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第10話 厄介

 外の方で何かが探り回っているのを感じる。魔法少女だろうか。厄介だな、この状況では。


「目の前の少年の方に集中だよ、カニくん」


 そう横から言われ、意識を目の前の少年に戻す。

 我のことをカニくんと呼んだこのお方は、言葉があやつれるほどにまで自らを強化した、人に近い姿をした【魔人】。研究者を自称し、自らの体までも実験で改造した狂人。元は(いるか)型だと言うが、面影は殆どない。あったとしても白衣の下に隠れているだろう。

 ───今回の任務で我が仕える相手だ。正直、一緒に居たくない相手だが。

 そして我らに相対するのは、先程我の斬撃を食らっても立ち上がった少年。

 鯆の魔人は、我が宿敵たるこの存在が現れたことを感じとり、任務を完了させてこちらに合流してきていた。

 やはり、それだけ警戒するべき相手ということか、この少年は。───それとも、ただの研究対象か。

 改めて警戒するように、その一挙手一投足を見逃さないようにと目を細める。


「グギ……」


 だが、少年はただそこに立つだけで、何もしない。我の斬撃を食らってから、1度たりとも動いていない。


「───グギュ」


 体に当てるように3発ほど斬撃を放つが、やはり反応は見せない。

 ただ、その身を守るように展開された防壁を除いて。


「ふむ……やはり驚異的な防御力だ」


 我が空間を切り取るように少年に斬撃を飛ばすと、その悉くが、どこからともなく現れた盾のような防壁に防がれる。

 ───分からん。なぜそれほどの力を持ちながら、先程まで我の斬撃を避け続けていたのか。そして、なぜあの時だけ斬撃が当たったのか。


「余計な考え事は後にしなよ、カニくん」


 それもそうなのだが、こんな面倒な仕事を押し付けられたのだ、少しぐらいの考え事は許して欲しい。


「グギァ……」


 任務は既に終わっている。魔法少女が来る前に撤収したいのだが、我は鯆の魔人の命令でここに留まっている。


「この少年の研究もまだだしね……あぁ、早く持って帰りたい……!」


 ───その理由に、我は辟易していた。





「───すまない、遅れてしまった」

「あ、レイド先輩!」


 バルクが逃げないようにしっかりと手を握りながら結界の周りを捜索していると、突然頭上の方からかけられた声に反応してバルクがボクの手を離してそちらに走って行く。

 少女と言うには少し不釣り合いな真っ白な軍服のような衣装に、腰に下げた銀に輝く細剣。そして、胸に輝く翡翠の魔晶石のネックレス。

 ───魔法少女レイドジェード。沙紅が懐いている先輩で、私たちの教育係兼、同じスクワッドのメンバーの1人。その人が、空に漂っていた。


「先輩、リリー先輩は?」

「ここよ〜……」


 そして、もう1人。

 魔法少女リリーアメシスト。

 レイド先輩とは対照的な茄子紺(なすこん)のドレスに、アメジストのブローチような魔晶石。


「よいしょっと」


 ───似合わないなぁ。そう考えてしまうのは自然な事だと思う。何度見ても、慣れない。あの姿で武器が背丈ほどもあろう大鎌を振り回すんだから。


「じゃあリリー、よろしく頼む」

「人使いが荒いなぁ〜……───よいしょっと」


 ため息を吐きながら振り上げた鎌が、結界を優に超えるちょっとしたビル位の長さにまで伸びる。


「ほいっと」


 一閃。瞬間、空間を切り取っていたような結界が壊れる。

 無効化の魔法。それがリリー先輩の魔法だ。読んで字のごとく、魔法やら魔法によって起こされた現象───魔法現象というけど───を無効化する。一定の条件があるらしいが、今のところないに等しい。


「ありがとう、リリー。さ、行こうか。後輩諸君?」


 何度も見たが、やはり圧倒されてしまうその光景にバルクと二人で(ほう)けていると、レイド先輩がバルクの手を掴んで二人で先に行ってしまう。

 ───少しモヤモヤした気持ちになった気がした……が、多分気のせいだと思う。

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