二十一話……『状況変化』
風が、 渦巻くように、 力強く吹き上げる
体勢を低くして構える、 そうしないと吹き飛ばされてしまいそうだ
「なんなんだよ、 まじでぇ」
呟いて気づく、 穴から吹き上げられた暴風が、 脆い地面を更に削って穴が広がっている
「離れた方が良さそうだ」
そう言うと同時に駆け出し、 広いココメリコの駐車場を目指す
走りながら気づく、 道路の端などあまり目を向けない部分に拳サイズの穴が幾つも空いていて、 そこからも風が吹き出している
(何の穴だ? こんな穴ぼこだらけで、 一体………)
そう思ったその時、 その穴のひとつから何かが飛び出し向かってきた、 それは鋭い爪の着いた……
「手だ!? トイレで襲って来たあれと同じ!!」
またしても大きな鳥頭の手が出てくる、 手は俺の位置を理解しているようにまっすぐと向かってくる
「ちっ! ブレイング・バースト!!」
空気の圧が放たれる、 避けようも無いはずだ、 至近距離からのバーストは絶大な威力だ
避けれる筈がない、 しかし相手は鳥頭だ、 避ける事は出来なくても、 無力化する事は出来る
バコォ!! そんな音がして足元付近の地面に穴が空く、 そこから吹き出した風がバーストの空気圧を四散させる、 そして更にもう一本腕が出現する
「ちっ!! 卑怯だぞ!!」
腕が2本、 どこからか延ばして居るなら、 複数体居ない限り次は無い筈だ、 つまり……
「吹き飛ばしてやれば、 腕無しさんって訳だ」
右手を見る、 何ともない俺の右手だが、 ついさっきブレイング・ブラストを打ち出した方の手だ、 吹き飛ぶ程の衝撃を感じ、 相手を血に沈めた一撃だが、 俺の手は衝撃程に怪我ひとつない
ブーストで自分を吹き飛ばす時も、 体は加速して飛ぶが、 空気の圧が俺を傷付ける事は無い
「昔から思ってたぜ、 飯食ってる時に唇噛んで口内炎が出来た時、 何で自分で自分が攻撃できるのかってな!!」
拳を強く握る、 渦巻く力が拳の中で荒ばれ、 膨張する力を延びてきた鳥頭の手を殴りつける
「おらぁ!!!」
ぐしゃぁ!! ひしゃげる様な音がして延びてきた腕はとんでもない方向に折れ曲がった
「さいっこう!! どんなもんじゃい!!」
戦いの高揚が再度身を焼き付ける、 冷めきった体に、 思考に、 魂に、 湿りきった薪にも火がつく、 熱が自分を焼き焦がすような感覚がして痛みが引いて行く、 もう戦いの事しか考えられない
こんな時は、 笑うしかない
「ふはははふふはぁはふふっははは、 かかってこいや!!!!」
それに呼応する様にもう一本の手が延びて………
バコォ!! そんな音がして……
(さっきも聴いた音だな……………何だっけ?)
側方から聴こえたその音を横目で確認する…… 案の定、 手だ
正面を見る、 1本は折れ曲がって落ちてるし、 もう一本は今にも襲って来る、 そして………
「3本目ぇぇ??」
そこだ、 そこを機に状況が大きく変わったと思った、 音が更に続いたからだ………
バコォ!!
バコォ!! バコォ!!
バコォ!!バコォ!! バコォ!! バコォ!! バコォ!! バコォ!!………………………………………
次々に地面に穴が開き手が伸びてくる、 吹き上げる風も周囲を渦巻き今にも竜巻となって襲ってきそうな印象を覚える程強い
(この中じゃまたしても俺の力は無力化されるかもな)
どうする、 決断は早めにしなくては
「……………仕方ねぇ、 奥義!! 1時退去!!」
駆け出す彼、 追いかける手群、 風に打ち出させるように飛ぶ手群の方が幾分か早い
鋭い爪が今にも彼を捉えようとして……………
手が空を切る、 彼が体勢を落としたからだ、 しかしそれではすぐに捕まってしまう
「と、 思うじゃん?」
言ってみたかったセリフ上位を言った彼のテンションは、 未だ高いまま、 よく見ると彼のスポーツシューズの底が膨張ししたように見えた
(拳の中に発生させるのと同じだ、 風の入らない場所からなら四散せず使える、 俺の力は俺を傷付けないから気にせず近くで打てる)
「ブレイング・ブースト!!!」
スポーツシューズの底を突き破り、 空気圧が低い体制の彼の足を前へ推し進める
「逃げるんだよぉ~!!」
言ってみたかったセリフ上位を更に言った彼は最高にハイテンションだった




