[1-7]氷血の魔法使い
「んー、ここは?」
見たところ保健室のようなところだった。確か竜と戦って……
「……あっ、」
そこで僕は思い出した。
僕は反乱軍と戦い、そしてあの男が竜を召喚したんだ。最終的にS級魔法――クリスタルアースブレイクを使ったところまでは覚えてるけど、その後どうなったか覚えていない。
すると――
「おっ、カムイ起きたか。心配したぞ」
「……葵先生」
すると、葵先生が部屋に入ってきた。
「先生。竜はあのあと、どうなりましたか?」
「うん。あのあとお前のSランク魔法で竜とあの男は氷漬けになったぞ。それと、反乱軍の兵士は俺たちが倒して、戦いは終わった」
「……そうですか」
「どうした? 元気なさそうだな」
「いや、実感がわかなくて」
そして、僕は胸に手を当てると、そこには今まで鳴っていなかった心臓音が鳴っている。
「先生、僕は神楽さんのお陰で魔法が使えるようになったと思うんです。なにか知っていますか?」
「知っているぞ、神楽に色々聞いた」
「そうですか、なぜか教えてください」
「わかった。そのつもりで来たからな」
そして、先生は衝撃な事実を述べた。
「……カムイ、氷血病が治ったのは神楽が不死鳥と言う一族だかららしい」
不死鳥の一族?どこかで……
「――あっ! あの男が四季咲さんのことを不死鳥って言っていたことですか?」
「ああ、神楽いわく、不死鳥の一族は得意属性が必ず火属性で、作り出す炎を他の人に浴びせることで命を与えることができるらしい」
「……えっ!? 命を与える? そんなことができるんですか?」
僕が驚いている中、葵先生は続ける。
「さらに傷を癒やしたり、病気も治せるらしい。まさになんでもありだな」
たしかに何でもありだ。それに僕の氷血病を治したのに納得がいく。
――神楽さんが作り出した炎を浴びて、凍った心臓や血液を直し、停止している心臓を命を与える力で心臓が活動を再開させたんだと思う。
「俺も最初は信じられなかった。でも怪我人や、大怪我を負っていたあの竜を炎に浴びさせて、それから5分足らずで全治させていた」
「あれ? 僕は、半日経って魔法が使えるようになりましたよ」
「……神楽は、凍った血や心臓が高い魔力でなかなか溶けなかったからかもしれないって言っていたぞ」
それから……葵先生は真剣な表情になり、僕に聞いた。
「カムイ、一つ聞きたい。お前は反乱軍と戦った時、A級魔法を無詠唱で使ったな、さらにS級魔法まで。なぜ魔法が使えなかったお前が最上級魔法を唱えられたんだ?」
「……理由ですか、簡単です。それは、魔法が使えなくなってそれから、7年間A級魔法までの魔法を完璧に理解したからです」
「……なっ、魔法を理解する!? つまり、A級までの魔法を完璧につかえるようにしたということなのか?」
通常、難しい魔法になっていくに連れて魔法は制御が難しくなっていく。それを詠唱することによって簡単に魔法を使えるようにすることができる。つまり、詠唱は魔法を制御する方法だ。
そして、無詠唱魔法は魔法の扱いや理解度を上げることで詠唱しなくても魔法を使える極致なのだ。
それを、カムイは上から二番目のランクAまで無詠唱魔法を使えるといった。
「まて、お前は魔法が使えなかったんだろ、じゃあなぜ?」
するとカムイは、自分の目を指して
「僕は、見た魔法を目がコピーするんです」
それを聞いたときは何を言っているのか分からなかった……が理解する。
「エレメントアイか」
「そうです」
――エレメントアイ――それはかつて人工的に作った、見ただけで魔法の性質や魔法の使用方がわかってしまう目のことだ。
「エレメントアイ計画は廃止したと聞いたが」
「……エレメントアイの移植がうまくいかなったんです。成功者はぼくともう一人の二人だけです」
「そうか。ごめんな、きつい質問をした。もう一ついいか? エレメントアイがあっても魔力がなければ魔法が使えなかったし、無詠唱魔法までの領域に達しないだろ」
「エレメントアイは見ただけで魔法の性質がわかります。だから、魔力無しで練習ができたんです。つまり、魔法を使わなくてもイメージトレーニングで練習していました。S級魔法は魔力なしの練習ではできませんでしたけど」
「……カムイ、それは嘘だろ」
「――本当です」
「はぁ、お前も化け物だな……あとカムイ。お前は一週間以内に魔法が使えたから、退学は免れることになった」
「お前は魔法が使えるようになるために、ここに来たんだろ。どうする? 退学するか、滞在するか?」
先生のその問いは僕には愚問にしか聞こえなかった。
「――僕が魔法を使えるようにするのはお姉ちゃんを反乱軍から助けるためです。だからここに滞在します。そして、これからもお願いします。葵先生」
「ふっ……これだから、わかった。これからもよろしくな、氷血の魔法使い」
僕はそれを聞いてとてもびっくりした。
「――氷血の魔法使い?」
「ふふ……お前は今、学校で氷血の魔法使いと呼ばれているんだよ」
「……そうですか」
「なんだ、気に入らないのか? 結構かっこいいとと思うけどな」
「まぁ、たしかにかっこいいですけど……氷血かぁ」
「大丈夫。いつか、かっこいいと思うときが来るさ」
……こうして、少し遅い、僕の学校生活が始まるのだった。