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第十六話……『蛮鳥族』

「ランタン片手に~ 洞窟たんさくぅぅ~♪」


暗闇と静寂に満たされた異空間の通路に人の声


「探しているのは~ お宝かい?~♪」


適当な即興の歌を、 これまた適当に歌いながらその人物は狭い通路を進んで行く


「いいえリスさん……… リスさん?」


彼の手元には歌の通りランタンが握られ、 通路の岩肌を鈍く照らし出して行く


「ゾウさん………キリンさ、 ヤギさん……………………完!!」


歌が突然終わる、 いきなり出てきた動物を何にするか悩んだが、 自分でも意味わからなすぎたため、 一周まわって頭が冷静になる


「通路の奥には何があるんだ…………探し物~♪

る~るる~♪」


静寂に飲まれそうになり、 また歌う、 そんな事を繰り返す彼は今、 長すぎる通路にあるであろう終わりの存在を疑い始めていた


「……もう数キロは歩いただろ、 まあよく分かんないけど」


彼はランタンの光に照らされ闇の中を進み続ける事によって本能的に太陽を恋しく思っていた


しかし、 既に3kmほど歩いている、 先程、 一番最初の広い空間で複数の敵をチキチキ戦法で時間をじっくりかけ倒しきった彼は本来の予定どうりそこから伸びる通路をまた進んでいた


しかし、 通路の終わりは一向に見えず、 度々襲い来る鳥頭を何度も、 何度も捌き、 勝利を刻むごとに酷く疲労していた


「風呂入りたい、 肉食いたい、 寝たい」


彼は何処でも基本的に眠れるので、 世界がこんなでも夜はぐっすりだが、 前半の悩みはもうずっと解消されていない


「まあ、 それでも何だかんだ、 どうにかなるのがこの俺、 明山日暮っでんでんえ~」


変な自己紹介だ……


と言いつつ実はもう20分は鳥頭に遭遇していない、

先程突然緩い風が頬を撫でた、 それを機に鳥頭は見ていない、 全部殺し尽くしたのだろうか


「この時間が永遠に続けば………違うな、 疲労が有るから休養が幸せに感じるってのは社会生活が抜けきれてない証拠だ」


「さっさと終わりに辿り着け、 そうじゃなきゃ前に進めねぇんだからな」


言葉には力が有る、 こんな時ばかり


「…………言った途端出たよ、 しかもまただだっ広い空間だよ」


本来より時が長く感じる時は、 だいたいもう時間が終わる手前になっているものだ、 それと同じ長さを感じる道は、 既に終盤に迫っていたからこそ長さを感じたのだ、 終わって見ればなんてことは無い


広すぎる空間、 ランタンの光が闇に呑まれてゆくように感じ、 酷く頼りない


ひゅお~ また風が吹き、 身を撫でつけてゆく


「出口が有るとか?」


そこから吹き込んできてて………………


「しゅみヨふぁヤ」「しゅみヨふぁヤ」「しゅみヨふぁヤ」


それが合図だかのように、 鳥頭の声が木霊する


反射的にナタに手を伸ばすが、 そうだ今は無いんだった


そもそも声の聞こえ方が変だ、 鳥頭の鳴き声はまるで天井から降り注ぐかのようだった


天井……………………


上を見上げる、 闇で何も見えないが確かに声は上から降ってくる


ランタンの摘みを更に回す、 電池を食うが光量を強くする事が出来る、 最初は光がぼんやりと、 徐々に敵の姿を映し出して行く、 こいつら………


「飛んでるやん……鳥頭って鳥だったの?」


正確には小さな羽でゆっくりと滑空していた、 鶏で滑空するゲームを思い出した、 あんな感じだ、 数匹の鳥頭がゆっくり降りてくる


「ブレイング・バースト」


空気の圧が滑空する敵に向かい飛んでゆく、 敵の一体に当たり、 その身を穿つと共に、 開放された風が周囲に渦巻く、 今回はそれが良かった


風に煽られた鳥頭はバランスを崩し落下して行く、 ベチッ! 派手な音を立てて目の前に鳥頭が落ちてくる


楽しい……………


8秒……


「ブレイング・バースト!!!」


またしても空気が押し出され、 敵にあたり次々に敵を地面に叩きつけさせる


「射撃ゲームだな」


それを繰り返すともう滑空してくる敵は居なくなった


「じゅ……」「じゅみ………」「ヨぉぉ……」「ジュいい……」


地面に落ちても死んでない敵が苦しそうにもがいている


「動けそうに無いから、 放置するぜぇ、 それにしても笑えたぜ、 滑空するのは知らなかったけど、 特に何も出来ねぇでやんの、 フフフ笑い草だぜ」


子供サイズの人影が翼を不格好に広げ、 円を描きながら滑空する姿はまるで、 パレードの様だった、 面白い、 テンションが上がって、 興奮からか少し熱を帯びる


「あ~ポカポカしてきたな~ フフフ」


パタパタと手でうちわを作り顔に風を送る、 涼しい風が身を撫でる


「そう言えば、 風止んでるな……出口がある訳じゃねぇのか?」


先程何処からか吹いていた風は止んでいる…………いや、 また吹き出した


それに加えて…………


バサッバサッ


まるで翼をはためかす音、 ……………


(何か……居る……………)


言葉が詰まる、 何故か喋る気にはならなかった、

まるで次に発する音を確かに聞き逃さないため………


………………………………………………………………


………………………………………………


……………………………


「しゅみいいいいいいいいいいいいぃんヨォ~

ふぁぁぁヤァァァァ」


突然響くおおきな声、 鳥頭の声だ、 でもいつもと違う、 いつもは騒がしい子供のような声、 これは……


「でけぇ癖にあんまりうるささを感じない、 ハスキーボイス出してんじゃねえぞ、 バケモンが……」


低い、 大人のような声だ


のそり………ランタンに淡く照らされ、 すぐ側までそれは姿を表す、 既にだいぶ近づかれていた


「しゅぅうううううううう」


見上げる、 デカい、 身長は4m程、 体全体が羽毛に覆われ地面まで伸びている、 立体的な柄の無い箒みたいな輪郭だ


「しゅうううううううるぅう」


そう鳴くと羽毛が、 中心程で別れ、 横方向に勢い良く開かれる、 翼だ、 翼を丸めていたようだ


「涼しい………」


強い風が体にぶつかる、 正直今とても困惑している、 知らないこんなやつ………


「しゅうるうるううるるうる」


余裕ありますよ、 みたいな雰囲気をあえて出す、 じゃなきゃ押し潰される、 重圧に………


「デカいだけの鳥頭だろ………そうだろ!! なんも変わんねぇよ、 図体がデカくても恐竜は滅んだ、 大切なのは考える能力、 ここの使い方次第なんだよ!!」


自分の頭を指さしながら叫ぶ、 そうだいつも道理、 考えろ、 考えろ…………


「しゅう…………るう……………………………………うるさい………………ぞ、 こぞう…………………………………」


考え………………………


「へ?」

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