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本日から二節に入ります。更新は18時の一回のみとなりますのでご注意ください。
先日の戦闘でエリーの負ったケガが癒えたころ、エリーはリースの研究室へと呼び出されていた。
エリーが席に着いたのを確認するとリースが語り始める。
「さて、それじゃあ今日集まってもらったのは他でもない。吸血鬼についての見聞を広めてもらおうと思ってね。」
「吸血鬼についての見聞ねぇ。」
「先日捕らえた芦澤カナから得られた情報がいくつかあってね。端的に言えばそれの共有さ。まずエリーも実際に戦ったからわかっているとは思うけどどうやら吸血鬼っていうのは異常な再生能力を有しているらしい。」
「あぁ、銃弾をぶちこんでもケロッとしてやがったな。」
「うん、だけどある金属による攻撃ではある程度のダメージが期待できるらしい。それがこれさ。」
そう言ってリースが取り出したのはエリーのバイクに取り付けられていた武装のブレードだった。それを見てエリーもあることに気が付いた。
「そういやそのブレードで攻撃した時は再生してなかったな。」
「そう、古来から吸血鬼ってのは銀製の武器で殺すって手法が現代まで伝わっていてね。迷信かどうかを確かめるがてらこれを作ったのさ。結果はエリーも知る通り効果は抜群だった。おそらくこれから吸血鬼に対する有効な攻撃手段はこういう銀製の武器になるだろうね。」
ちなみに……と続けてリースは銀と同様に古来から吸血鬼に効くとされているニンニクや十字架、聖水などのものは一切効果が認められなかったとも説明した。
「それと、吸血鬼化すると超能力的なものにも目覚めるらしい。芦澤カナの場合自分の血を操り、形を変化させることができたみたいだ。これに関してはサンプルが彼女一人しか調べられていないからすべてに吸血鬼に当てはまるとはわからない不確定要素だけど。」
「吸血鬼ってやつの生態を調べるにはまた違う吸血鬼をとっ捕まえてこねぇといけねぇって話か。」
「そうだね、まだまだ研究が必要。ってわけで、今度は別のサンプルを捕まえてきてほしいな?」
キラキラと目を輝かせ、エリーへと視線を向けるリース。
「ったく、簡単に言ってくれるぜ。」
「前回はほら、普通の銃火器が効かないってのを知らずに挑んだわけだから。エリーがちょっと怪我しちゃったけど、今回はお陰でちゃんと準備できたよ。」
そう言うと、リースは机の上にガンケースを置いた。それを開けると、中には流通している銃とは少し異なる形の1丁の重厚なハンドガンが入っていた。
「ふん?こいつは……正規のメーカー品じゃねぇな。オリジナルか?」
「そ、設計から全て私がやったものさ。持った感じどうかな?」
「悪くねぇ。口径もデカいし、ハンドガンってよりかはマグナムに近い。」
「そのとーり!名付けて対吸血鬼用ハンドマグナムMk.1!」
「そのまんまじゃねぇか。」
「だってそれ以外に名前が思いつかなかったんだもーん。あ、銃弾はこれね。」
リースはカートンボックスを机の上に置き、その中から大口径の銃弾を1つ取り出す。
「これも対吸血鬼用に調合したオリジナルの銃弾さ。炸裂式で中には水銀が入ってる。銃弾の貫通力はあんまりないけど、体内で爆発することを想定したつくりになってるんだ。」
「ほぉ……。」
エリーはリースの持っていた銃弾を受け取ると、マガジンに一発装填した。
「試し撃ちは別室のシューティングレンジでやってね。あ、でも弾はまだそんなに作れてないからほどほどにね?」
「わかった。」
エリーは握り心地を確かめた後、マグナムにセーフティーをかけて服の内側のホルダーへとしまう。
「そういやメイとバリーの奴はどこいった?今朝から姿が見えねぇが……。」
「二人は今芦澤カナの身柄を渡しに行ってるよ。」
「あいつらだけで大丈夫か?」
「問題ないさ、最悪の場合対応できるようにバリーには武器も渡してある。」
「ならいいんだが。」
エリーは懐から煙草を一本取りだすと口にくわえた。そんな彼女にリースがライターを近づけてきた。
「ん。」
咥えた煙草をライターに近づけたエリーだったが、彼女が予想していた動きとは裏腹に、リースはパッとエリーの咥えていた煙草を奪うと、自分の口に咥えそれに火をつけた。
「煙草は体に良くないよエリー?」
「現在進行形でアタシの煙草奪って吸ってるやつに言われたかねぇよ。」
半ば呆れながら、エリーはもう一本煙草を取り出し自分で火をつけて吸い始めた。
「ふぅ……さてとほんじゃあちょっくらこいつの性能ってやつを試してくるわ。」
「うんうん、行ってらっしゃい。これから長くエリーの相棒になる予定の銃だ、大事に扱ってよ?」
「あぁ、わかってる。」
弾薬の入ったケースをもってエリーはリースの研究室を後にするのだった。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




