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第百十二話…… 『最終章、 上編・12』

「っ、 きゃあああああああっ!!」


その悲鳴がシェルター中に響いのは長い長い夜の、 その夜明けを目前に迫った頃だった


一人の女性が悲鳴を上げながら避難者達の就寝室通路前を走り抜けた、 その危機迫る悲鳴に子供も大人も目を覚まし、 赤子が泣きじゃくった


何事かと多くの人が通路を出る、 ある一人の男性が、 悲鳴を上げ続ける女性を捕まえて窘めた


深夜の静かな空間を割いた悲鳴、 誰もの心に不安と、 僅かな怒りや焦りが含まれている


複数のランタンで照らされた通路で、 震え嗚咽を吐く女性を介抱しながら、 周囲の人々は彼女の言葉を待った


やがて、 手を口で覆ったまま、 消え入りそうな程の声で、 女性は語った


「じゅ、 十五番室でっ、 十五番室の前っ、 前を通ったらっ!」


妙な匂いがしたと言う、 ここで言う十五番室と言うのは、 避難者達が就寝を行う部屋を数えた時に十五番目の部屋、 『避難者就寝十五番室』の事だが


十五番室に友人が居ると言う女性、 こんな時間に目が覚め手洗いに立ったと言うが、 余りの異臭に心配になり、 十五番室の扉を開けたそうだ……


「しっ、 しっ…… 皆っ、 死んでたのよっ!!」


戦慄が走る、 女性の震える声は、 周囲の人間へと伝播し、 不安の心を一気に煽る、 女性は見た、 首から上を切断され、 血をまき散らし死ぬ多くの人の姿を


そうして、 彼女はこう思った


「殺人鬼がいるっ! このシェルターの中に殺人鬼がいるのよっ!!」


不安の火は簡単に大炎へと変わる、 元々不安を抱え日々を生きるシェルターの人々、 陽の光を浴びることの無いシェルターでの避難


誰の心も疲弊して疲れている、 膨らみ続ける風船の様に、 いつ爆発してもおかしくない程に、 心は限界を迎えていた


そして、 最も避難者の不安を煽ったのは、 つい最近の出来事、 明山日暮を中心とした騒動だ


あれは、 日暮が云われない噂を流された事に始まったが、 拡大したのは一重に明山日暮と言う人間が元々、 至る所で注目を集め賛否があった為だ、 そこに火が着いた


噂には尾鰭が着くもの、 その中には『人を殺した事がある』と言う物もあった、 そこからシェルターの人々は強い疑心暗鬼の状態にある事を調査隊の土飼も問題視していた


十分な両の薪はあった、 そこに煽る様な強い風、 人々は一気に燃え上がる、 それは必然だった


夜明け前を目前にしたシェルターの中は一気に騒がしくなる、 大人達が調査隊の作戦室になだれ込んで来た時、 土飼は頭を抱えた…………………


………………


「どういう事だっ! このシェルターの中で何が起こっているんだよっ!!」



「皆さん落ち着いて下さいっ! どうか一旦深呼吸をっ!」


甘樹シェルターのリーダーである木葉鉢朱練このはばちあかねや、 藍木シェルターのリーダーであり、 議員としても有名な大望吉照たいほうよしてるが到着


しかし、 普段ならば人々は彼ら信じ歩むが、 この時は二人の言葉に誰も耳を貸さなかった、 弱いから生きる事に必死なのだ、 弱い物は生きる為に強くなれるのだ


そして、 不毛にもその力は、 自身の内側に向いてしまう


「調査隊は何やってたんだ! 殺人鬼はまだこのシェルターに潜んで居るんじゃ無いのかっ!」


土飼は言葉に詰まった、 十五番室の殺戮は、 侵入してきた男、 冥邏が起こした物だが、 その後、 更に侵入した魚惧露に背を向けて逃げ出しそれからの事は確認出来ていなかった


