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第14話 絶命

───ドォォォオオオン

「レイドちゃんっ!」


 捨て身で左のハサミの斬撃を受けていたレイドちゃんの体が、激しい爆発音と共に吹っ飛んだ。

 右のハサミの空間を切る斬撃をレイドちゃんに放ったのだ。私の『魔法を打ち消す魔法』の対処にしか使っていなかった斬撃を、だ。

 戦いに絶対は無い。カニのSOが私にしか空間を切る斬撃を放ってこないとは限らなかったし、そもそもあのカニのSOを見た時、4等級程度と侮っていたこともダメだった。私の魔法があれば、逃亡した魔人を追うこともできると、その時のために余力を残しておこうとしたのもダメだった。あれは4等級程度なんかじゃない。

 ───空間を切る斬撃と紫の炎を纏った斬撃。2つも魔法を持ってる時点で普通じゃない。魔法少女もSOも、魔法は1人に1つまで。それが2つなんてありえない。ありえないんだ。私がもう少し冷静でいれば、違和感を感じていれば、もっと……

 レイドちゃんが飛ばされた先を、カニのSOの斬撃を防ぎながら見る。───ダメだ。飛ばされたレイドちゃんが突っ込んだ民家の煙で、中がどうなっているか見えない。

 これじゃ無事かも分からない……

 無事だと信じたい。でも、あれは斬撃をまともに食らっていた。少なくとも重傷で動けないぐらい、最悪死───


「ッ……」


 私がもっと上手くやれていれば、強ければ、レイドちゃんが傷つくことなく、あのSOを壊せていた。

 驕っていた。ようやく3級の魔法少女に上がれたからと。

 侮っていた。敵は4級程度だと。

 ───後悔が尽きない。また、失うのかと、お前が不甲斐ないばかりに、また、自分じゃない誰かだけ傷ついて。

 レイドちゃんを傷つけたあのSOが許せない。

 自分の大切な人ばかりが傷つくこの世界が許せない。

 そんな理不尽から大切な人を守れない不甲斐ない自分が許せない。


「───あぁぁぁああああぁあ!!!!」


 壊す。壊す。壊す。

 あのSOを、世界を、自分を。

 ───ただ壊すために魔法を振るう。

 

「大人しく壊されてッ……!」


 まずは、あのSOからだ。

 もう、侮らない。驕らない。ただ、破壊する。全力で。





 ───仲間がやられたことで錯乱したか。

 そんな現状分析をしながら、大鎌使いの魔法少女の破壊の魔法を撃ち落としていく。

 戦う力があるとは言え、本来は戦場に立つことなど有り得ぬ少女。それが目の前で仲間をやられたとなれば錯乱もするか。

 それにしても厄介だな、この破壊の魔法とやらは。幼稚に振り回す……いや、振り回されているだけでこうも御し難いものになる。


「あぁぁぁああああ!!!!」


 まだ理性をもって振るわれたものなら手加減のしようもあったというのに。こうも暴れ回られては手加減のひとつもできぬ。


「───グギュゥ」


 仕方あるまい。殺してしまうことになるかもしれんが、魔人に評価されるためには天敵《貴様》を止めなければならないのだ。

 1度防御を捨て、右の鋏と左のハサミを合わせて魔法の構築を始める。その間に受ける"破壊"は避けるか受け流す。

 初めて使うが、思ったより簡単に構築が完了しそうだ。

 元は愛し合っていた2人の力と言うべきか……使っていた時も思っていたが、この2つの力、やはり相性がいいようだ。


複写と転写(クキェー・クリィ)


 魔法の構築が完了し、大鎌の少女に放った瞬間、どっと魔力が消えたのが感じられた。使うだけで大半の魔力を持っていかれるなど、頻繁には使えないな。


「───っ」


 ふと、少女の息を飲む音が聞こえた気がした。

 すまぬ。まだ、ここで死ぬ訳には行かぬ故、貴様には死んでもらう───


「させるかぁぁぁあぁぁああああ!!!!」


 解放した魔法が放つ轟音をも掻き消す勢いの男のような激しい叫声を、我は始め、認識しきれていなかった。


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