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第五話……『限界』

「うおらぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


自分の咆哮が店内中に木霊する………


グッシャァァァア!!!!


振り返りざまに放った一撃が敵の肉体を穿つ………


願わくばこの一撃で死んでくれ………………



「じゅみぃぃぃぃいヨふぁぁぁぁヤ!!!」


敵の痛みに悶える声………じゃねぇ…………痛みに耐える声だ…………


(こいつ………咄嗟に腕を構えて、 俺の一撃を防ぎやがった……)


片腕は確実に破壊した、 ナタは骨まで達した感覚が伝わる……でも


(それじゃ死なねぇ………直ぐにも動く………こいつは、確実に腕を犠牲にして急所を守った……生きる為に、 なかなか勇気がある奴だ……………モンスターのくせに……)


生きる為に急所を守り、 生きる為に反撃しようって意思がある……………なら………やべえ


俺は今思いっきりナタを振り切った状態………絶望的な程に体制が悪い


(っ、早く構えなくては!!!)


しかし遅い、 敵はもう無事な左手を大きく伸ばし横薙ぎに振るってきた………奴らの手には鋭い爪が生えている……………


(っ、クソ!!)


「フッッ!!」


考えるより先に体が動く、 掛け声と共に勢いに任せて横方向に飛び込む!!


(不格好過ぎて受け身も取れねぇ!!)


左手を地面に打ち付けながらも、3メートル程転がる……


(体が………痛てぇ…………)


脇腹に鋭い熱を感じる……敵の爪が身を掠めたのだろう………


傷口に当てた右手にベトり……


瞬時に敵を睨みつけ、体のバネを意識し思いっきり立ち上がりる……


すぐ目の前まで迫っている敵に……上方向の勢いのままナタを振り上げた………


その刹那、目の前の敵の、 さらに後ろの闇の中から2体敵がぬらりと姿を現すのが見えた……


また……世界の流が遅くなり、 思考速度が急激に増す


俺は今棚と棚の間の通路から抜け出した広い通路で戦っていて、 俺の前には敵と通路の奥行きが見え、敵からも俺と通路の奥が見えている、 そうゆう位置関係、 敵は3方向から挟み撃ちを仕掛けて来てる筈だ


だから奥から回り込んできた敵が見えたのは当たり前、 なら………


後からも回り込んで来ているはずだ………った


目の前の敵に集中しすぎた………1体1コレが……限界……



「ぐあっっつ!?」


背後からの一撃………鋭い爪が背中を深く引っ掻く…………


(いっっってぇ!?)


涙が滲む、 倒れそうになる気持ちを精一杯押さえつける……


この後普通に死ぬかも………限界………正面きるなら1体1が俺の限界……………


……なら…………せめて……………


今目の前の敵以外は忘れろ……全力の振り上げを敵にぶつける事だけそれだけを考えろ………


…………せめて………1体1でだけは負けられない!!



「ラァァァァっ!!」


バキッっ!!


振り上げた一撃は目の前の敵の下顎に深々と突き刺さり、 敵が白目を向く………


(せめて……こいつは殺したか……?)


どこか呑気にそんな事を思った直後、 背後から鈍い一撃が背中を殴打した


俺は今度こそ地面に倒れ込む……せめて少しでも敵から距離を取ろうとか、 殴られた勢い以上に地面を転がる………


痛い………


(いってぇぇ……何だ、 何で殴らてた?)


あまりの痛さに目を閉じていたらしい……薄目を開けて確認する……


バットだ……野球の木製バット……


(ここホムセンだもんな……こいつらも道具は使うんだな…………)


(小さい頃家にもあったな……野球誰もやってないのに、 なんであったんだろ…………)


まるで走馬灯でも見るように過去の情景が頭に浮かぶ……………


痛みも、 恐怖も、 他人事の様に感じて、 どうも思考が呑気なものになる


ここまでかな……………


どこからか遠く声が聞こえる………気がする………




…………これで、 良かったんじゃない?


…………この状況を望んでいたんじゃないの?






………………俺は…………………………



意識は、さらに深く深く沈んでゆく……………




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