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第百十六話…… 『最終章、 下編・2』

隣町、 狭く薄暗い路地を歩く、 一体その先に何が有ると言うのだろうか、 その歩みを止めることなく、 振り返ること無く、 ただ何時でも戦える様に、 腰からナタを抜いて


ある地点、 どの辺だったろうか? 無意味に置かれたダンボール箱の辺りか、 青いプラスチック製のゴミ箱の辺りか


とにかくあるラインを日暮の足が踏み越えた時、 何か、 境界の様な物を潜った感覚があった……


(……何だっ今の感覚は…………)


少し止まって振り返って、 特に違和感は無い、 そうして再度路地の先を見た、 見て、 日暮は驚いた


路地の先が明らかに明るい、 それは単に光の問題では無く、 言うなれば喧騒、 街が、 生きている……


ガヤガヤ…… ガヤガヤ……



人々の話す声が遠くに聴こえる、 それは何処か浮かれて居て、 何処か懐かしく、 とても有り触れた……


日暮は更に歩みを進める、 心臓が妙に強く打ち付ける、 息が荒い、 酷く緊張している、 きっとこの路地を抜けたら、 自分の常識の何もかもが壊れる、 そんな事を感じる


それでも一歩一歩、 光が路地へ差し込む、 夜の街の、 目を閉じれば光が多角形に切り取られた様に鮮やかな


遂に日暮は路地から抜ける、 ぬるい風が横から吹き、 路地から出た日暮にぶつかる、 風に運ばれて来る……


焼き鳥の匂い……


あ?


飲み屋が多く列ねる通りだ、 焼き鳥が売りの『鶏子爵とりししゃく』と書かれた飲み屋、 何処でも見る事が出来るチェーン店の真っ赤な看板には光が灯っている


それだけじゃ無い、 この通りの前を見ても、 後ろを見ても、 灯りが付き、 我こそはと、 人の目を引くように主張している様だった


浮かれた人達が道を行き交っている、 スーツを着たいかにもなサラリーマン達が浮かれた様に笑っている


髪を綺麗に整えた男女が、 棒立ちで立ち尽くす日暮の方を怪訝な表情で見て興味を失った様に通りの向こうへと歩いて行く


実際、 日暮は言葉を失って動けないで居た、 目の下がヒクヒクと痙攣している、 これは、 これはまさか……


「お兄さん~」


っ!


若い女の子の声に振り向く、 そこには少し際どい様な格好をした女性が立っていてこちらに手を振っている、 女性の手には、 ガールズバーの看板が掲げられており、 彼女の後ろにあるお見せの様だった


「お見せをお探しですか~? 良ければどうですか~ 可愛い子沢山居ますよ~ 私程じゃ無いですけど~」



「いっ、 いえ……」


思わず視線を逸らすと逃げる様にその場から歩き出した、 素っ気ない対応をしたが向こうからしたら慣れた物だろう、 逆に返事をしたら負けな所も有る


いや、 そんな事よりも……


キョロキョロと、 それこそ店を吟味するかの様に、 その足は思わず速くなる、 人が増えていく、 赤の交差点が青になる


人々が一斉に歩き出す、 目の前には、 それなりに立派な建物、 隣町の駅前広場と駅舎が見えた


誰からも見える様に大きく掲げられた電光掲示板には日付と時間と気温が書かれている、 別に問題は無い、 シェルターのカレンダーとの狂いも無い


間違いなく同じ時間だ、 同じ日付だし、 ここだけ時が巻き戻った訳じゃない……


じゃあ……


「何なんだよ、 これはっ、 この街は何にも変わってないっ、 モンスターが世界に現れる前から何にも……」


何処からかいい匂いがした、 この匂いを知っている、 それは駅前の美味しい事で有名なラーメン屋だ、 二度程食べに来た


その匂いが鼻腔をくすぐる、 とても腹が減る、 人気の店では有るがこんな時ばかり並んで居ない、 店内に入れば人気の魚介豚骨ラーメン屋が食えるだろう


ごくりっ……


いや、 いや待て………


「財布持ってない、 俺は、 一文無しだ……」


だって必要無かった、 お金という物は人の社会が機能して居て初めて意味や、 価値を持つ物だ、 あれだけ手放せなかったスマホだって何処へやら……


「美味そう…… 美味そう…… 何なんだよ…… 何なんだよこの街はっ!」


思わず大きな声が出た、 静寂の落ちた街で大声を出しても、 それを聞く物など居なかった、 だが今は違う


ヒソヒソ…… ヒソヒソ……


こちらを伺う視線が幾つも突き刺さる、 酔っ払いでも見る目だろうか、 若い集団が嘲笑するのが目に入った


腹が立つ……


ここに居たらダメだ、 そう自分の中で声がする、 ここは自分が居るべき場所じゃ無い、 帰らなくては、 あの街に……


…………………………


「………何処にだっけ? あれ? 待って待って……… 俺は、 何処から来たんだ……」


頭が、 ぼんやりとする、 考えれば考える程、 今はどうでもいい事が浮かんで、 その内に何かが消えて行く


やばい、 何かやばいっ!


