第一話「暗雲」
ーー此処は地下国。
薄暗く身体に害を及ぼすであろう空気が舞い、見上げた先には地盤が崩れないよう歪な柱で支えられ、柱の周りには人々が住むための区域があった。
区域は五箇所に分かれており、二番目に広く職業が盛んである『B区』。
人口が多く、家も多い。そして、「訳」があって家を捨てる人間も沢山いる。
よって捨てられた家は邪魔になるのだ。
そんな邪魔になった家を大きな建設機械がアームを振り下ろして破壊していた。
「親方ぁ、面白そうなものが出てきましたよぉ‼︎」
土や埃で汚れた作業員の青年が、嬉しそうな顔で親方と呼んだ男の元まで駆け寄る。
「何だそりゃ……。昔の携帯機器か?」
「これ、貰って帰ってもいいですか!?」
青年は鼻息を荒くしながら男の顔を見る。男は乗っていた建設機械から降り、青年の前へ立った。
そして、口を開く。
「林山、この土地の現所有権は元請けにある。つまり、出てくる物全ての権利は元請けの物だ」
林山は落ち込んだ顔をし、手に持った物を元の場所に置きに行こうと歩きだした。
それを男が呼び止める。
「俺個人の判断で許可は出来ん。……が、掛け合うのならばいくらでも協力してやるさ」
「本当ですか!? ありがとうございます!!!」
「あんまり期待はするなよ。貰えない可能性もある」
男は林山の頭を撫でていると、後ろから聞こえる声に気づいて振り返った。
「金城社長ーー!!」
「何だ倉沢。そんなに慌ててどうした?」
車から飛び降り走ってきた倉沢は、息を切らしながらも金城に説明をする。
「ひ、樋上さんがーー!!」
「……奴らか?」
問いかけると倉沢は頷いた。すると穏やかな表情をしていた金城の顔は険しくなる。
「……容体は?」
震える倉沢の肩を金城は優しく叩き、気持ちを落ち着かさせると樋上の状態について説明を受ける。
「酷い状態ではありますが、幸いにも命に別状はありませんでした。今は中居が事務所で守っています」
「そうか……」
命に別状はない。その一言で金城は安心した顔をする。
大事な仲間は死にはしなかったが、これ以上被害は出さないために金城は行動に移した。
後ろの方で話を呆然と聞いていた林山に呼びかける。
「お前には申し訳ないが今日は家に帰らず、事務所へ泊まっていけ。数人で居た方が安全だろう」
我に帰った林山は頭を下げ、その場を後にした。次に倉沢の方へ目をやる。
「倉沢はーー」
金城が言い切る前に倉沢は走りだし、自身が乗ってきた車に駆け寄る。
そして、車の後ろへ歩いていきトランクを開けた。
「只々、やられて帰る訳にはいきませんからね」
ノートパソコンと大きな鞄を取り出し、不敵な笑みを浮かべた。パソコンの電源を入れると中心に複数の赤い点が映し出される。
それは樋上らを襲った男たちの位置情報だった。
「一度ならず三度も……。私は到底奴らを許せません」
社長、そうでしょう? と倉沢は金城に問いかけた。
「……嗚呼、あの汚物共に明日は与えない」
金城の瞳に殺意が宿る。
以前書いていたものがどうも気力乗らなくて、改めて一から練り直して書きました。