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第四話……『鼓舞』

家の近くにいつでもあったホームセンター『ココメリコ』


昔……小さい頃、 よくはしゃいで、 店内を走り回り、 母親にとんでもなく怒られたな~


あれ以来、 人の多い所でははしゃがないって事を小さいながら肝に銘じた………………………それなのに……




「間に合えぇぇー!!!」



21にもなって、 ココメリコの店内を全力ダッシュする事になるとは…………


そして………


「うおっっらぁ!!!」


不格好な滑り込みをかます


ガランッ ガラガラッ ガララ


すぐ後に、 後ろで大きな物音がして、 その音は店内へとこだまする


ギリギリだった…………


でも安堵するには気が早い


「うんっよいしょ!!」


掛け声と共に思い切り起き上がり、 周囲を見渡す……


「やばぁ…………」


倒れた棚が、 隣の棚にぶつかり崩れそうになっていた、 ドミノ倒し状になってたらもっと悲惨だった、 そして間に合わず巻き込まれて居たら……


「押しつぶされちまうぞ……まじで………」


呼吸を落ち着けながら、 敵の居るであろう場所を睨みつける………


「出てくるなら、 出てこいよ不細工共!!」


これだけ物音を立てたんだ、もう静かにする必要が無くなってしまった……


だから惜しげも無く大声で叫ぶ………


「小せぇ頭で必死こいて考えたんだろうがぁ、 無駄だった見てぇだな!! 俺は元気でピンピンしてるぜボケどもが!!」


大声で叫ぶ事は彼にとって一時的なドーピングになる、 恐怖心を薄めてくれる、 そうじゃなきゃこの後の展開は乗り越えられない…………


だから考えるな、 言葉なんて通じなくても、全力で叫べ、 恐怖を………怒りに変えて、 奴らに向けて解き放て!!


「セコい手使ってねぇで、 馬鹿は馬鹿らしく、 真正面からぶつかってこいやぁ!!!!」


正直厳しい………くっそ………一気にピンチだ……


ただの願望だ……隠れてチクチク襲われるより、 数の暴力に叩き潰される事を知りながらも真正面から戦いを挑まれた方が幾分もましだ………


「ましって、 何だ………どっちにしろ死ぬだろ………それ」


睨みつけていた空間から2匹、 敵がぬらりと姿を現す


(他の奴らは回り込んで来るか………クソ……全然望んでねぇ、 こんな展開………)


俺はわかってた筈だろ……自分の限界って奴を………


そもそも、 こんなでかい建物なんでいきなり挑んだんだっけ? 通ってたコンビニに置いてあるものじゃやってけ無くなったから、 でかいホムセンまで来た?


それにしたって、 もっとやり方があったろ……こんな魔境みたいな所、 1人でどうこうできるもんじゃねぇよ………


他にも理由があったよな? いや初めから本当はそれが本質で…………………


俺は……………


「しゅみヨふぁヤァ」「しゅみヨふぁヤァ」


敵の声で一気に現実に戻される、 2匹はじりじりと近ずき、 今にも飛び掛って来そうだ…………


「ふぅーーーーぅ」


長く息を吐く……………


「よし…………」


それだけで少し覚悟決まった



俺は重心を低くし、 ナタを構える……………


敵はさらにじりじりと近ずいて……………………


………


……………



………………………………




刹那……敵との距離が一気に縮まる……


距離を詰めたのは近づいて来て居た敵ではなく、 俺だ


どっしり構え、 カウンターを狙うかのように見せかけ、重心は前へとずらしていた………


出鼻をくじいてやる………敵のペースに飲まれない………、 これを意識して戦う………


敵は驚いた様に一瞬硬直する………


いい……一瞬の油断が命取りになるのは何も自分だけじゃ無い、 命の取り合いをする時は常に平等だ…………


そして………力強く踏み込んだ左足を軸足に……右足を流れる様に前へ………その勢いのまま一体の敵にナタを振りかぶっ…………らない……


ナタを振らず、 勢いは、 そのままの勢いで敵にぶつかる…………つまりタクックルをかます…………


「みしゅっっ!?」


予想以上に敵は吹き飛ぶ……当たり前だ……こいつらの体は小学生くらい小さい、 それに大人の全力タクックル……


モンスターだからってこいつらは生物、物理法則やら何やらを超越した存在じゃない、 派手に吹き飛んだら簡単には起き上がれない、 脳震盪を起こした可能性も充分ある……


つまり………


「1体目!!」


良いように考えろ……悪い事は考えるな……難しくも考えるな……常に1体1で戦える状況を意図して作り出せ


全て良いように進んでる、 2体並んで出てきたモンスターのうち1体を敵後方へと吹き飛ばした、 その勢いでもう一体のいた位置よりも前に出てる……


つまり今は、 自分のすぐ後ろにもう一体の敵が居る……


敵をぶっ飛ばした分、、自分は思った程体制が悪くない、 少し不格好で無理があるが思い切り体を捻って振り返り座間にナタを振れば、 敵にヒットする筈………


だって敵だって俺に攻撃しようと、 近づいて居る訳だから………そうだろ?


「そうだ!! その通りだ!!」


自己肯定で己を鼓舞する!!


湧き出た勇気が、 力となって体を動かす……


今出せる内の…………渾身の一撃を……叩きつける!!!


「うおらぁぁぁぁぁぁあ!!!」




グッしゃ!!!




振り返り目にするよりも先に、手に伝わる感覚が俺に教えてくれる………


俺の一撃が……敵を確かに捉えた事を…………









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