第十七話……『一族の長』
「……………うるさい………ぞ…………こぞう…………さきほどから…………………いや…………もうずっとうるさいと…………おもっている……………………わたしが……………いらだつ…………………………………ころすからな…………………」
「は?」
(え?!?)
「は?? …………………なに?」
「ころす…………いのちをうばう……………おまえの……………うらめしい……………だから……ころすのだ………おまえを……………………」
(なんだ? 何いってやがんだ? 言ってる、 喋ってる?)
理解が出来なかった、 以前鳥頭同士が軽いコミュニケーションを取っているだろう場面を目撃した事がある、 奴らはいつもどうり「しゅみしゅみ」と叫んでいたので、 彼らなりの言語の様な物だと思っていた
(でも喋った、 このデカ鳥頭………ってか何だって? 殺す?……………誰が? 誰を?)
「おまえを……ころす………このわたし……ばんちょうぞくのおさ………………あんていこうろうばい……がな」
「………………………なんて?」
その瞬間、 ばっさあと音を立て翼がはためかされる
余りに強い風圧が全身にぶつかり、 おもわず目を細める、 だから自分でも気づかない程一瞬瞬きをしてしまう…………………………
「………え?」
不思議な程一瞬で敵の姿が見えなくなった
(どこに………………………………)
ひゅ~ 微かな風が上方向から体を撫でる、 その風が死の風に感じた、 隠しきれない殺気が伝わったから
やばい!! そう思う前に言葉を早口で紡ぐ
「ブレイング・ブースト!!!」
巨大な質量をもった空気圧が、 指定方向に弾け、 自分の体を思いってり吹き飛ばす
(うわぁ! 受け身い!!)
その瞬間闇の中から鋭い爪が、 ほんのコンマ数秒前まで自分がいた場所へ振り下ろされるのがちらりと見えた
俺は崩れたからだを、 無理やり前方向に向け、 そのまま前転をして立ち上がる
(や、 やべぇ…………)
ほんの刹那的な攻防だ、 敵は翼ではばたき、 そのまま俺に向けて急降下してきた、 俺を捕まえるか、 鋭い爪を突き立てて殺すのが目的だったのだろう
敵がやった事は単純な事だ、 さすが鳥頭の親分シンプル野郎だ、 ただ、 いつもと違いがあるとすれば、 それが……………
「しっ、 死ぬ………………」
当たり前に俺を殺せる力があるって事だ、 余りに早かった、 目で追えなかった、 それと、 この暗闇、 敵を簡単に見失う、 ランタンの光が酷く頼りない
「しゅみいよぉ……………ろころこころファ」
敵が分からない言葉を放つ、 鳥頭の言葉と日本語ふたつが混じりあっている
そして再び羽を大きくしならせる、 また飛ぶつもりだ………
勝つためには………………自分から攻めろ!!
「ブレイング・バースト!!!」
圧縮した空気の塊が、 敵の肉体を穿つ、 まともに喰らえばダメージは尋常ではない
敵は警戒したのか、 羽を動かす、 回避するか?
(でももう遅い……………もう間もなくお前は吹き飛ぶ惨めにな……
………………………でも、 そうはならなかった
もっと言えば、 敵に変化なし、 攻撃が届いてすら居ないのか?
それでようやく気づく、 敵は翼をはためかせ膨大な風を送っている
ブレイング・バーストは所詮空気の塊だ、 風に飲まれて無力化されたのだ………………
「え?…………どうしよう……………」
敵がまた飛び立つ………………………
蛮鳥頭の長、 暗底甲狼狽