はっ はっ……


気づけば日暮は一心不乱に走り出していた、 来た道を引き返して、 俺は何処から来たんだ? 俺は、 何処に帰るんだ?


俺は………


はぁ…… はぁ……


最近は体力が増えてきたと思っていたのに、 体のキレが悪い、 息が切れて、 立ち止まる、 『鶏子爵』の看板、 ここだ、 ここに……


「お兄さん~ 寄ってかな~い」


そうだ、 この辺りだ、 俺はこの辺から来た、 この腹の立つ客引き、 ついさっき見た、 だが……


(……俺は、 俺は何処から来たんだ、 ここ、 ここの何処から………)


周囲をキョロキョロと見渡す日暮、 焦った様子の日暮を徐々に周囲の人達は注目し始める


「あ〜 あの~ お兄さんさっきから、 その、 大丈夫ですか?」


自分の店の前に不審者が居たらどうするか、 客引きの彼女は声を掛ける事にした様だ


「あ? 別に何でもねぇよ」



「あっ、 はい…… えっ、 怖……」


クソ腹立つな……


(……ここに居たくねぇ、 だが、 この辺何だよ、 この辺の何だ………)


ドサッ……


前を見ずに歩き出した日暮は何かにぶつかる、 人だ、 大分尖ったファンションの男だ、 周りに仲間も居る


「痛え~ んだよっ、 前見て歩けよ」


オーバーリアクションだ、 だがこれが当たり前だった、 代わり映えの無い安心な世界では、 痛みさえ新鮮で珍しく感じ、 それがとんでもない事に感じるのだ


そして、 日暮はそう言った物を既に忘れていた、 新たな世界の伊吹にその身を晒す日暮は、 目の前の男をなんの疑いも無く


敵と認識した


「ははっ、 肩ぶつかった位で随分でかい声で泣くんだな、 情けないとは思わねぇのか? クソだせぇ格好しやがって、 ライブに失敗した売れないバンドマンがやけ酒煽ってるって所だろ、 だっせぇ」


ぷっつん


音がしたみたいに、 男の顔が赤くなり、 怒った事がわかりやすい、 無意識に煽って誘ってしまう


「ざけんなよっ、 ライブが失敗したのは盛り上がらなかった客のせいだろうがっ! 俺たちのステージだけ下火になりやがったんだぜ?」


知らねぇよ、 当たりかよ……


今にも泣き叫びそうな男の絶叫に戦意を喪失、 いや、 どっかに行ってしまう


「あっ、 そうなんだ、 ドンマイ?」



「るっせぇよっ! ぶつかった事を謝れよっ! ぶっ殺すぞっ!」


おぉっ、 良いねぇ


「やって見たら良いっ、 ムカつくだろ? 頭に来るだろ? ぶん殴ったら気分が良くなるだろ? さぁ、 度胸が有るならやってみろホウキ頭っ!」


大袈裟に両手を広げ煽る、 いつの間にか周囲は人が囲んでおり、 皆一様にスマホをこちらに向けている


敦史あつしっ、 止めとけって! めちゃくちゃ撮られてるぞ! クソ、 だから飲むなって言っただろ、 お前は弱いんだから」



「うるせぇ! 俺は男だっ! 売られた喧嘩を買わねぇ訳がっ、 ねぇえええええっ!!」


バンドマンが拳をバキバキとよく見るあれで向かって来る、 日暮も腕を捲る、 一触即発、 その感覚が心地良かった


だが……


「ストップ! 君達ストップ! どうしたのどうしたの!」


青い制服の男、 あぁ、 警察官か……


「ぶつかったら、 キレて来たので、 腹が立って煽ったら、 喧嘩する事になったんですよ、 今から殴り合い、 部外者は引っ込んでろよ」



「それは君が悪いでしょ、 謝れば済む事をこんなに大事にしない、 お酒飲んでるの?」


は?


「うぜぇな、 後から文句言うくらいなら、 喧嘩になる前に止めて見ろよ、 何様だよ、 しゃしゃり出るなカスがっ」


さて、 バンドマンは…… あれ?


バンドマンは完全に萎縮している、 警察官を見て驚いた様に、 さっきまでの闘志は何処へやら、 顔を真っ青に


はぁ…… つまんな


「君、 何があったか知らないけど、 暴言は暴力と変わらないよ、 警察官に向けて言えば公務執行妨害、 わかる?」


チッ


「黙れゴミ、 殺すぞっ」



「署で話を聴こうか……… ん?」


日暮は腰に手を回す、 躊躇いもなくナタを抜く、 その刃が繁華街の夜に輝く、 睨みつける目が突き刺さる



「きゃーっ!」 「うわぁっ!!」



「うわっ! 下ろせっ! それを下ろせっ!!」


うるせぇな、 本当に殺すか……


警察官が警棒より先に、 無線機に手を伸ばした時点で、 このナタが相手の首に届くと確信した


だが…………


迷酒光めいしゅこう、 ストル・イース」


何やら匂いがして、 頭がぼんやりとする、 周囲から一気に喧騒が消え、 人々は虚ろで上の空、 目の前の警察官もぼけ~っとしている


(……あっ、 これ、 俺もだ……)


グイッ!


