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第十九話……『日の目』

「じゅみぃ!?」


「どらァァ!!!」


振り落とそうと藻掻く鳥、 気合いで捕まる俺


どちらも必死だ、 絶対強者も、 ちっぽけな挑戦者もどちらも平等になれる、 それが原初の戦い、 まさに命の取り合い、 殺し合いである


共に1つの命、 それを取り合う事こそが共に目的


始まりは皆弱者、 それでも勝利を積み重ね強くなり、 そうしている間に何処かでまた弱者の挑戦が始まる


その連鎖は、 まさに今の自分が、 鳥頭の長が、 弱者に乗り越えられてきた数多の存在、 かつての最強達が、 共に証明している


2つの命の激しい物語、 この物語が多く溢れる世のならいであると言うのなら、 どちらも全身全霊命を燃やし、 決着が齎されなくてはならない


「じゅみぃぃぃぃぃ!!!」


またしても鳥頭が上昇しながら岩壁へと近づく、 それを教える者が確かに挑戦者の中に居た


………………………5………………4………………


「それは愚策だぜぇ!!」


先程と状況が違う、 足にホールドされて身動きの制限されていた先程とは違う


(今は掴んでいるのは俺の方だ)


足を振って、 体の向きを岩壁から離す


鳥頭は岩壁に俺を当てられないと見るや、 離れようとする、 でもダメだ


「ブレイング・ブースト!!!」


岩壁に向かって自分を吹き飛ばす、 ブーストとの威力は、 吹き飛んだ俺の勢いで鳥頭も前方へ動かす程だ、 つまり既に触れる程近づいていた岩壁の方に鳥頭は止まれず進むことになる


「じゅんみぃ!?」


荒い岩肌に身体をぶつけよろけるように飛び始める


「うおっ、 危ねぇちゃんと飛びやがれ鳥タクシー!!!」


言葉に反応したのか、 はたまた偶然か、 また上昇を始める、 どんどん上へ加速する


(相変わらず、 どんだけ深い場所にいたんだよ俺は、 まじで異空間なんじゃねぇの……)


そう思った時だった、 目に見える訳では無いが、 何か境界のようなものをくぐった感覚がした、 例えるなら神社の鳥居をくぐり、 俗世と聖域を行き来するように


突然視界が開ける、 まだ明るいって程では無いにしろ、 先程まで見えていなかった岩壁が見える、 それに上方に光さす出口が見えた


(え? なんで?、 さっきまで真っ暗だったろ、 徐々にとかじゃなく突然見えるようになったぞ)


下を覗き絶句した、 ある一定のラインから水を張った様に闇がそこにあった


(やっぱ、 地上とさっき居た場所は違う場所なのかもな、 俺は地下空間に落ちたが、 その下が丸ごと異空間になっていて、 たまたまその境界をくぐった)


闇穴にまだ高い陽光が刺す、 昇るほど徐々に目が見えるほど明るくなってくる


(一心不乱に飛び続けているが、 敵の狙いが明るい空間での視覚を使った戦闘を狙って地上に出ようとしているなら、 そろそろこの鳥エレベータも次の行動に出るはずだ)


出口は近い、 視界は充分に確保されている…………………


次の瞬間……………………………


「じゅみぃぃー!!」


鳥頭が飛びながら一回転する、 突然の減速と、 回転、 脳が揺れて考えが止まる


そのまま、 再び壁に接近する


(やばい、 視界が揺れる、 回ってる……)


この状況では技が上手く出せない……


…………………5…………………4444……………33……………3………………3………………3………………


……………あれ? 何だ? ああまただ、 世界の流れが緩く、 遅い


思考速度急速に早まる、 どうしようも無い時に限ってこれは出来るよな……………………………


…………………そりゃそうか、 どうしようも無いと思うからこそ考えるんだ、 覆す為に、 実際今まで何とかなった、 少なくとも俺は……………


「今も生きでるぅ!!」


やる事は決まってる、 岩壁にぶつかる前に、 自分から飛べ!!


「よぉぉい!!」


掛け声とともに自分の体を引き上げ、 今掴んでいる鳥頭の足まで、 俺の足を持ってくる


「うらァ!!」


そのまま足裏で自分の体を押し出し壁へと飛ぶ、 なんてことの無い様に出来たが、 不思議な事が起きていた


……………………………3…………………


今の体の動きの中でまだ、 1秒も経っていない、 今までと違って、 止まったように見える景色の中、 俺のからだだけが動いたのだ


岩壁も止まって見える


………………………………2………………………………


務めて足がかりのいい突起に飛ぶ、 当たり前に成功する、 不格好さが無い


(この体を今動かしているのは、 本当に俺か?)



