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氷血の魔法使い 〜死なない魔法と氷の魔法使い〜  作者: もりりん
一章 氷血の魔法使い
6/11

[1-5]試験そして……

 神楽さんから氷血病の治る治療法を受けてから特に変わったことはなかった。

 そして今から試験が始まる。

「吹雪これからテストを始める。魔法が使えれば合格とする。」

「――では始め」

 僕は深呼吸をして呼吸を整える。

「ふぅ……」

 覚悟を決めて詠唱を始めた……

「氷の精霊よ。我に力を」

「――アイスフリーズ」

 僕は詠唱を唱え、魔法を放った。僕が放った氷の結晶がきれいに輝いている……と思って

 

 だが現実は違った。

「吹雪。残念ながら魔法が使えなかった。よって退学してもらう」

「えっ?」

 僕は目を見張るが何も変わらない。

 僕はそこで理解した。

「神楽さんは僕のことを落とし入れたと」

 

 そして、

 

「――約束を守れない?」


 それも同時に理解した。


 それから、僕の中の感情がぐちゃぐちゃになり、その場で崩れ落ち、がむしゃらに泣いた。ただひたすらに泣いた。自分の弱さに向き合いながら……


 それから三十分ぐらい泣いただろうか?葵先生は僕にハンカチを貸してくれたが、気持ちだけ受け取り、葵先生にお礼を言って荷物を取りに教室に戻った。


 ――今の僕はどうすればいいかわからない。


 唯一、この病気が治ると思って入学したこの学校も退学となって……

 

 ――家に帰ろう……


 そう僕がそう思ったときだった。学校の外から轟音が響いたと同時に、警報が鳴り響いた。

「――なんだ!?」

 するとアナウンスが聞こえてくる。

「――校内にいる生徒に告げる。敵襲、敵襲、直ちに体育館に避難せよ!」

「もう一度繰り返す……敵襲、敵襲……」

 敵襲、一体誰が?と思ったがこの学校に攻撃を仕掛けるのは()()しかない。

 そして、僕は体育館に向かって走り出した。


 ……僕が体育館に着き、周りを見るとちょうど裕翔の姿が見えた。

「裕翔!大丈夫?」

「おお!カムイ、大丈夫だ。あと、その、今聞くのも何だが、試験どうだった?」

「……ごめん裕翔。だめだった」

「そうかぁ……こっちこそ役に立てなくてごめんな。」

「ううん、それより今だよ」 

「……とは言っても敵襲ってことは反乱軍だよな」

「うん多分ね」

 そう、これは反乱軍の攻撃に違いない。それに、この状態は危険だ。いくら体育館に強度な結界を貼っても多人数がここにいると結界が壊れたときに一斉攻撃されてみんな反乱軍行きなってしまう。

