表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/164

第二十五話……『語らい』

主人公 明山日暮あかやまひぐれ 21


蛮鳥ばんちょう 暗底甲狼狽あんていこうろうばい

迫る手、 迫り来る……手手手


「手えどんだけあんだよォ!!」


そう叫びながら腕を横凪に振るう、 鈍い切れ味しか持たないシャベルだが現状それは彼の戦うための牙だ


敵の手が2、 3立て続けに迫る、 1本をなんとかかわし、 その次の手に軽くシャベルの刃を押し当てる、 迫る手は自分の進む力で少し傷がつく


反応出来る、 腕の動きは良く見れば単調で反応の間に合う物ばかりだ、 要因は幾つもある、 まずひとつ気づいた、 手の白さ……


「貧血みてぇだなぁ」


そう血の通いが悪い、 良く考えればそうだ、 体の血の量は決まっている、 俺は奴に攻撃して血を流さしてる、 俺もだけど気合で何とかなっている


でも奴と俺とは違う、 奴は複数の腕を遥か地下深くから伸ばしている、 やつの体に当たり前に心臓が着いてるなら伸びてる腕をポンプしてここまで届けてると言うこと


それが1本ならばいざしらず、 複数それもこの長さ、 この腕がどれだけ伸びるのかは知らないが、 重力に従って血は上に登りずらい


「大切なのは第1に攻撃を喰らわないこと、 そして大量に血を流させる事だな……」


また腕をかわしながら周りを横目で見る、 集まっている、 腕が5本、 俺に近づいて仕留めようと、 タイミングが合いすぎている


「こっちはもう8秒、 いつでも行けるのによ!!」


彼の戦いの牙はちっぽけなシャベルだけでは無い、 その内に宿す破壊の力、 ブレイング・バースト


これはその応用……


「ブレイング・ブースト!!」


空気の圧がシャベルの刃を押し出す、 そのままの勢に任せ体を回転、 5本の手を切り飛ばす


宙を舞う手から血が大量に吹き出す、 複数動かしてるだけあって1本から出てくる血は意外と少ない、 が無情にも心臓の鼓動が血を外へ押し出す


既に多くの血が流れた、 しかし未だ手郡は彼を仕留め切れずにいた


「どんどん来ていいぜ!! 今結構乗ってるから楽しいからもっと来いや!!

へへへ」


今彼の体は、 脳は最大限に働いている、 積み重ねだ、 これまでのひと月程、 いやその前から戦いという物を考え意識して生きていた、 彼の生存本能は戦いを知っている


「ほらどうしたぁ!! 次だ次次次!! へへへっ!! おらぁ!! おっっつ??…… ありゃ……」


彼はノリノリだった、 でも闘争心が冷える、 手が退いていく、 逃げたわけでは無いだろう


「……はぁ……一旦落ち着こう……」


さっきまで激しかった、 だが突然の静寂、 『 ココメリコ』の広すぎ駐車場、 通る風が肌を撫でる、 昨日降った雨、 それが作った水溜まりと血溜まりが混じり合って行く


「嫌な感じだなぁ…… そろそろ戻ってくるって事か、 鳥野郎」


それを示す様に風が強くなる、 また吹き出している、 地面の穴ぼこから目に見える程の風が吹き出してくる


ボコボコ……


地面が崩れ出す、 少しずつ、 それが連鎖してどんどんボコボコ、 目に見えて大きな穴が空いて行く、 気づけば巨大な穴、 地面のアスファルトが吹き出した風で吹き飛ばされて行く