腕を引かれる、 グイグイと引かれ、 引かれるままに歩く、 薄暗い路地を歩いて行く、 どんどん光から離れていく


ある地点を過ぎた時、 周囲は急に暗く変わった……


パチンッ


指を鳴らす音が聞こえた、 その音を聴き、 一拍開けて意識がはっきりとする


はっ!


「えっ!? 何? 何? え?」



「はぁ…… 全く、 少し様子を見るだけにして欲しいんだけど、 どうして問題を起こすかな~ 韋刈も同じだったけどさ」


日暮は困惑する、 何だ、 何だった、 何が起きた?


「君は、 終わった世界の外に出て、 終わっていない、 当たり前の世界に出た、 懐かしい光景が見れただろ?」


そうだ……


「そうだよっ! あれは、 何なんだよっ! あいつらは、 世界が終わった事なんか何一つ知らなそうで、 まさか復興したのかっ!?」


ナハトは首を横に振る


「違う違うっ、 前者が正解、 全く知らないのさ、 モンスターの事何か、 あの日の事何か、 知らないのさ」


は?


「この路地を進んで行って、 何か感じ無かった?」


感じた事……


「……ある地点を通ったら、 まるで境界を跨いだ様に、 そう言えばその瞬間、 急に街が賑やかになった」



「そうそう、 その感覚を経験し、 知覚すれば…… ほら」


ナハトが上を指さす、 何が、 釣られて上を日暮が見つめる、 薄く膜の張った様な雲………… ?


じゃ無い……


は?


「何だこれ………」


光を反射する硝子、 の様に見える、 透明で、 存在が希薄、 でも今は確かに見える、 これは……


「壁?」



「壁の様に見えるのは俺達がこれの発生している位置のすぐ側に居るからさ、 君の言っていた境界がそれ」


確かに、 目で追って行けば、 壁は迫り上がる毎に湾曲し、 内側へ向かって行く、 ドーム状に、 遠く離れた位置へ続いている


これは、 一体……


「結界だよ」


結界?


「ガチャガチャのカプセル、 その半分を空から落として被せた様な物だ、 半円で、 この街の一部を覆っている」



「……何のために? 誰かの能力なのか?」


ナハトは考える様にして、 こちらに手を伸ばす


「移動しよう、 捕まって」


話を逸らされたと思ったが、 そういう訳では無さそうだ、 日暮は文句を言いたくなるのを抑えてその手を掴む


「インビコール・ムーブ……」


フォンッ!


また、 体が粉々になる様な感覚、 気付けば瞑っていた目を開けた時には……


………………


「うわっ、 高……」


ひゅぅ~


ビルの屋上だろうか、 強い風が通り抜けて行く、 しかし、 この位置に来ても、 半球の結界、 その頂点は遥か上空だ


「話しを遮って悪いね、 質問に答えよう、 この結界はシンプル、 閉じ込める為の物さ」


閉じ込める? それは、 まさか人間を……


「モンスターをね、 モンスターを結界内に閉じ込めた、 だから結界外にモンスターは居ないし、 なんの被害もなく当然の様に暮らしている」


それって、 つまり……


「……世界は、 終わってない?」



「あぁ、 全くね、 あの日、 モンスターが現れ、 壊され、 殺されたのは、 ほんの一部、甘樹街や、 君の故郷、 藍木、 まあその辺が端の方だね、 そう言う広さでの話何だよ」


さっきまでの飲み屋街、 あそこは、 暮らす人々は何も変わらなかった、 何も知らないまま生きていた、 それも結界の影響?


「何でここだったんだ? ……いや、 どうして、 外の奴等は何も思わないのか?」



「あぁ、 認識阻害の力が掛かっているからね、 誰も結界内に入る事は無い、 と言うか無意識的に弾かれているから入れない、 知覚出来ないと言うのが正しいかな?」


感覚的に理解出来ない訳じゃない、 ついさっき似た様な事があった、 日暮は雪ちゃんの事を、 あの少女の事をまるで初めから知らない様に、 忘れていた


(……あれと似た様なもんだろ、 思い出す事が出来ないなら、 忘れるも言うことは、 知らないと言う事と何ら変わらない)