残酷な能力者ノウムテラスと周囲に倒れる骸に囲まれ、 彼らの心も同時に折れて居たのだ


しかし、 それが結果的に悪い方へと向かった、 いや、 この事態は誰にどうこう出来る事態では無かった


仮に調査隊を総動員し、 十五番室を封鎖、 夜明けまでに全ての死体を片付ける事が出来たとて、 死んだ人間を消せる訳では無いし、 何の解決にもならない


この広いシェルターの中に、 侵入を許し、 殺人を行わせてしまった、 それが一番のミスであり、 それに限る


何にせよ、 木葉鉢や、 大望が対応してくれて居る中、 土飼を含む調査隊の面々、 特にあの場面に居合わせ生き残った者は立ち上がる気力すら失って居た


下を向く者達に、 避難者の叫ぶ様な声が突き刺さる様に、 重くぶつかる……


……………


「だいたい俺達はいつまでここに居ればいいんだよっ! 国は何してるんだ国は、 警察はっ! 自衛隊はっ! なぁ、 外は今どんな状況なんだよっ!」


外、 誰もが思っていた、 あの恐ろしいモンスター、 モンスター……


「私、 避難早くて、 結局モンスター? 見なかったんだけど、 本当にそんなのが居るの?」



「あぁ居るさ、 ……でも今は知らねぇよ、 今思えば凶暴な動物と変わらねぇかもよ、 昔はよく居たろ野犬とか、 あのレベルだ」


違う、 でも、 必死に逃げた、 つられて逃げた、 一目散に逃げた、 抱く恐怖に、 その恐怖対象の記憶が一致して居ない


「………俺、 外見てみようかな、 そうだ、 ちょうど良いし、 家帰って見ようかな」


その何気ない言葉がトリガーだった、 誰もが望む事だった、 この極限状態で、 常に考えるのは、 日々が辛くとも、 苦しくても、 帰路を辿り帰れば、 暖かく迎える家


それが既に存在しないと、 またはそこにある幸せが既に手から零れたと分かっている者達は端からここには集まって居ない、 皆この夜を震えながら再び床に着いた


ここに集まった者は、 未だ理解を出来ていない者達だ、 準備も無く、 理解を得る要因も無く、 ただ流されるままにここに来た者達だ


「そうするべきかもしれないっ! そうだ、 ここに居ても殺人鬼に殺されるだけ、 モンスターは知らないけど、 今少なくとも殺人鬼の方が怖い、 そうだろ?」


伝播する、 同調し頷く人々、 木葉鉢の焦った声が響く


「ダメです! 外は、 外は本当に危険です! それに皆さんのお家は……」


数多のモンスター達による破壊、 聖樹の苗木の暴走、 数日前の最強の龍と魔王少女の戦い、 まともに建っている建物の方が少ない事を多くの人が知り得ない


既にこの街が、 再起不能である程に、 焼け焦げた大地と、 埋め尽くす様な瓦礫郡しか目に見えない程だと、 誰も分からない


躊躇った木葉鉢の言葉を大望が強引に引き継ぐ


「皆さんのお家はもう無いかもしれませんっ! モンスターが街で大暴れを繰り返し、 街は廃墟の様になっています!」


残酷な現実をぶつける事で大衆を一旦落ち着かせる方法を取ろうとした大望、 だが強引に繋いだ言葉は余りにも言葉足らずで、 逆効果だった


「は? 何っ、 何言ってんだよっ! んな訳ねぇだろっ! ここには一時的に避難する為に来てるっ! じゃあ何だ? 俺の三千万のベラボーに高い外車ももう無いってか?」



「そうよ! 家族の写真だって、 思い出やら、 それに貴金属だって家に有るのよ?」


ガヤガヤ…… ガヤガヤ……


「やっぱり確認してみよう、 俺家に帰るよ!」



「っ! ダメです!」


思わず手を伸ばす木葉鉢、 しかし強い意志を宿した男性はその手を強く弾く


「世話になったな木葉鉢さん、 でも、 ここに居るのだって強制じゃ無い筈だぜ? 止められねぇよっ」


赤くなった手を抑える木葉鉢と、 それを心配する大望、 男性は踵を返すと後ろを振り返ること無くズカズカと歩き出した


ファーストペンギンと言う言葉が有る、 天敵であるシャチが泳ぐ海原にその身を投げる事は泳ぎの得意なペンギンでも恐ろしい事だ


