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第13話 絶対

「おわっ───と、いきなりだね」


 使い手の身の丈程はあろうかという大鎌を魔法少女が一瞬で振り上げた途端、鯆の魔人が首から下げていた宝石が割れた。

 【身代わり石】と魔人が呼んでいたそれが割れたのだ。あの一瞬であの魔法少女は魔人を殺したということだろう。

 警戒はしていたが反応できなかった。あれが我に向けられていたら、死んだのは我だった。

 ───改めて気を引き締めよう。あれは、舐めてかかっては殺せぬどころか殺されてしまう相手だ。


「グギュゥ」

「そうだね。どうやら私は足手まといらしい。大人しく引かしてもらうよ……大変残念だけどね」


 そう言いながら、魔人の体は半透明になっていく。あれも、大量の犠牲を出しながら完成した魔人の研究の成果物によるものだ。

 そうして魔人が去ろうとしている今も、魔法少女の大鎌から放たれる攻撃は止まない。魔人を守りながら防ぐには骨が折れる威力の攻撃だ。


「それじゃ、期待しているよ」


 魔人は我にそれだけ言い残して、我らの前から完全に姿を消した。

 ───期待に応えたいとは思わないが、あの方に弄られたこの体の力を試すいい機会だ。

 先程は尽く避けられ、防がれた。……少し苛立っているのかもしれない。今度は存分に暴れさせてもらおう。

 今度はこちらの番だ、魔法少女。





 魔人を庇いながら戦っていたカニ型のSOは、庇う相手がいなくなったことで一気に攻勢に転じてきた。


「くッ───!」


 右のハサミから空間を切る斬撃、左のハサミから紫の炎を纏った斬撃。それを、前者をリリーの『魔法を打ち消す魔法』の対処に使い、後者の方を私に連続で飛ばしてくる。

 どちらの斬撃も当たればタダでは済まない火力をしている。

 正直、私には荷が重い相手だ。そもそも私は近づかなければ火力を出せない典型的な前衛役(アタッカー)。私がヤツに攻撃するためにはカニ型に近づかなければならず、そのためには自分に当たりそうなヤツの斬撃を切り落としながら進むしかない。

 だが、ヤツは正確に私の行く手を阻むように斬撃を放ってくる。そう簡単には近づけない。


「チッ!」


 右に移動すると右前に炎を纏った斬撃が飛んでくる。左に移動しようとすればそのすぐ目の前に斬撃が飛んでくる。

 ───ヤツには私の進む方向がわかっているのか? カニ型は私が進む先に正確に斬撃を置いてくる。

 実際、私は飛ばされた斬撃の殆どを走りながらレイピアで切り伏せなければいけなかった。


「クソ……」


 一か八か、捨て身で突っ込むか? いや、まだあとどれ程で援軍が来るのかすら分からない。今下手に痛手を追うのはリスクが高すぎる。


「やぁぁあ!」


 リリーの声につられ、そちらの様子を横目で見る。あちらも飛んでくる空間を切る斬撃に手をこまねいているらしい。

 だが、流石後衛役(シューター)というべきか、飛んでくる斬撃を打ち消しつつも、それなりにカニ型から距離のあるあそこからでも何発か攻撃を届かせている。


「グギ……」


 よそ見している暇があるのか? と言わんばかりに、カニ型は意識が一瞬逸れた私への斬撃を、さっきまで動きながらやっと捌いていた斬撃とはまるで違う、より苛烈なものへと変えた。


「ッぐ───」


 防ぎきれない……!

 紫の炎を纏った斬撃を切り落とし、弾き、いなすが、それでも全ての斬撃には対処しきれない。防ぎきれなかった斬撃の何本かが、私の体に刻まれる。

 ───耐えろ、耐えるんだ。

 今私がここで耐えれば、きっとリリーが、応援に駆けつけてくれるはずの仲間が、ヤツを殺す手立てを見つけてくれる。

 そのために、今は絶対に倒れる訳にはいかない……!

 時間を稼ぐためにと心に決め、自分の体にあたる斬撃を最小限にして、致命傷になりそうな斬撃だけ切り落とそうと、意識を切りかえた瞬間。

 見えたのはさっきまでとは逆の、右のハサミから斬撃を放つSOの姿だった。

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