知らんけど……


誰もが、 真っ先に思う事、 疑問、 日暮は問うことにした


「じゃあ、 どうしてこんな事になったんだ? 結界が張られて、 モンスターを解き放たれて、 これはこの国の本の小さな範囲かもしれない、 でも、 大勢死んだぜ?」



「ふむ…… 順番としては逆だけどね、 モンスターが溢れた、 それは偶然ここだった、 これ以上被害が広がらないように、 結界を張った、 トロッコ問題…… とは違うけど、 ある意味天秤に掛けたのさ」


被害は確定しているから、 小さな規模で濃度を上げ、 代わりに周囲の被害を無にする……


「誰が、 誰がそんな事したんだよ」



「神、 って言えば分かりやすい? あぁ、 この世界に初めから存在する神秘達の事じゃないよ? この星じゃ無くて、 こう、 世界の核と言うか、 根底と言うか、 在り方と言うか、 世界その物と言うか」


とにかくでかくで大きい存在か、 それこそ宇宙を作った様な、 人の命をどれだけ繋いでも観測する事すら出来ない、 遠い者……


天閣てんかくの主、 その存在がこの規模の結界を張った、 結構頑張ったと思うよ、 本当に一瞬で結界を展開した、 これが数秒遅かっただけで、 穴は更に大きく広がり、 この国はモンスターの魔窟と化しただろうからね」



「穴?」



「そ、 モンスターがこちらにやって来た穴さ、 と言っても、 想像する様な穴じゃ無い、 穴は一つだったけど、 物理的ナ穴って訳じゃない、 二つの世界の接点、 重なる部分って事さ」


二つの世界の重なる部分、 穴…… やっぱりそうなんだよな……


日暮は記憶を探る、 それは決して日暮の記憶では無く、 日暮の持つ、 日暮の物では無い記憶、 フーリカ・サヌカの記憶だ


「明山日暮、 君はモンスターをこの世界に解き放った存在についてはご存知かい?」


日暮は少し目を逸らす、 心を読めるんじゃないかと思える程、 的確なタイミングの質問だった


日暮は迷った、 フーリカの名前を答えるか、 知らないふりをするか、 だが、 結果は変わらない、 変えられない


日暮が彼女の名前を口にだそうとした、 しかし、 それより前に、 ナハトは指を自分に向ける


「俺だよ、 この世界にモンスターを解き放ったのは、 この俺」



「………………え?」


何を、 言われているか分からなかった、 酷く困惑した、 そんな日暮を見てナハトは笑う


「はははっ、 びっくりした? これは本当だよ、 君さ、 以前フーリカ・サヌカの事をモンスターをこの世界に読んだ犯人として責めた事有るだろ?」


ドキリッ、 心臓が跳ねる


「いやぁ、 あれは酷かった、 無理無理、 彼女の能力じゃ、 世界に接点を作り、 穴を作っても、 意図しない者たちの穴への侵入は不可能だもん」



「だからさ、 彼女が貯金箱を作ったとしても、 貯金箱に入れるお金を、 彼女は作る事も、 集める事も出来ない、 例えるならそんな感じかな」


???


「まだ理解出来ない? 彼女は的確に、 自分一人が通り抜けるサイズの穴を、 初めてながら上手く作ったのさ、 その分にはただ彼女が通り抜けて終わり、 それだけだった」


そう……


「俺が手を加えなければね? 彼女の能力で作り出した穴を都合よく利用させて貰ったって事、 分かった? 彼女はな~んにも悪くないんだよ?」


本当に悲劇の王女、 逃げて逃げて、 最後の最後、 縋るように、 残された術を成しただけ、 それを、 利用されただけ……


「……どうやって」



「さっきから何度か瞬間移動してるよね? 俺の能力は、 座標変換、 対象の存在座標を指定位置へずらす事が出来る」


座標変換…… 物体の移動、 しかも瞬間移動が……


「俺の能力は、 その発動範囲や効果を拡張してる、 予め、 無差別に指定した地点と、 そこに生息するモンスターを、 穴を通して座標変換させた、 俺の能力は予め指定した地点か、 観測した場所にしか使えないから」



