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第九話……『歩み……』

「あ~リュックの肩ベルト切れかかってるやん」


そのリュックは学生の頃に買ったもので、 気に入ってるものでもあった、 ファスナー部分には朱色のお守りが着いている


「ふざけんなよ……、 背負えなくも無いけど……戦いの最中に切れたりしたら危ないよな……まあ仕方ねぇ、 ここで新しいリュック探すか」


生き方が突然変わった時、 今まで大切にしていたものが必要なくなる事は良くある、 出来ることなら手元に置いておきたい、 そう思うのも人情だが、 それが邪魔になったり、 重しになっては目も当てられない


生きる為には惜しまず、 不要なものは手放せる……それもこの世界では必要な事で、 彼にはそれが当たり前に出来た


「中の物は……って多くは無いけど、 さっきの缶詰とか一旦置いてくしかねぇ……まあ、 それよりも先ずは、薬売場だな 」


動くと傷が痛む………


「水もいるか……」


すぐ近くに飲料水コーナーがあるはず、 運が良ければそこに水もあるはずだ


その場所は直ぐに見つかる……水は………


「ある……やった……」


箱売りされている2リットルの水が置いてある、 普通に嬉しい、 さっきの缶詰コーナーがガランとしていた事から、 あの日早々と動き出した人達が多く買い漁ったのだろうと思っていたので、 水もないと思ったが、 良かった


「箱開けちゃいますね」


ベリッ!と音を立てて糊が剥がれる


「犯罪やん……」「今更やん……」「でも犯罪やん……」「でも今更やん……」


来る……来ない……と花びらを散らす少女の様なテンションで、 下らない事を言いながら箱を開封する


「天然水だ~ 期限も来てないっぽいし飲水としても問題ないよな?」


キャップを回し、 口へと運ぶ


…………美味い!!


「美味い!! なんか美味しく感じるな~、 2リットルペットボトルだから最高に飲みずらいけど」


蓋を閉め立ち上がる、 今度こそ薬売場に向かう


薬売場はそんなに遠くない、 歩いて直ぐにたどり着いた


「包帯、 ガーゼ、 傷薬」


いつもどうり必要な物を物色する、 いつか人の世界が戻ったら、 犯罪人として訴えられたりするのだろうか………


「………消毒アルコール、 あと固定するテープも」


一抹の不安が、 一瞬手を止めさせるが、 考えたって仕方の無い事だと割り切る


「背中の傷はいまいち見えない、 リュックが庇ってくれたから大きくは無いけど、 バイ菌とか有るかもだし」


「トイレを目指そう、 確か入口入ってすぐの所にあったよな、 鏡が着いていたはず……」


直ぐに行動を始める、 入口を目指して歩き始めて………


不意に足を止めて後ろを振り返る……


……


…………


「はいこれお守り……いっつも辛気臭い顔してるから厄介事に絡まれないようにね………あら、 冗談よ」


…………


……


からかう母の声が聞こえた……


「はぁ……わかったよ……」


さっきの戦闘があった場所にポツンと置かれた、 ボロボロのリュック、 その場所まで引き返す


その前にしゃがむ……傷が痛む、 それでも


「あった……厄除け」


リュックの外ポケットに着いているファスナーにぶら下がっている朱色の目立つお守り、 運良く傷は付いていない


「行こう……」


用はこれだけだ、 でも大事な事だった、 大きな切り札になる訳でもない、 守護の効果は感じられないかもしれない、 それでも………


「分かったって……あと顔はどうしようもねぇよ、 生まれつきなんだから」


彼にとっては大事な事だったのだ、 だって不思議と心が暖かくなったのだから


「とりあえずベルト通すとこ……名前なんだっけ?……ループ?、 ここに通しとこう」


もうここに用はない……


「さて行くかな……傷の手当しに………ふっ、ださ」


そう言うと、 今度こそ歩みを進めた







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