誰もが待ち望んでいる、 一番最初に踏み出す者を、 自分より先を歩いてくれる者を、 彼らにとってこの男性は、 まさにファーストペンギンとなり得た


一人、 また一人とその男性の背を視線で追い、 踏み出す足音と、 心臓の鼓動を合わせる、 その足が、 前を歩く男性を追う


「私も、 行くわ」



「俺も、 確かめに行ってみる」


一言、 決意表明の様な言葉を零し次々に男性の背を追う人達、 人を導く立場のリーダ達は、 ついぞ彼らを止めることは出来なかった


果ての無い虚無感だけが、 伸ばした手と共に音も無く深い所へ落ちただけ……


………………


歩みを進めた彼等は、 通路を抜け、 閉ざされた扉を開けた先で刮目する事となる、 暗闇にぼっかりと、 穴が空いた様な虚空


街灯の光すら指さない本当の暗闇、 ランタンの光が吸い込まれる程の黒、 彼等はこれが、 自身の住んでいた街だとは思わなかった


「…………んだよこれ、 確かシェルターの敷地内は色々建物とかあった筈なのに……」



「見てっ! 何よ、 ぐるっと囲む様に壁が出来てるわっ」


一人の女性がシェルター施設をぐるりと囲む巨大な壁を指さす、 外の状況を知らない避難者の多くが、 この壁が、 ここ一週間程の間モンスターの侵入を阻む城壁である事を知る筈も無かった


「こんなのいつ建てたんだよ…… ん? おい、 お前ら、 何か音聞こえないか? 何かがぶつかり合う様な音だ……」


……ドンッ! バンッ!


二十人程の男女が息を潜める、 その音を聴く、 何だ、 この音は……


「おい、 あそこに扉あるぞ、 階段上がった所、 ここに居ても仕方ない、 一旦外に出て見よう」


怖い物知らず、 ズカズカと殺風景な景色を後目に壁際、 階段を登ってその扉の前へ……


「開けるぞ」


ガチャッ


扉が開く、 目に入った物は、 やはり果ての無い黒、 暗闇だけだった


上を見れば、 月を雲が薄らと隠しているが基本的に空は晴れだろう、 夜明け前の空はよく見ると深い青色に染まり、 朝の訪れを知らせる様だ


「………………………なんだよ、 何でこんなに殺風景何だよ、 変だぞ、 俺は今、 何処に居るんだ…………………」


…………


ガギィンッ!!


っ!?


大きな音がした、 シェルターを勢いのままに飛び出した人々は、 暗闇の中で火花散る


それを見た…………


…………………………………………



…………………………



……


まだ空がブルーアワーへと変わる前、 シェルター前にて一人戦う日暮は、 目の前に立つそいつを睨み付けた


全身を体毛に覆われた巨漢、 黒い肌は血管が浮き、 肉体を構成する筋肉や骨格はまさに化け物、 強靭で岩の様である


ボサボサの長髪を分け、 ギラギラと血走った目が覗く、 殺意を孕む目がギョロギョロと動く


頭からは牛魔王を彷彿とさせる様な太い角が生えていた、 どっからどう見ても化け物、 これがまさか人間とは……


柳木刄韋刈やぎばいかり、 元々はタレント活動を行う有名人で、 日暮は知らなかったが良くテレビに出ていた様な奴だ


熊殺しに始まり、 刃物を持った不審者を素手で軽くいなし、 そしてこいつの最後は、 父親殺しだった


先程、 韋刈を追い詰め確実にトドメを刺した、 その体は確実に心臓は止まっていた、 だが、 まるで脱皮でもする様に、 古い肉体を捨て出て来たのが、 目の前の化け物だった


「ははっ、 内側の獣か…… これも能力の影響か? 死んで発動、 または、 たった今、 能力者となったか」


何にせよ、 相手も待ってくれそうには無い、 構えろ


「ファイナルラウンド、 いや、 延長戦かな…… 何にせよ、 今度こそ最後にしてやる」


グッ


ナタを大胆に構える、 敵の変化は、 戦いの中で見極める、 踏み込む


「ブレイング・ブーストッ!」


バゴンッ!!