「あぶねぇなぁ、 飛んできたら怪我するわ、 まあいいや、 演出的にはあの穴から出てくるって事だな……」


「ならこっちも何か投げるか、 出てきたタイミングで石ぶち込んで…… もっと重くて風の影響受けないものが良いな……」


周囲を見渡す……


「おっ、 園芸品コーナー特有の簡易テント、 そのポールが転がってらぁ…… おっも…… まあ良いや」


………………………


………あと10秒…………………


声が聞こえる、 彼の内側それの存在をまだ日暮自信あまり分かっていない


「もうすぐそこやん、 構えぇー」


…………………………


………………5秒……………………


………………4秒………3………………


力強く握る金属のポール、 彼の力はこんなものまで轟速で投げる事が出来る


…………………2…………………………


……………………1………………


「ブレイング・ブースト!! レッツゴー!!」


金属のポールは風を切り裂き射出される、 そして巨大な穴から姿を出した何かに衝突した……


そのように見えた………


拡散した暴風で目を細める、 しかしそれもすぐに止む、 ここに来て厄介だった風邪はピタリと止まった


「え? 勝った? 全然見えなかったけど……」


そうだったら良いのだが、 本能で理解しているそんな簡単だろうか……


カランッカラン


周囲に物音、 そちらに振り向くと金属のポールが落ちてきた様だ転がっている


「落ちてって……何でよ……」


バッサバサ バサバッサ、 羽音、 力強い羽ばたきの音


何かが影を作り、 今頭上に何かが居るのだと理解した……


…………………………………………


「おはっ…… じゃないのか、 こんにちは……上手く聞こえているかな? 伝わっているかな?」


は? 声 俺が喋ってる訳じゃ無いぜ?


「こんばんわ何てのもあるのか、 3種類、 時間帯によってか成程成程、 やっぱり人間って種は面白いね、 こんな事毎日言ったって何も変わらないだろうに、 逆にそういった物に価値を見出していたのだろう……」


え? 鳥野郎喋ってる?


「え? 鳥野郎喋ってる?」


思った事をそのまま聞いてしまった……


パァっとその顔は笑ったように見える


「良かった聞こえたんだね、 安心したよ、 と言ってもさっきも喋ったよね? これ初めてじゃないよね? まあいい、 改めてこんにちは、 我の名前は暗底甲狼狽、 今は無き、 って無くなったばかりだけど蛮鳥族の長、 と言うか唯一の蛮鳥です…… 君は?」


クイッと首を振って俺に催促してくる、 なんの迷いも持たず自己紹介をする


「俺は…… 明山日暮、 人間」


状況が掴めない、 なんで会話してんだ?


「そうか!! 日暮か!! 日暮くん!! 君色々聞きたいことあるでしょ? 何でも聞いてよ、 応えられることなら何でも答えるから!!」


嫌にフレンドリーだ、 頭がぐるぐるする、 何? 何なの? 戦いの最中だよね? 敵じゃ無くなったとか?


「え? なんで急にそんななの?」


知りたい事があるのなら素直に聞こう


「あ〜 驚いてるんだ、 そうかそうか、

そりゃそうか、 さっきまで殺しあってたんだもんね、 僕も敵とこんなにお喋りするのは初めてかな」


……


「敵ね、 ちゃんとまだ敵だって認識してるって訳だ、 良かったよ鳥野郎、 警戒解くとこだったわ」


……


「それは危なかったね、 攻撃するつもりも無かったけど闘争者としてどうかと思うし、 それで質問だけど、 敵ってのはYES? だよ、 この後殺すね」


「でもその前にね、 こんな事をしてるのは、 初めての試み何だけど慈悲って奴なんだ、 勘違いしそうだから先言っとくとバカにしてる訳じゃないんだ」


「今まで何千人とかって人を殺してきて、 皆ね不思議そうな顔をするんだ、 死ぬ間際だってのに、 自分は何で死ぬのかって、 そんなの弱いから以外に無いけど、 何にせよ知りたがるんだよ色んなことをさ」


「だから今回は殺す前に質問タイムを儲けました、 うんこの? 英語? も違和感なく混ぜられるね日本語? とは違うのに日常的に会話に取り組んでいたのか…… おっと話が脱線してしまった、 だからさ何でも聞いてくれ……」


……


成程そうなのか……


「それはそれでナチュラルに馬鹿にしてるけどね、 まあ良いや、 そういう事なら聞くけど、 なんかさっきと全然違くね? 別の生き物?」


……


「すまない……人の感情は理解するのが難しいんだ、 それで我の急変だけど、 最もだけど難しいね」


「この姿が自分なのか、 さっきまでこそが自分だったのか、 どちらにせよ、 確かにさっきまでとはまるっきり変化しているんだ」


「と言うのも、 我の体の細胞は取り込んだものを私にしてしまう、 それは栄養面とかではなく、 知識、 技術、 記憶、 色んなものをそのほぼ全てを自分の物として取り込めるんだ、 因みにさっきの手もそうだよ、 掴まれなくて良かったね」


