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これにて一節はおしまいです。次回から二節に入ります。
「さて、それじゃあまず一問目。キミは誰に吸血鬼にされたのかな?」
「わ、わかりま……せん。」
「ん、結構。それじゃあ次に行こう。」
淡々と尋問を進めようとするリースにエリーが待ったをかける。
「おいお袋、そんなに鵜呑みにしていいのかよ。」
「あぁ、それなら問題ないよ。さっきの薬には強力な自白剤も混ぜてある。それも常人なら発狂するレベルの濃さのものがね。」
「そういうことだったのか。続けてくれ。」
そしてリースは改めて尋問を再開する。
「それじゃあ二問目。キミはどうやって吸血鬼になったのかな?」
「ね、ネットで新人類になれるっていう液体を飲んでなりました。」
「ふむ、やっぱりそのクチだったんだね。よくまぁそんな危ない物に手を出す決心ができたものだよ。最近の若い子には躊躇いってモノはないのかなぁ。」
やれやれとリースはため息交じりに呆れると、バリーのことを呼んだ。
「バリー、この子第二研究室に運んどいて~。」
「了解しました。」
バリーはリースにぺこりと頭を下げると動けない状態の芦澤カナを運んで行った。それを見送ったのち、メイがリースへとあることを問いかけた。
「リースさん、さっき彼女が吸血鬼になったきっかけを聞いてやっぱりって言ってましたけど、何か知ってるんですか?」
「ん、さっすがメイちゃんいいところに気づいたね。花丸をあげよう。」
するとリースは自分のパソコンを操作し、ダークウェブへとアクセスした。そしてあるサイトを開くとエリーとメイの二人に見せた。
「実は少し前、突然こんなものがネットに流れてね。」
「あん?『人間が嫌になった人々へ……新人類へと進化しませんか?』だぁ?」
そのサイトに書いてあった文言を読み上げてエリーは胡散臭そうに首をひねる。
「そう、まぁなんとも馬鹿馬鹿しい文言だけど。実は意外とこれを購入している人間ってのは多いみたいでね。」
再びカタカタとリースがパソコンをタイピングすると、過去このサイトにアクセスし、売られているものを買った購入者リストが表示される。そのリストの中には芦澤カナの名前もあった。
「数えてみたところ、購入したのは全部で56人。ほとんどが名前は割れてるけど、中にはそういう面に精通してるのか暗号で名前を隠してる輩もいる。」
「ってことは少なくても今回の芦澤カナのような吸血鬼になる可能性のある人達がまだ55人もいるってことですよね?」
「ピンポンパンポーン!その通り~だからエリーたちが今回相手取った芦澤カナって存在は氷山の一角にすぎないってこと。ちなみにおまぬけさんな政府の方々はこの事実に気づいてすらいませ~ん。」
けらけらと軽快に笑いながらリースは言った。そしてひとしきり笑い終えると、改まって彼女はエリーたちに向かって問いを投げた。
「さて、この話を聞いてキミ達はどうする?」
「どうするつったって、芦澤カナを捕らえたってことでアタシ達の依頼は終わった。どうもしねぇよ。」
「ん~、まぁそういう返答を返してくるとは思ってたよ。」
エリーの返答がわかっていた様子のリースは携帯端末を操作する。するとメイの持っている端末に一通のメールが届く。
「メイちゃん確認を。」
「え、は、はい。」
メイがメールを開くとそこには、一通の依頼が届いていた。差出人はリース本人。依頼内容は……。
「吸血鬼になる薬をばらまいた黒幕の特定、および吸血鬼化した人間のサンプルの確保。」
「うん、実のところこの吸血鬼事件は私と少しばかり因縁があってね。お願いできないかい?」
「エリー?」
依頼を受けるか否かをメイはエリーの判断に任せた。するとエリーは煙草を一本咥えながらリースの目をまっすぐ見て口を開く。
「……報酬は?」
「望むものを報酬にしようか。あ、もちろんお母さんの体でもいいのよ?」
自らの体をぎゅっと抱きしめ、体をくねらせるリースに呆れながらエリーは言った。
「それならただ働きのほうがマシだぜ。」
「あら、残念。」
「報酬に関しては後でメイと考えとくわ。」
「じゃあ依頼受けてくれるってことでいいかな?」
「あぁ、その依頼受けるぜ。」
「う~ん♪さすがは私の可愛い可愛いエリー♪きっとそう言ってくれるって信じてたわ~♪」
リースはエリーの体に抱き着くとギューッと彼女の愛情を表現するように抱きしめる。それとともにミシミシとエリーの肋骨が悲鳴を上げる。
「あががががががっ!!!!」
「り、リースさん!?エリーが……。」
「あ。」
リースが気付いた時にはすでに遅く、エリーは白目を剥いて口から泡を噴き出して気絶していた。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