「なぁ、これまずいんじゃないのか」

「うん。これは……まずいと思う」

 そしてすぐに予感は的中してしまう。急に体育館が大きく揺れ、ひびが入ったかのような音が響く。

「――結界が攻撃されているぞ!」

 その言葉を聞いた周りの生徒たちは結界を出ようとするが――

「まて! 今、結界を出れば出たやつから攻撃されるぞ!」

 ある先生がみんなに注意するが、3割ぐらいの生徒は結界を出てしまった。


 ……それから、これはもう悪い夢を見ているのではないかと思わせる光景だった。

 ある生徒は反乱軍から逃げ回り、ある生徒は命乞いをする。しかし、反乱軍は心がないかのように攻撃する。

 それをただ僕たちはまだ安全な結界の中で見守るしかなかった。

 それから、結界を出た生徒達は反乱軍に攻撃を食らって、反乱軍の兵士になってしまった。

 さっきまで仲間だった人たちが僕たちのいる結界に攻撃している。そして、僕たちも仲間を攻撃してしまうのではないかと恐怖に陥った。

……そして、10分たち結界が破壊され、反乱軍が迫ってくる。

「カムイ、短い間だったけど……楽しかったぜ」

「まだだよ。裕翔どうにかして逃げ切れるか?」

「少しはできるかもしれないけど、この量は……」

 僕たちは今、体育館にいた三百人ほどの生徒がいるわけだけれども反乱軍は……3倍以上の千人はいると思う。それに囲まれているわけだから

「持って5分ぐらいだな」

「うん。僕もそれぐらいだと思う」

 それから僕たちは抗った。しかし、戦力の差は歴然で、僕たち生徒は50人ほどになてしまい、もうだめかもしれないと思い始めたその時

「えっ!?」

 それはみんなが口にした言葉だった。なぜなら、反乱軍の兵士は一斉に攻撃をやめたのだ。

 そして、一人の男が前へ出てくる。

「ごきげんよう、生徒諸君」

 それは自我があり、言葉も発する反乱軍だった。僕たちはそいつをにらみつける。

「おお、怖い。私達は攻撃しに来たんではないんですよ。むしろ皆さんに提案があります」

 すると先生たちが反乱軍の男の前に立つ。

「提案だと」

「そう、先生方。提案です」

 そして、その男は言う。

「……不死鳥と呼ばれる種族の生徒がそちらにいらっしゃるんですよ。その方をこちらに渡せば私達は引きますし、何なら反乱軍になった生徒もお返しします」

 

「――不死鳥?」


 それは物語の中で出る不死鳥を連想したが、種族と言っているから違うのかもしれない。

「それで、その不死鳥は生徒の中にいると?」

 先生がそう返すと

「ええ、そうです。どうですか?いい話だと思うんですけど」

 一人の生徒を渡すことによって多くの生徒が助かる。しかし反乱軍の目的もわからないまま、その不死鳥と呼ばれる生徒を渡すことは危険である。それに、一人とはいえ立派な生徒だ。しかし不死鳥っていうのは、誰なんだ?

「――いいよ、その提案。」

 その声と共に一人の生徒が前へ出てくる。


「神楽さん!?」


 そこに出てきたのは主席でこの学校に入学した四季咲神楽さんだった。 

「へぇー、あなたが不死鳥ですか」

「その呼び方は辞めてほしいな」

「これは失礼。それでこの提案に乗ってくれると?」

「ええ、いいわよ、その代わり約束は守るんでしょ?」

「ええ、私は約束は守る人なのでね。しかし以外ですね」

「そう? 私が出なければこの学校は反乱軍に支配されて結局世界は一歩、反乱軍のものになると思ったから。これは賭け、あなたが約束を守るかも賭け、それと……最後ぐらい遺言を言わせてよ」

「いいですよ」

 

 神楽さんは、呼吸を整えて、僕たちに告げた。


 「私は反乱軍にとってきっと不利な能力を持っている。ここでは言えないけど……私は信じてる。みんなが反乱軍に勝ってくれることを、これは私のわがままだと思ってるけど信じてます。だから」


 そして、彼女は優しく微笑んで


「再び、平和な世界を私に見せてください」


 そうして、彼女はあの男の元へ行く。周りの生徒は、泣いていたり、静かに見送くっていた。


 でもなぜか僕はお姉ちゃんと重ね合わせていた。なぜかは……なんとなくわかる気がする。


 彼女はお姉ちゃんと似ているんだ。自分より他の人を優先したり、自分の気持ちを抑えるところだったり、特にあの悲しそうにする笑顔が僕にはお姉ちゃんと重ねて見えた。そして、同時に悲しかった。

 僕は、お姉ちゃんの面影かもしれないし、あの悲しい笑顔を見てしまったからかわからない。

 それでも――助けたい――そう思った。

 

 そんな時だった。僕の体はだんだん熱くなってきている気がする。


 そして――


 「……ドクン……ドクン……ドクン……」


 そんな音が聞こえる……

 

 それは、昔はいつも鳴っていたけど、いつしか僕には無くなった音……そして8年ぶりに聞くそんな音だった。

 そして、僕の中に()()が巡る。

 

 気づいたら僕の体は動いていた。

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