「それでね、 そうやって今まで強くなってきたんだけど、 ここ最近人間の知識や記憶を取り込んでるうちに脳がパンクしてしまったんだ、 人は色んなことを知っていて、 色んな事を考えるんだね」


「それを何百とか吸収してたらね、 まさか限界許容量があるとはね、 凄く頭が痛かったから、 取ってしまったんだ、 そうしたら脳は脳で動きはしないんだけど勝手に色々考えて居るし、 体の方は知性のないただの鳥になっちゃうし」


「でもね、 脳に頼んどいたんだよ、 必要な情報だけを整理して置くこと、 さっきは体に脳を戻してきたからこうなっているのさ、 どう? わかったかな?」


……


「何となくは、 話を聞くかじりじゃ、 お前は人間の事を知りすぎたって事か、 その言葉も知性も」


……


「そうだよ、 今の我は誰かの記憶や知識に脳をほぼ占領されている、 どっちかって言うと我ってバトルジャンキーで戦いの世界で生きて来たから、 荒っぽい正確なんだけどね、 今は落ち着いてるだろ?」


「さっきのどっちが本当の自分か分からないってのはそういう意味なんだ」


……


流石に頭が冴えてくる何を聞くべきだろうか……


「似てねぇガキどもが居たな、あいつらは何なんだよ 」


……


「あ~ あの子達はね戦士にするつもりだったんだ、 でもね、 あの子達を産む前には既に人間を食ってたんだけど、 母性って言うらしい、 それが働いてね、 知性を失ったら余計にそういった本能みたいなものが強くなってね、 殺される度に心が傷んだよ、 今は何とも思わないけどね」


「我の手、 覚えてる? 今は閉まってるけど魂? に刻まれた我だけの力なんだ、 名を『 暗観望測世行百手』(あんかんぼうそくよこうひゃって) さっきの脳と一緒で無理やり引っこ抜いてね、 100本の腕をまず100人の人間に埋め込んだんだ、 そうしたら生まれたんだよ彼らが」


「素が弱小種族だから彼ら自体も弱かったけど、 無抵抗の生物に対しては特に問題なく戦えたね、 君は抗ったけど」


……


「100体? すっくねぇな そんなんで無抵抗だからって、 壊滅? それをこんな広い範囲で?」


……


「むむむ、 それは少し勘違いだ、 我が収めている、 と言うか地上の我のテリトリーはこの建物を起点とした数キロ程の範囲でそう広くは無いよ、 基本的には地下の広大な空間が根城さ、 あそこは気分が良いんだ、 暗くてね、 外は眩しいね」


「と言うかなんだい? 我を倒せがこの世界のこの危機は終わると思ったかい? そうだとしたら甘いね、 ざっと飛んでみて来た事あるけど他はもっと魔境みたいになっているよ、 我よりでかくて、 軍を成して、 だから我も餌を1杯食べて負けないよう強くなっているんだ」


……


やっぱりこの世界はどこもかしこも機能していない、 少なくともこの街の周辺、 さらにその先、 日本、 その他の国、

全てで同じように起こって、 それぞれで強大な存在が跋扈しているのか……


「フフフッ、 まじか、 俺今そんな世界に生きてんだな、 ヒヒフフフッ」


「サンキュ、 鳥野郎、 楽しくなってきた、 質問はこんなもんだ、 フフフ」


……


「ハハハ、 もっとありそうなもんだけどね~、 珍しい人間にだよ、 因みにさっきから君が言ってる鳥野郎って戦士たちとの区別、 よくわかっているね、 あれは人間がベースだからああなるだけで、 我の本当の姿は……」


……


身体中から手が生える、 それがどんどん絡みついて伸びて、 形作って行く、 話を聞く分には百本の手が重力に従って、 あるいは逆らって、 伸びている、 腕が絡んだ銅は筒のような形状、 そこから鳥頭と巨大な羽が生えたビジュアル、 それが姿を表した


……


「我の両親は、 夜駆由来鴉の母と、 触手腕触蛸の父だからね、 こんなもんさ、 因みに父の一目惚れだったらしい」


……


「意外すぎる組み合わせだわ、 なんやねんそれ全然聞きたないわ、 ってそんなビジュ結局鳥頭じゃねえか!!」


その驚きを見たかったんだとばかりに暗底甲狼狽はニヤリと笑った、 さあ勝負再開の時が来た……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