地面が弾ける、 急速に加速する肉体、 その勢いのまま、 ナタを振り下ろす


「おらあっ!!」


一瞬、 目線は合ってる、 でも動かない、 カウンターは来ないタイミング、 構わない、 そのままっ


ガギィッ!


っ!


「硬っ………」


岩にでもぶつけた様な硬質感、 肉を叩いた感覚じゃ無かった、 刃も通ってない


(……まあ、 どれだけ硬くてもそれが肉体なら、 ナタに巻きついた骨で抉り飛ばせる………)


ギランッ


敵の目が光る、 ナタのぶつかった衝撃に怯む事も無い、 無機質の様で居て


ボォンッ!!


敵の拳が、 まるで蜃気楼の様に、 沸騰し熱を発する様な、 血管が真っ赤に膨れ上がり、 筋肉が膨張した腕


確実に狙い済まされ………


ドガァアアンッ!!!!


「グガァアアアアアアアアアアッ!!」


衝突したと思った時には吹き飛んでいた、 耳をつんざく様な敵の咆哮が遠くに聞こえる程


体が回り、 下を向く、 ナタを地面に突き立てる


ガンッ!


ぐるんっ…… ザザァ………


体が跳ね上がり後ろ方向へのエネルギーを削った所で、 後ろ向きに地面をつま先で削りながら停止する


「お~ ははっ、 力強っ! あははっ」


笑う、 余裕が有る、 今の一撃、 確かに強力だった、 韋刈の溜めた一撃、 日暮の腹を貫いたアレ、 そこに肉体の強靭さをプラスしたエネルギー


それが衝突、 普通に死ぬ、 でも


「手痺れる~」


ナタで受けつつ弾き、 自分から勢いのままに後ろに飛んだ為ダメージはほぼ無い、 これはあれだ


「野球で言うなら豪速球、 野球やってた友達に聞いた事が有る、 速い球ってのは以外と打ちやすいって」


速い球よりも、 狙って出す遅い玉の方が神経を狂わし、 打ちずらいと……


「くっそ速くて、 めちゃくちゃデカい力乗ってる攻撃だけど、 シンプル故に受けやすい」


韋刈の強み、 感覚派の日暮にとって一番の壁は、 韋刈の器用さだった、 緩急を付け、 強弱を付け、 フェイントを挟み、 まるで流れの様に叩き込まれる技は、 日暮にとって読みずらい、 正に変化球


「リズムゲームも慣れてきたら8.5か9くらいのノーツの速さに設定するよな、 真っ直ぐ単純なら、 早い方が俺のリズム感に合ってるんだ……」


ドンッ!


獣姿の韋刈が跳ねる、 月光を遮る、 その身は落下、 日暮を目掛けた踵の振り下ろし……


タンッ


ブワァンッ!!


「ははっ、 軌道が丸分かり何だよっ! 殺意がダダ漏れだからなっ!」


韋刈の強みは常に自然体で有る事もあった、 表面上の感情の変化はあるが、 芯は揺るがない、 だからこその正確さ


「ガァアアアアアッ!!」


ブンッ! ダッ! ドォンッ!!


着地から間髪入れない連撃、 肌感覚で避けて行く、 やっぱりだ、 日暮は思う


(……俺が弱い訳じゃない、 相手が上手かっただけだ、 今の韋刈はそれを意識して無い、 だったら)


隙は見える!


タッ!


巨大な拳、 それがスレスレを通り抜ける風きり音を聴きながら、 それでも更に深く……


グッ!


「おらぁっ!」


ガンッ!


振るったナタが硬質な肌を叩く、 やっぱりナタの刃が通らない、 だがっ


「喰らえっ、 牙龍っ!」


ッ、 グジャアァンッ!!


「ギャガァアアッ!?」


はははっ!


「どれだけ肉体を硬くしても! 肉体である内はこの骨からは逃げられ無いっ!」


やっぱ凄いよ、 鳥野郎、 お前の力は……


「ふっ……」


らぁっ!


グシャッ! ビシャッ!


二連撃、 更に叩き込む……


ブワンッ!