「……つまり、 本当に、 お前が…… 何のために?」


ナハトは深い息を吐き出す


「……哀れな魔王の為、 いや、 自分の為か、 うん、 俺は俺の為にこんな事をしたんだよ」


唐突に語られる真実、 その軽薄な笑顔、 あの日モンスターが世の中に溢れ出たのは、 こいつの私情だってのか……


「謝っときなよ、 フーリカ・サヌカにさ、 俺も悪いと思ってるから、 機会があったら伝えようかな」



「……言われなくても」


日暮はフーリカに言った言葉を思い出し、 深く息を吐いた、 許されなくても謝らなくてはいけない、 それに彼女自身勘違いしている筈だ、 真実を伝えなくてはいけない


「俺が何でこんな事をしたのか、 知りたい? ま、 知りたいよね、 長くなるけど話すよ」


今にも語りだしそうなナハト、 確かにそれは気になる事だし、 当然知る事が出来るなら聞きたい、 だが、 その前に日暮は聞かなければならない事があった


「ちょっと待て、 その前に教えろ、 お前は、 何で俺の前に現れた、 真実を知りたい人は沢山居る、 でもお前は俺にそれを語っている、 何で俺何だ?」



「ふっ、 まあそうだよね、 でもその前に、 今更だけど俺の自己紹介をしていいかな?」


確かに、 この男の事は名前しか知らない、 ほいほい着いてきてしまったが大概だ、 自分も


「名前は言ったよね、 ナハト、 ただナハトと呼ばれていた、 そんな俺の正体は、 『勇者』、 魔王を倒す存在なんだよ」


魔王と勇者、 ファンタジーの定番だが、 魔王は少女、 そして目の前の男、 ナハトが勇者


「俺は異世界人だよ、 向こうの世界から来た本物の勇者だ、 まあ、 魔王と同じで、 『勇者』と言う概念エネルギーを付与された存在ってだけだけどね」


それで


「勇者の目的は勿論魔王を倒す事だ、 だが、 魔王は倒してもまた産まれる、 魔王が現れ、 勇者が旅立つ、 その繰り返し、 何でか分かる?」


日暮は大袈裟に肩を竦めて量の手を天に向ける、 知るわけが無い、 考えるより聞いた方が早い


「それはね、 ズバリ、 勇者が魔王を倒すからなんだよ」



「魔王は勇者にしか倒せないと思われている、 それは勇者の持つ固有能力が魔王を倒す最適の能力だから、 そう言う為に天閣の主が作り出した、 勇者は対魔王の存在、 能力もまた然り」


でも……


「魔王と言う存在は、 所詮力を有した操り人形に過ぎない、 その裏に居る者、 魔王を操る存在が居る以上魔王は真の意味で倒す事は出来ない」


日暮は頭を悩ませる、 魔王と言うのはどんなシナリオでも絶対的で有る、 いや、 有って欲しい所だが、 魔王もまた、 その裏に居るものの扱う武器でしかない……


(……という事か?)


「『勇者』と言うのが概念エネルギーであるなら、 『魔王』も同じ、 個人に付与された力に過ぎない、 付与された物が死ぬと、 次の者にそれが移される」


魔王が現れる度に新たな勇者が剣を掲げる様に、 魔王も同じ、 ただ概念エネルギーが輪廻しているだけ


獄路挽ごくじびき、 それが名前と言う者も居るが、 奴等からしたら巨大な組織を表す、 個であり、 複数居るとも言われている、 それが、 魔王と言う存在を生み出す根源だ」


そいつらがいる限り、 『魔王』と言う災害は無くならない


「俺は、 そいつらを倒したい、 勇者としてじゃないよ? 俺個人の目的でそいつらを倒したいんだ」


だが、 そうもいかなかった


「俺の前、 前代の勇者は強かった、 特に、 魔王を探し当てると言う感覚は強大で、 魔王が幼体から真の魔王へ変化した瞬間のまだ力が肉体に馴染まぬ内に殺してしまう、 その方法で十一代に渡って魔王は討伐されて来た」


獄路挽はそれを重く受け止めた、 何としても連鎖を止めたかった、 より強い幼体を、 沢山、 輪廻の速度を早く


「俺が倒しても同じ何だ、 奴等は魔王が勇者に倒されると言う条件で、 『魔王』が奴等の手元に一瞬で、 そして何処に居ても戻ってくるプロセスを開発した、 概念体で有るからこそね」


「今回の様に、 せっかく奴等の世界から『魔王』と言う力を離しても、 ここで俺が倒したら力はすっ飛んで向こうに戻れちまう、 物体では無いからね」


宿っている、 少女の肉体が物体である限り、 世界に穴でも開けない限り向こうには戻れないのだと言う、 つまり少女の肉体は『魔王』と言う力を閉じ込める檻


この世界で、 勇者で無い者が、 魔王を倒す事で、 『魔王』と言う力を消滅させることが出来るだろうと語る


「何で自分に接触したか、 そう言う質問だったね、 つまり、 俺が言いたいことはそれさ、 君に、 魔王を倒して欲しい」


そう語る、 その目に嘘や冗談は無い、 と日暮は思った、 魔王を倒す、 つまりは少女を殺すという事


頼まれなくてもそのつもりだった、 未だ怒りの熱は消えない、 徐々に熱量を落とし、 しかし、 鉄の様に熱された分、 その殺意は鋭く研ぎ澄まされていく


「うん、 やる気のある目だね、 明山日暮、 俺は最近まで君の事をちっとも知らなかった、 何の興味も無かった、 元々魔王も俺の仲間と共に倒す予定だった」


仲間……


「君が倒した韋刈も俺の仲間だった、 彼なんかは特にやる気に満ち溢れて居たから、 俺も、 彼が魔王を倒す事を予定していた」



「……柳木刄韋刈が仲間、 ああ、 ブラック何たらか、 お前、 それは予定が狂って悪かったな」


ナハトは首を振る


「強力な能力者ノウムテラスを集め、 来たる戦いに備えて居たが、 俺の見立てじゃ、 俺と仲間六人で戦っても勝機は薄かったと思う」


ならばなぜ、 日暮なのか


「それは、 何の必然性も無い、 何の因果も関係ない君が、 常に自分より強い者と戦い勝ってきたから、 この物語にちっとも関係の無い君が、 この物語の主人公の様に、 最も目立ち、 見所があったから」


