第二話「殺し屋」
「鞄の中に必要な物が全て入ってます」
倉沢は鞄を金城に差し出し、それを受け取ると鞄の中から拳銃を二丁取り出した。
マガジンを引き抜き、弾が空なことを確認して嵌め込むと次に状態の確認をする。
スライドの硬さ、ハンマーや安全装置の作動性、最後にトリガーを引いて発砲すると凄まじい轟音が辺りに鳴り響いた。
「社長が愛用していたER-型の拳銃です。それを特注で仕入れました」
真剣な眼差しをする倉沢を見て金城はため息をつき、拳銃を懐に入れた。
「殺し屋を引退した身だ。こんな大層なものは必要ないんだが……」
「私個人の決まりです。その型の銃しかありえません」
「……そうか。今度は大事にしないといけないな」
「えぇ、この世に同じものは二つもありませんから」
何処か懐かしそうな顔をするが、すぐに切り替えて襲撃班に制裁を加えるため準備をする。
着ていた作業着を脱ぎ、鞄の中にあった防弾チョッキを取り出して羽織る。
外れないようにボタンをしっかり止めると、次に小型のポーチを腰へ巻きつけてその中に弾薬、短刀、もう一丁の拳銃を収納した。
武器などを相手側から見えなくするために、脱いだ作業着をもう一度着直した。一段落がつくと金城は胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけて煙を吐く。
「……林山は何処だ」
「休憩所に自分の私物を置いてるみたいで、取りに行きました」
金城は吸うか? と煙草を差し出すと倉沢は頷き、受け取る。ライターを取り出す前に金城は自分のジッポを倉沢の手に渡した。
軽めに頭を下げ、倉沢は火をつける。
「懐かしい味ですね」
同時に上を向いて煙を吐き出した。
「あぁ、そうだな」
煙草が燃え切る手前で火を消し、吸い殻を入れるポーチの中に放り込んだ。
金城は腕を伸ばすと軽めな準備運動をし、車のドアに手をかける。
「倉沢、林山のことを頼む」
「はい。華麗に守りながら迅速に社長をサポートするつもりです」
そう言葉を交わすと金城は車へ乗り込み、倉沢は自分が乗ってきた車に林山を誘導する。
二人が乗ったことを金城は目で確認すると、エンジンをかけてアクセルを踏み走り出した。
それと同時に倉沢も車を発進させ、互いに逆の方向へ向かった。
誰もいなくなった解体現場に、怪しげな男が現れる。
「ーー元殺し屋か。厄介な相手だな」
男は呟くとその場から踵を返した。
難しい!!