第十三話……『加速』
人という生き物は完璧ではない、 どれだけ考えても考えてもそれでも考えが及ばない事もある
「ブレイング・バースト!!!」
「しゅみ!?」「しゅん!?」「しゅぅみ!?」
(当たったのは3体か…………)
常に考えは巡らせなければいけない、 考え無しの行動が大きな失敗を運んできた時、 人は嘆き後悔する
「最悪だよーーー!! お前ら卑怯だろ!!」
彼のように…………………………
数分前……………………………………
「せいィ!!」
引き付けた鳥頭に下段蹴りを食らわせる、 こいつらは基本真っ直ぐ向かってくる、 動きも目で追える、 一体一なら基本的負けない
「じゅん!?」
蹴りを食らって鳥頭が倒れる、 強靭な脛骨が敵の肉体を穿つ
倒れた敵に向かい派手に踏み込む、 大きな足音が響き敵が反応する、 しかしそれはフェイントだ、 音に反応させ、 倒れている体制からの不意の一撃等を貰う危険を避ける目的があった
敵は攻撃して来ないと見ると立ち上がり向かってくるが、 足取りはおぼつかない、 転びそうになりよろける
「どっせい!!」
その敵に対して、 左足を軸足に後ろ回転し、 右足を高く振り上げる、 敵に向かい振り下ろす、 かかと落とし………
「じゅん!? じゅ……………」
敵の後頭部を強打し、 地に沈める
「へへっ、 また脳震盪起こしてぶっ倒れやがった、 へへへっ」
意識を取り戻す前に、 頭部を蹴り抜き首を折る
「勝った、 ぶっ殺してやったぜ」
彼は今最高に気分が良かった、 この異空間に落ちて狭い通路で初エンカした2体の敵を倒した後、 敵と共に飛んでったナタを探しつつ、 少しづつ前へ進んでいた
そして今、 単騎で現れた鳥頭の新手を武器無しで圧倒してやった、 上手くいっている、 ただ1つ問題なのは……………
「ナタが見つからねぇ…………」
さらに言えば吹っ飛ばしてやった敵の亡骸も見つからない、 彼はそれらを探して既に50メートル近く歩いている
「そんな飛ぶんだっけ? この力食らうと、 何か妙だな………」
ここまで歩いてくるのに手がかりはゼロだった訳では無い、 むしろ大方ここに着弾したであろう場所の痕跡は掴めていた、 敵の血が四方に散った凄惨な現場、 それでもそこ付近に敵の体はなく、 ナタも隅々まで探したが見つかっていないのが現状だ
先程の一体一はナタ探しを優先し、 もう一度引き返して探そうかと思っていた矢先の襲撃だった
「なんだろうな、 どんだけ探しても見つからない気がする、 何かに呑まれてる、 良くない流れだな……」
先に向かうのは危険…………でも他に選択肢はない、 ならせめて武器は取り戻したい、 しかしそれも見つからない、 いわゆるジレンマ
「はぁ、 なんで考え無しに投げちまったかなぁ……そもそも、 ぶっ刺さった敵ごと吹き飛ばしたらダメやん、 考えが及ばないわ~」
今回の場合は無思考なだけである
「やっぱ引き返そう、 再度探しつつ、 無かったらさっきの空間に戻って武器になりそうな物を探す、 避難の人間だったらランタンみたいになんかしら持ってそうだし………」
「死体漁るのは流石に気が引けるけどな………」
自分には彼らをどうする事も出来ない、 さっきは目印に利用したが、 出来ないなら出来ないで中途半端に触れるのは違う気がする、 でも生きる為にはなんだってしなくては………………
ペタッ ペタッ ペタッ ペタッ ペタッ ペタッ
「しゅみ」「しゅん」「しゅし」「しゅん」「しゅみぃ?」「しゅしみぃ!?」
複数の軽い足音と、 話し声が聞こえる、 こちらに向かって来ている様で、 その中の幾匹かが俺の存在に築いたらしい
「…………うそだろ」
向かってくる、 そう思い身構える、 すると……
「じゅみぃぃぃぃい!!ヨォ!ふぁぁヤ!!!」
物凄い大声を発した、 音が反響して響き渡る……すると………
ペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッペタッ
かなり多い数の足音が奥から響いてくる、 皆興奮しているようだ……最悪だ、 まさか………
「味方に知らせやがったのか?、 初めて見たぞそんな行動!!」
無造作に先頭の敵が数匹近づいてくる
「ブレイング・バースト!!!」
当たったのは3体、 再度打つには8秒のクールタイム、 長すぎる
反対に向き直りかけ出す、 少し走って8秒………
「ブレイング・バースト!!!」
振り返り力を放つ、 この狭く真っ直ぐな通路ではこの戦法は上手く刺さる、 2体飛ばした、
後続に当たったりしたかも
それでも敵の数は多いまま、 その戦法を使用しながら駆け抜ける
8秒経っては振り返り、 叫び、 また8秒で、 叫び……
また…………
「うげぇ!?」
後ろを振り返り、 足元がお留守になったなんてことの無い石に躓いて、 転びそうになる
「ふんガバリスト!!」
適当な掛け声で持ちこたえるも、 敵はその瞬間に距離を詰めてきている、 再度加速するも、 敵の攻撃は今にも届く、 打つしかない……
「ブレイング・バースト!!!」
その瞬間自分の背中からゼロ距離で後方に空気の圧が吹き出される、 その勢いで自分の体が前方へと吹き飛んだ
「うあぁあ!?」
数メートル飛ばされ、 転がるも、 気合いで立ち上がる
またしても敵は近ずいてくるが、 数体迫っていた敵は俺と同じように吹き飛ばされた様だ、 安心した
しかし今の動き
「上手くバランスを取れれば加速技として応用できる?」
少し走って、 また8秒経つ、 今度は狙って出す、 心構えをしっかりし、 敵の接近を肌で感じる
そうだ、 名前をつけてもいいかもしれない
ブレイング・バーストは指定方向に空気を放つ攻撃の基本型
そして今回の技はそれの応用、 指定方向にゼロ距離で放ち、 ジェット噴射のように加速する技、 なら名前は
今一度敵の鋭い爪が逃げる背へと近づいて…………
「ブレイング………………・ブーースト!!!」
背を強い空気の圧が押し出す、 浮いた体を何とか維持し、 数メートル先で綺麗に着地する
「敵から一瞬で距離取れた、 これ使えるな……」
にやり笑顔になる、 自分を知る、 強くなる為には必要な事だ
「やっぱ楽しいっすわ、 戦いは、 へへっ」
地に足をつけ、 大地を踏みしめ、 さあ今一度飛ぶ様に駆けろ!!