なんだそれ……


「勇者の力のひとつに、 人間に限り、 特定の戦士に対して、 その戦いの過去を知る事が出来る力がある、 多分戦死した仲間の不明死体を遺族に送る為とかそんなご立派な思想からじゃないかな?」


それは兎も角


「君の戦い、 その過去をこの目で見て、 俺は希望が湧いたよ、 君、 すごいじゃないか」


「族帝殺し・暗低公狼狽あんていこうろうばいを倒した事に始まり、 聖樹核持ちの花見丈虫はなみじょうちゅう、 かつて族帝へとなった事も有る治然頭蛾じぜんずがの幼虫」


「それだけじゃ無い、 暴走状態の聖樹を討伐し、 深谷離井や、 韋刈、 強力な能力者ノウムテラスに勝ち、 そして、 藍木山で、 猿帝、 いや新たな存在へと進化した、 厳淼采げんびょうさいを下した」


それは、 日暮が戦い、 勝ってきた相手、 日暮の前に立ち塞がり、 その力をぶつけあった強者達だ


だがそれは……


「それは常に、 俺だけの力じゃ無かった、 俺以外の力も確かに有って、 倒した敵だ」



「それで良い、 いや、 寧ろそれが良いんだよ、 明山日暮、 君は戦いを好む戦士であり、 そしてどこまでも人だった」


誰かの想いが付きまとった、 誰かの心が確かに背を押した、 時に鬱陶しかった、 それでも、 勝利に無関係だったと笑い飛ばす事は出来ない程


「縁とでも言うのかな、 君が刃を振るいながらも、 人の心を持っていたから、 そこに動かされていく、 絡め取られていく」


「強いだけじゃダメだ、 力を持っているだけでもダメだ、 性質の違う強さを持って戦って来た君だからこそ、 繋いできた縁が、 魔王の首へ伸びている」


ナハトは日暮の腰のナタを指差す


「自身の牙、 絡みつく他者の牙、 血に流れ遺伝する牙、 肩にのしかかり、 時に背を押す牙、 君と言う牙」


「魔王すら君に興味を示し、 何の変哲もない無い一人の男が、 何時しか壮大な物語のキーマンとなる、 もう運命で決まった様に、 新たなシナリオが更新された様に、 君しか居ないんだよ、 この物語に終わりを刻むのは」


「力有る牙を持つ、 君が相応しいんだ」


ナハトが日暮に手を差し伸べる、 それは場所移動の為だろう、 日暮は高所から闇に沈む街を見下ろし、 ナハトの手を取った


「どっちにしろやる事は変わらない、 俺はそんなに難しくは考えないよ、 ムカつく奴は殺す、 あのガキもそうだ、 やるよ」


ふっ……


フォンッ!


空気が揺れる、 瞬間移動、 座標変換、 この能力を使って、 モンスターはこの世界に来た、 それはこいつのせいだ、 恨むべき事だ


だが妙に怒りが湧かなかった、 それは日暮が何の力にもならない無駄な正義感を捨て、 目の前に控えた自身の戦いの事に注目していたからだが


日暮はナハトの中に、 なにか弱さや、 迷い、 葛藤など、 未熟な人が抱く心の脆さを軽薄な薄ら笑いの顔から見て解釈した


誰の為等とは考えない、 自分の為に、 それは成程理解出来る、 力を持って、 自分の為に戦う、 当たり前だ……


目を見開く、 景色が変わっている、 今度は道路に立っている、 交差点、 その真ん中で二人立つ


「さて、 君の聞きたい事は話したし、 今度こそ俺の話を聴いてよ、 結構重要な話も有るし、 それだけ話したら君を帰そう」


日暮は頷く


「俺の正体、 俺が『勇者』と言う概念エネルギーを身に受ける前、 俺が何だったのか、 それは……… っ………」


ナハトの言葉が途切れる、 彼が鋭く目線を向けた先、 日暮もつられてそちらを見る……


誰か居る……


………………………


「……あれ? 続きを話してくれないの? 私も勇者のお兄さんの事興味有るのに」



いつの間にだろう、 少女だ、 魔王少女、 交差点の真ん中に立つ日暮とナハトから少し離れた位置、 横断歩道の白い線の上ををぴょんぴょんと飛び跳ねている


「それと、 お兄さん、 さっきぶり♪ また会えて私嬉し……」


ギリッ! バッ!


