな考察をしながらもエリーはリンの着替えを終えると、近くにあった洗面所から濡れタオルを持ってきた。
「次は顔、血でべっとりだからな。きれいにするぞ。」
濡れタオルでリンの体についた血を拭っていく。その最中リンがエリーにあることを問いかけた。
「お、お姉ちゃんのな、名前は?」
「アタシか?アタシはエリーってんだ。」
「エリー……お姉ちゃんはどうしてリンにこんなに優しいの?」
その問いかけにエリーは、にっと笑うとリンの頭に手を置いて言った。
「これが普通なんだ。わかったな?」
「普通……。」
まだ理解できない散った様子のリンの体をきれいにするとエリーは彼女の手を取った。
「よし、ほいじゃあ行くぞリン。」
リンのことを後部座席に座らせると、エリーはバイクを発進させラボへと戻るのだった。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