空気の揺らぎ、 迫る敵の拳、 速報から叩き付け………


カッ!


軽くナタで打つ、 抵抗すること無く、 敵の振り抜く攻撃の流れを利用、 左足を一歩前に、 上体を沈ませ……


グルンッ!


ズザッ!


沈み込む様に回転、 足が地面を荒く滑る、 深く沈んだ上半身を振り向くと同時に、 振り上げる、 敵の強力を回転する事で利用した一撃っ


ッ、 バシャアアアンッ!!


「ァガアアアアッ!?」


あはははっ!


「どれだけ力が強くても! この接近戦! 化け物相手に負けねぇんだよっ!!」


ブワッ!


っ!


切り上げ直後、 両手を大きく広げる敵、 そのまま懐の日暮に覆い被さる様な流れ……


(……流石に捕まったら不味い)


タンッ!


日暮、 バックステップで後方に回避、 だが、 この獣、 獣であって、 柳木刄韋刈、 本能的に戦い方を理解している


そして……


ドクンッ……………


大きく心臓を打つような音、 獣の体が、 その体に流れる血液が沸騰する様に、 赤黒い血管が膨張する


これはさっきの……


獣は掴みにかかった腕をそのまま体の前で組み、 前屈、 この構えは……


ッ、 ボガァアアンッ!!!


突進!


(……っ、 これをそのまま食らったらやばいっ! 相殺するには……)


真正面から突進する敵、 ならば……


「全力パワー勝負だっ!」


ブワァンッ!


衝突、 その瞬間、 ただシンプルな、 前方へと打ち出す力……


「ブレイング・バーストっ!!」


ボッ、 ボガァアアアアンッ!!


能力の強さはその人間の心次第……


(……次第で変わる気がするっ! だから全力っ!)


「ぶっ飛べぇえええええっ!!!」


ッ、 ドボガァアアアアアアアアアンッ!!


ブワァンッ…… スタッ


真正面からぶつかる力と力、 そのパワーバランスは何と同等、 互いに押し合い停止……


いや、 獣の停止、 日暮は空気圧の影響受けない、 少し背後に飛び、 着地、 硬直した敵に向け、 地面蹴るっ!


バンッ!


「ラァッ! 喰らえっ!」


バシャンッ!


一閃っ! 刃が、 いや骨が抉り喰らう、 その軌道、 獣の腹が血飛沫を上げる……


っ!


ドグシャッ!!


瞬間、 獣の肘、 懐の日暮に振り下ろされたそれは、 肌感で何となく頭部を回避し、 肩から首に突き刺さる


ぅ!?


「うがぁあああああっ!!! いでぇなぁっ!!」


グシャシャシャッ!


日暮の陥没し大きく外れ下がった肩が疼いて肉が形作る、 ダメージを貰うことが前提となって、 当たり前になった時、 痛みと言う物にイコール命の危険が釣り合わなくなってきた


だからッ!


「あはははっ! ぶっごろぉおおおおすっ!!」


ナタを持つ右腕をやられた、 まだ再生して無いから上がらない、 左腕、 急所攻撃なら通るっ!


グシャッ!


「ゥガッ……」


中指と人差し指は長さが合わない、 だから中指と薬指、 二本を密着、 力を入れて獣の右目を付いた


痛みに悶える声を発すると同時に相手の体、 獣の血管が膨張する、 そうかこれは強力な一撃能力……


(……同じタイプ、 一撃に込めるタイプだ、 八秒のクールタイム)


そう、 何故なら……


「このまま、 指先に溜めるイメージッ! ブレイング・バーストッ!!」


バーストは基本的に指定方向に空気圧を放つ能力だが、 発動は日暮の傍に限る、 その代わり伸ばした手の先や、 足先から発動する事も可能、 それは例え


相手の眼球を貫いたままの指先でも……


ブワァンッ!


「頭ごとぶっ飛べッ!」


空気圧が獣の頭部で膨れ上がる時、 獣の膨張した腕が同時に日暮の顔面を掠める……


同時に……………


バジャアアアンッ!!


頭部が弾け飛ぶっ!