「ブレイング・ブーストッ!!」


ボォガァンッ!!


日暮が地面を蹴る、 ナタは既に抜いて居る、 爆音が響いて地面が抉れる、 どんな事を聞いてもそれ程同様しなかったのは、 全て、 今ここに思考を置いていたから


殺すっ!


ブワァンッ!!


接近、 風圧が少女の服を揺らす、 大上段に構えたナタ、 全てをここに掛けた、

振り下ろしっ!


「死ねガキっ!! おらぁっ!!」


直ぐに首元まで迫る刃、 少女は笑顔を崩さない、 反応出来ていな訳じゃない、 全て、 見られて居る……


「魔国式結界……」


ガギィンッ!!


バンッ!


「うっ!?」


超硬度、 少女の展開した結界にナタが弾かれる、 反動が全身を叩き付ける様に揺らす………


「ふふっ、 ダメじゃん、 闇雲に攻撃仕掛けちゃ…… 閻魔弾っ!」


ボッ!


少女が指を日暮に向ける、 膨張と圧縮を繰り返す、 今にも溢れんばかりのエネルギー、 赤熱する程のパワー……


両親共々、 消し飛ばした力、 体制が悪い、 諸に食らう………


「たくっ! 初動が速ぇんだよっ! インビコール・ムーブっ!」


伸ばしたナハトの手が日暮に触れる、 その瞬間、 視界がぶれ、 意識が一瞬粉々に砕ける……


………………


ドガァアアアアアンッ!!


っ!


「っぶねぇ、 ギリギリ飛べた」


爆発音は離れた地点から聴こえた、 また座標変換で飛んだんだ、 あれを食らってたら再生の使用が無かった、 助けられた……


「…………チッ、 悪い、 助かった」



「はぁ、 こうなると思ったからちょいちょい飛んで座標を変える事で魔王の追跡を逃れているつもりだったんだけどな……」


ナハトが息を吐いて上を見る


ばたばた……


服がはためく、 黒髪が闇に溶ける様に、 しかし、 逆に彼女を際立たせる背景の様に


一瞬で追い付かれた……


「無駄だよ、 勇者のお兄さんは勘違いしてるみたいだから、 この辺で見せておこうかな、 逃げても無駄って言う事を」


そう言うと少女が腕を掲げ掌を空に向ける、 空気が一気に冷たく、 黒が更に黒く……


魔晶印ましょういん形成……」


少女の周囲に半透明で怪しく発光する奇妙な線が現れ、 形を変え、 空中で円を描く様に、 日暮には読めなかったが、 それは文字の様に見えた


「魔国式結界・閉透唱掾鬼へいとうしょうぞうきっ!」


グリリッ! バギッ!


少女の頭を割り、 角が生える、 目は血走った様に真っ赤に染まり、 空中の円同様、 文字の様な物が浮かぶ


押し付ける様な圧迫感、 突き刺さる様な威圧感、 その様は正に……


「魔王顕現っ!」


魔王……


「チッ、 まじかよっ、 このタイミングでその力を開放するって事はっ……」


ナハトが焦った様に、 まるで誤算であったかのように……


瞬時、 ナハトの取った行動は逃走、 再度、 座標変換の為に日暮へと手を伸ばしてた……


しかし、 それより早く、 少女は解放したその姿で、 まるでこの世界の法則に語り掛ける様に、 紡ぐ様に……


「……魔国浮顕まこくゆうげん


っ………


バギィイイイイインッ!!


