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第2輝 望み

 ただの専門学生、といっても、魔法省関連の専門学校だから完全に無関係とは言えないのだが、それでも学生である俺がこんな重要な仕事をしているのには理由がある。

 ───俺には両親がいた。

 いた、と過去形なのは、既に2人とも死んでいるから。2人とも……魔法少女とSOの戦いに巻き込まれて死んだ。

 俺の両親は魔法省で研究を行っていた。研究内容は『闇属性の魔法について』。

 具体的な内容は聞いていない。ただ、闇属性に関する研究だ、としか俺は知らない。

 2人とも研究にのめり込んでいて、家に帰ってくるのは週末の日曜日だけだった。それでも日曜日は家族の日だと言って、よく色んなところに連れていってくれたことを今でも覚えている。

 両親に連れられ、魔法省の研究施設に入ったことも1度や2度じゃない。それこそ、研究員しか入れない特別な資料室に、顔パスで入れるぐらいには何度も訪れていた。

 両親が2人とも魔法省の研究員だったということもあったのだろう。自然と周りは、俺を将来の研究仲間としてみていた。───俺自身そうなると思っていたが。

 それにしても、今思えばザルだったな。子供とはいえ極秘資料なんかもみれたし……所長はいい人だったけど。

 だが、そんな両親との日常はあっさりと終わることになる。

 ある日、両親は南アメリカ大陸のある国に行くと言い出した。闇属性の魔力が現れる兆候のようなものが現れたらしく、その研究のために現地に(おもむ)くらしい。

 その時は俺もある程度、魔力とか魔法とかSOとかについて詳しくなっていたため、その兆候がどれだけ危険なものか理解していた。

 魔力が現れる兆候とはつまるところ、そこにSOが現れるということだ。しかも、その魔力の兆候が現れてから、そこに出てきたSOによる被害は例外なく大規模なものになる。

 それが高い等級のSOによるものなのか、それとも大量のSOのものなのかは、現れてからじゃないと分からないが、何せ確実にSOはそこに現れる。

 当然俺は反対した。いくらなんでも危険すぎると引き留めた。

 だが、両親は聞かなかった。研究のために必要なことなのだと。魔法少女が護衛につくから大丈夫だと。

 結局2人は旅立って行った。俺に謝りながら。謝るなら行かなければよかったのに───

 それから2日後、南アメリカ大陸が丸ごと消滅した。

 魔法少女の魔法によるものだと聞いている。なんでも、1等級のSOが現れ、その討伐のために命を引き換えにして、『光属性を反転させる』魔法を行使したのだという。その結果が南アメリカ大陸の消滅なのだと。

 当時、魔法省はこの事件を、『これ以上被害を増やさないための必要な犠牲』とし、『命を懸けて世界を救った1人の魔法少女を称える』と発表した。

 だが、それで納得できるほど、俺も大人じゃなかった。大切な家族を、『必要な犠牲』と言われ、納得できるはずもない。齢13の子供に。

 俺は魔法少女のことも、彼女たちを戦わせる魔法省も、感謝はしているが、あまり好きとは言えない。

 被害を抑えるため、そこで戦わなければいけなかったことは十分理解している。彼女が、彼女たちが命懸けで世界を守っていることも分かる。分かってはいるが、それで行き場の無い感情を抑え切れるかと言われれば否と言わざるを得ない。

 命を簡単に賭ける魔法少女も、その犠牲をふんぞり返ってみているだけの魔法省も、嫌いだ。

 せめて、俺に戦う力があれば……そう望まずにはいられない。

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