第二話……『侵入からの遭遇』
暗順応……明るい空間などから暗い場所に移動した時、一瞬何も見えない程真っ暗に見える現象、その後目が暗さに慣れるにつれ徐々に周りが見えるようになる………………
「って奴やな…………何も見え…………見えて来た………」
薄暗い店内へと足を踏み入れた直後、一瞬何も見えなかったので背筋が冷えた……一瞬だ……本当に一瞬の油断で死ぬ……
待ち伏せされてたら……視界不良でばったり会ったら……考えるだけで恐ろしい……あいつらの殺意にブレーキはない、敵だと認識した時点であいつらは襲いかかってくる……
運良くそうなら無かった事を、 辺りが見えるようになって初めて気づいた、その恐怖からか、気を紛らわせようと、 ポツリ独り言……
「良かった……まじで危な………………」
まじで危なかった、と呟きそうになり首を横に振る、いつまでも余裕こいている訳には行かない、この声だって奴らには聞こえているのかも知れない、意識を入れ替えなくては……
深呼吸をして……腰からぶら下げた鉈を抜く……周囲をぐるっと見渡して…………
「しゅみヨふぁヤァ…………」
ゾゾゾッ……
背筋が凍るかと思う程、鳥肌がたった……息が一瞬止まった……
運良く出会い頭に襲われる事は無かった……無かっただけだ、 ほんの5m程の距離にそいつは居た……ニッコリスマイルの鳥みたいな顔、首の下は小学生位の体、そいつが小刻みに左右に揺れている……こいつは初めからそこに居たのか??……
焦る……焦る……焦…………
「しゅみヨふぁアッッッ!?」
「うるせぇ……何言ってるかわかんねぇんだよ!」
運が良かったのか……はたまた実力か、 焦りながらも体は動く事を思い出し、距離を詰め、構えも無しにナタを横薙ぎにフルスイングさせた
「しゅ、 しゅみ、しゅ……」
フルスイングしたナタは敵の側頭部をかち割り数メートル吹き飛ばす、家に昔からあった馴染み深いナタだが、戦いに使用して1ヶ月近く、だいぶこいつの扱いにも慣れてきた……
一方吹き飛ばされた敵は、血が結構出てるが何とか起き上がりそうなので用心して近づく……
近づいて距離2m……「シュミヨぉぉぉお!!」
敵は死力を尽くして飛び掛ってくる、例え直ぐに死んじまいそうでも、相手を先に殺す……そういった意識……純度の高い殺意が全身を刺す……
そういった奴らだこいつらは、どいつもこいつも真っ直ぐすぎる……だからこそ今度は即座に反応出来る…
一瞬で上段えと構え、タイミングを見切り、今度は……確実にその馬鹿な頭をぶっ潰す!!
「おぉらぁっ!!!」
「じゅっっみっっ!?」
ぐっしゃ!!!……ぶっ潰してやった感覚が手に伝わる……ぶっ殺してやった……
「はぁ…はぁ…フフ……フフフ………」
「やべえ……楽しい………」
やべえ…やばかった……先制で相手を吹っ飛ばして、近づく、 相手の動きに合わせてカウンターを入れる……
よくやる倒し方だ…いつもの余裕は無くても、体は無意識に最適な動きをした………勝った………
少し動いだだけでも神経をすり減らしたせいか、 息が切れる、 勝利の高揚感もすぐに落ち着いてくる………
「行こう……音立て過ぎた、動きは早くねぇけど、直ぐにここに寄ってくる、その前に移動しよう……」
「目指すは、保存食コーナー……缶ずめ類と水………あるといいなぁ~」
直ぐに行動に移す……彼の探索はまだ始まったばかりだ……