少女がその言葉、 その力を使った途端、 地の底から噴き出すような膨大なエネルギーと、 硬質性の物体を無理やり叩き割る様な音がして……


「っえ、 あっ!?」


日暮は方向感覚を一瞬で失っていた、 地面が無い、 いや有る、 浮いている? 違う、 何だ、 今自分は何処に……


………………………


ドサッ


「いっ……… てぇ…………」


急にお尻を強く打つ、 落ちた? いや、 転んだ? ……………


待て……


日暮は目の前に映る景色に絶句した、 それは、 見た事も無いような、 明らかにおかしいと分かる………


巨大な城が建っていた、 見上げても見切れる程の高い塔がその大きさを主張する様に天に伸びていた、 血の如く真っ赤に染まった月には……


ぐりゅぐりゅ……


巨大な目玉がくっ付いていた、 城から伸びる天高い塔に巨眼の月が重なる、 空は異様な紫色に染まっていて雲一つないのに星々も見えやしない


異界


「………何処だよ、 ここ、 さっきまでの街は…… ナハトも居ない」


日暮は周囲を忙しなく見るがさっきまでの風景は影も形も無く、 今はただこの異様な異界に身を置いているのだと否応無しに理解させられる


ここは…… 本当に俺は今何処に………


りんっ♪


まるで鈴の音がなる様な、 すぐ側で、 尻餅を付き動揺する、 日暮のすぐ耳元で、 囁く様な音がなった


「お兄さんっ♪」


チッ


背後を睨みつける様に振り返る、 ……誰も居ない………


「ふふっ、 こっちだよ~」


前方から声がする、 日暮は思わず冷や汗が流れた、 ゆっくりと首を前方へ向き直す、 いつの間にだ……


「懐かしな~ お兄さんの匂い」


膝の上に少女がふわりと座っていた、 まるで重さを感じない、 目の前に居るのに、 そこに居ないと言われても不思議じゃ無いほどに存在が希薄だ


ふふっ


スッ…………


少女が自身の小さな手を持ち上げ、 細い指を日暮の顔に向ける、 銃口を向けられた様に、 安易に動けない、 体が硬直する


「お兄さん、 聴いて、 私ね、 怖くて泣きそうだった、 お兄さんが暗闇から助けてくれて嬉しかった、 ほんとだよ?」


こいつ…… どの口がそんな事をっ


「だから、 私にはお兄さんが居れば良いの、 他の人は要らない、 お兄さんだけが居れば、 私はそれで他に何も要らないの……」


ねぇ……


「私の物になって? お願い、 あの時みたいに私を助けて、 私の手を引いて…… ね?」


少女の声は、 捨てたはずの、 人の心に入り込み揺さぶる、 ふざけるな、 おい消えるなっ、 怒りは、 怒りは……


少女が笑う


「そもそも、 お兄さんはどうして怒っているのかな?」


は?


頭に来る、 くいっ、 と、 首を傾ける仕草は壊したくなる程に……


「そんなもん分かってるだろっ! お前がっ! ………? お前がっ、 お前……… あれ?」


少女の笑顔は消えない、 日暮はだらだらと背に汗が伝う、 どうして怒っているかだって?


そんなもの、 そんなもの…………


ど……


「どうして…… 俺はこんなに頭に来てるんだ……………………」


おかしい、 おかしい、 許せない筈だ、 殺すと、 憎んだ筈だ、 理由だって? …………………………


「怖いよ~ お兄さん、 私怖いよ? なにかしちゃったのかな?」


思い…… 思い出せない……


日暮は頭を抱えた、 あんなに怒りに震えて居たのに、 この少女を殺す事だけ考えていたのに、 何も……


「思い出せない……」


少女の張り付いた様な笑顔が………


………………


途端、 少女の首筋が、 眩い光を放つっ!


ビシャァアアアンッ!!


光に思わず目をつぶった日暮、 目を開けた時に目の前に少女は居なかった


ふぅ……


「思い出せよ明山日暮、 忘れたなんて言わせないぜ? 怒りを、 思い出せっ」


っ……


ああっ!!


「っ! 両親の仇っ!」


声が聞こえた方を振り返る、 ナハトだ、 少し肩が上下しているのは、 冷静の様に見えてその実焦って居るからか……


「ぶ~ もう来たの? 勇者のお兄さんっ」



「可愛くねぇんだよ、 ガキッ!」


ナハトが手を魔王に向けて、 力を解放する……


永剣相想えいけんしょうそう・ミクティカルソード」


ビギャァアアンッ!!


光放つ剣がナハトの手から生み出される、 件を構えるナハト、 その様は勇者の貫禄と言うものを感じた


「立て明山日暮っ! お前がここで死ぬ訳には行かないんだよ! 怒りがお前をここまで歩かせたんだろっ! 今さら戻る事何か出来ねぇぞっ!」


分かってる……


日暮は足に力を入れて体を持ち上げる


それを笑う、 少女は笑う


ふふっ……


「ふふふっ、 あははははっ! 何をやっても無駄だよっ! お兄さんも、 勇者のお兄さんもっ! ここに来た時点で、 もう何もかも、 私には叶わない! あははっ!」


ひらひらと舞い、 回る少女の笑い声はこの異界全体を震わせる


ここは………


「魔界、 まさかこの力を既に、 この精度で出せるとは思ってもみなかったな…… 完全に誤算だよ、 第四十二代魔王、 我ながら特別製だよ」


それでも……


「勇者を前にして、 少し腑抜けが過ぎるんじゃ無いかな? 魔王って言うのは、 どんな物語でも負ける様にできてるんだよ、 勇者にね」



「もう、 魔王とか、 勇者とか、 そんなレベルの話じゃ無いと思うけど…… 良いよ? 本気でおいでよ、 勇者さん♪」


ナハトの構える光の剣が最大光量を放つ、 眩しく、 何処か優しく、 そして鋭い光だ


「行くよ、 何処までも、 光に照らされた、 天閣の導く光のままにっ!」


ビガァアアッ!


ッ、 バシュンッ!!


光の剣先がぶれ、 強い踏み込みと共に振るわれた光の剣、 それを見て笑う少女


日暮の目の前で、 神話にも描かれた、 勇者の魔王の戦いが幕を開けた……

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