第二十四話「開戦間際」
決定打、 確かな力はあってもそれを持たない者もいる、 決定打とは必殺の技、 攻撃とは本来一撃一撃、 全ての攻撃が相手の命を確実に奪う事を想定して放つはず、 牽制ならまだしも、 様子見程度の攻撃など命を掛けた戦いには不要な代物
命を掛けたならば、 全ての動きは相対する者の命を確実に奪える様に、 つまり決定打とは繰り出す全ての動き全ての攻撃の事であり、 その全てが必殺の威力、 性能を持たねばならない
特出した必殺技など競いの場でこそ発揮するもの、 真に命をかける戦いをする物ならば、 その存在全てがひとつの刃のように、 鋭く研ぎ澄まされた闘志が戦う前に敵を一度殺している
そして戦いが始まれば、 闘争全域は全て必殺の間合いであり、 常に一撃必殺を旨とし乱撃すべし、 始まったなら敵の息の根は確実に止める事が闘いにおいての礼儀である
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血飛沫を上げながら倒れる2本の腕、 このスコップとブーストによるコンボは今確かな殺傷性を有した決定打になり得ている
しかし……………
「威力若干殺されたな、 吹き出る風が邪魔すぎる、 地面の穴ぼこが少ない所じゃなきゃ今みたいには使えないな、 オマケに8秒が厄介すぎる定期だよ、 トホホ……」
一撃の殺傷性のばらつき、 どの場面で使い、 温存し、 勝つのか、 常に考え無くては
幸い腕はこちらに向かってくる、 少なくともこの場所はブーストが使えるくらいには風は緩い、 けど新たな腕が地面を突き出てくる、 これの可能性はかなり高い
「有利な状況はとことん攻めるべしだろうか……」
考えても仕方ない、 いやもっと考えろ、 思考を回せ
「ブレイング・ブースト・シンキング」
ぬ~~~ん
そんな音が出るように、 景色が伸びて伸びて、 そしてその中で幾つもの自分が動き出して戦い始める、 俺は幾つもの可能性の中から最適解を選ぶだけだ、 それこそが選択という物
殺される自分、 逆に伸びて来る手を切りつける自分、 想定される自分の動きと敵の動き、 その中から最適解を探す
そして………………
(見えた………………これだ)
そう思った瞬間世界は当たり前の速度で動き出す、 初めに到達する手、 真正面から迫るそれを振り上げたシャベルで打ち付けいなす
次の腕は連携で振り下ろし、 その次は体の動きに合わせて蹴りを入れる
次々襲い来る八本の腕を、 いなし弾き飛ばす、 防戦一方に見えるが、 考えはある
八本の手が宙で旋回し再度俺に向けて向かってくる、 その手達は俺を綺麗な円形に囲み高さも同じ程で向かってくる、 考えられた動きだ
考えられてこの配置に来るように計算された、 俺に……
「ブレイング・ブースト!!!」
スコップを圧縮した空気が押し出し、 速度が高い殺傷性を生み出す
「吹っ飛べ!! 8コンボ!!」
片足を浮かせ、 もう片足はつま先立ち、 その体制で伸ばした腕に握るスコップを加速させた、 俺の体はコマの様に回転し、 迫る八本の腕を等しく深々と切りつけた
周囲に多量の血が飛び散り凄惨な現場を作り出す、 これが出来たのは一重に先程打ち出した砂利が当たった腕の動きが鈍かったからだろう、 痛みを感じてるのか、 血が失われたからか
何にせよ作戦は成功だ
だが…………………
ボコボコ、 ボコボコボコ
地面に新たな穴が開きそこから手が除き出す、 先程想定してた事だ
しかし
「どんだけあんだ?」
爆発的な闘志は冷静さを取り戻そうとする意志によって薄められる事もある
「無限湧きじゃねぇんだろ? なんたってこのまま本体のてめぇが引きこもりに徹するってなら俺は……」
しかし同時に彼の闘志に更に火をつける要因もあった
「つまんなさすぎって思うぜ、 お前の戦いはな」
再び鳥頭の本体が姿を現し彼と闘うことを心のどこかで確信しているから、 その戦いが楽しい物になると実感出来るからだ
「本気の戦いならてめぇが出てきて、 てめぇで俺を殺せよ、 殺されるつもりはねぇがな!!」
叫び声は腕を介して本体の元へ……………………
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「勝手な事を言うな人間風情が……」
そう怒気を含んだ声で呟くその者の口角は確かに上がり、 待ち望む戦いに確かに備えるようだった