流れる景色は果てしなく遅いまま、 自分の体は思った事のままに動く、 訳が分からないため、 まるで映像でも見ているかのように達観してしまう


………………………………………1……………………………


ふと思う、 何が1なんだ?、 岩壁に当るまでなら、 俺の体は既に壁に着地しているじゃないか、

すごく綺麗に…………………………………………………


ドクンッ………………何かが動き出す、 声が聞こえる気がする


…………………勘違いしちゃダメだよ………………………


…………………これは今貴方が導き出した答えのシュミレーションをしていただけなんだよ………………………


…………………夢みたいな物で……………


…………………動き出すのは……今からだよ………………………


…………………頑張って………日暮…………………………


…………………………………………………………………………


……………………………………………


………………………


…………………………………………「はっっ!!」


俺はまだ鳥の足を掴んでいる、 確か次は体を持ち上げて飛ぶんだったか………………………


「間に合わなぁ!!んぷ!!」


やはり不恰好、 そもそも壁に突撃するのにそれと同じ方向にジャンプして、 岩壁を掴むなんて出来るわけない


目眩を我慢しながら、 逆の方向に振り子を意識して飛ぶ、 目指すは対岸の岩壁、 しかし、 慣性の法則が働き、 対岸に届くどころが結局岩壁にぶつかりそう


「ぎゃげんぶぅげ!?」


ぶつかった、 背中から、 それでも逆に少しとんだからか、 回転するために減速したため速度が出ていなかったためか、 いずれにせよほんの少し軽減出来たような…………………


「あぁぁぁぁあぐあ!!」


背中を打ち意識が飛びそうになるのを、 気合いで堪え、 さらに叫ぶ


「ブレイング・ブースト!!!」


重力に従い落ち始める前に足裏からブーストをかけ、 再びロケットの様に飛ぶ、 目指すは減速し仕切ってる鳥野郎の背中の上だ


「でかい鳥に乗って!!! 空飛ぶのは子供の頃の夢だったぜ!!!」


一瞬、 飛び上がった高さが鳥頭の位置より高く、 そして、 落下しながら背中の羽毛に手を伸ばす


「叶えさせて貰うぜ、 タクシー野郎!!」


両手で掴み、 背を跨ぐように足をかける


「じゅみぃ!?」


まさかあそこから復帰してくるとは思わなかったか、 困惑の声をあげる鳥頭


「悪ぃな、 ビジョンが見えてたんだよ!! 上手くいかなかったがな!!」


暴れようとする鳥頭の横腹を蹴りつける


「すすめぇ!!」


「じゅみみみみみ!!!」


怒りに滲む鳴き声、 そのまま上昇し始めて、 背中がどんどん壁に近づいて行く


「また、 壁口撃かよ!!」


背面ギリギリで飛んで俺をぶつける気だ


徐々に壁が近づいて……


「毛ぇ引っこ抜くぞ!!」


片手で掴んだ羽根毛を思いっきり引っこ抜く


「じゅみぃぃい!?」


再度掴んで抜く、 結構痛いらしい、 堪らずと言った感じで壁から離れる、 そして、 もうかなり明るい、 出口は本の数メートルだ!!


「手助けしてやるぜ、 ブレイング・ブースト!!」


鳥頭の背中の上は風が来ない、 構造的に風を下に仰ぐように出来ているからだろう、 空気の塊が問題なく発生して、 俺の背中を鳥頭事上に押し出す


「じゅみぃぃぃ!?」


「あばばばばばば!!」


とてつもない程加速して、 遂に、 光の中へ吸い込まれて…………………


「最っ高!!」


思いっきり地上へ飛び出す、 そのまま上昇を続けるので、 直ぐに地面が離れて高く、 高く


「飛んでる!! 飛んでるよ!! ……ってか何処まで行くんだタクシー!! 飛行機じゃねぇんだぞ!!」


何が目的でこんな上まで飛びやがって……………


「じゅみぃぃ!!」


すぐに分かった、 旋回、 上方向の回転、 急激な減速、 急降下、 まさにジェットコースター


「ぎゃあゃぁぁああああああ!!!!??」


広い空に出て、 自由に飛び回れるので、 なんとしてでも振り落とす気だ


体がむち打ちになる、 今にも手を離してしまいそうだ、 地上に出た瞬間ぶつかる風が強すぎて、 空気が練れない、 やばいもう手が………………


………………手…………………握った拳の中ならどうだ?


拳の中だったら風邪を気にせず空気を練れる


片手が背中から離れる、 その手は今も固く握られている、 その拳の中で空気が膨張した……………


圧縮した空気を拳ごとぶつける…………………


圧倒的力の打撃技、 ゼロ距離で放たれる、 力の塊


「ブレイング・ブラスト!!!」


「落ちるのはてめぇだあ!!!」


握った拳を、 がら空きの背中に打ち付ける、 空気が爆ぜる!!


「じゅみぃぃい!?」


突然の衝撃に敵は落下を始める…………


……………………


「ってこれ俺も結局落ちるやん!!!」


日の目を浴びた2つの命の今落下を始めた

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