「ギャガァアアアアアアアアッ!!!」


獣の叫び声


「ぅぎゃああああああっ!?」


日暮の叫び声


「ガァアアアアアッ! ガハァハァッ!!」



「ぎゃああっ、 はっ、 あはははははっ!!!」


両者笑い声


獣の肉体は復活しない、 しかしタフだ、 ボロボロでも、 頭部が吹き飛んでも止まらない


日暮は傷を負っても治るから気にしない、 頭部も再生を始めている


だからこそっ!


「もっと!もっと笑おうぜっ! 柳木刄韋刈ィっ!!!」



「ガギャァアアアアアアアッ!!」


ドバンッ!


獣の拳、 打ち出されるそれ……


ガギィンッ!


打ち付け、 勢いを利用した………


ブンッ!


カウンター………



バガンッ!


獣が繋げる、 打ち出す、 カウンターに返すカウンター……


バギィンッ!


さっきより強く、 それでも上手く、 カウンターに返すカウンターに返す、 更なるカウンター


互いにカウンターを返し続ける、 一つのミスが命取りとなる、 死のキャッチボール、 無駄に消費されることの無い力は、 カウンターを返し続ける度に増幅する


バギィンッ! ガゴォンッ!


バァンッ! ドォンッ! ドガォンッ! バギャァンッ!!


ドガガッ! バガンッ! ガンッバンッドンッ! ドガァガガガンッ!!!


ッ!


ガギィァアアンッ!!!


「っ! 八秒っ!」


互いに繋いだ力、 巨大な反動を回転する事で返す力のキャッチボール、 八秒経過で、 互いに能力発動のクールタイムが明ける


ボシュウウッ!!


獣の拳が赤黒く変色、 血液が沸騰する様に、 その能力は爆発的な推進力を産む


「ガァアアアアアアアアアアッ!!!」


ボガァアアアンッ!!


打ち出される拳、 今までで最高の推進、 溜めらた力が爆発的に弾け、 押し出す力はまるでミサイルの様に


触れた物を吹き飛ばすっ!


ははっ


グリッ!


「ブレイング・ブラストッ!」


日暮も拳を握る、 果たしてその弱い体で、 欲しい腕で、 相手を打ち破れるのか?


いや……


「プラスッ! 牙龍っ!!」


日暮の拳、 ナタに巻き付く筈の骨は、 今となっては脱着式の様に、 日暮の拳に巻き付いている


肉体を喰らう、 爆発的なパンチっ!


ボォオオンッ!!!


二つの拳が、 最高潮の力をを溜め、 最高峰の威力を纏い、 真正面から……


ドッ!


ガァッ!


ボガァアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!


衝突っ!


バギバギバギバキィィイイッ!!!


バギャアアンッ!!!


骨の効果で日暮の拳が相手の肉に食らいつき抉る、 爆発する様な四散、 しかし、 同時にぶつかり合う威力に日暮腕は耐えられない


音を立て、 互いに粉砕っ!


っ!


「ガァアアアアアッ!!!」


獣が痛みを堪え、 咆哮と共に逆の手を掘り下ろす、 日暮も同時に無事な腕で咄嗟にガードしつつ一歩、 更に前へ


バギャアンッ!


ガードした腕は折れ曲がる、 互いに腕を犠牲にした、 その相打ち共言えるそれは、 明らかに日暮の悪手だった


何故なら獣の攻撃は、 能力の使用に関わらず日暮に通るが、 現状日暮の攻撃は、 骨による吸収切断と、 能力のみ、 あまりに長い八秒……


いや、 皮膚は硬い、 だが既に抉れ飛んだ箇所、 獣の頭部……


バンッ!


日暮は飛んだ、 垂直跳びで相手より高く、 それは既に上空に投げていた、 ナタが宙を舞い、 クルクルと落ちている


先程骨を腕に纏わせた時、 同時にナタを上へ投げた、 互いに八秒のクールタイムが有るなら、 同時に発動、 この八秒間は相手も能力を使えない


初めから、 トドメは能力に頼らないっ!


ガシッ!


ナタを掴む、 直接骨の巻きついた手は既に回復している、 落下による体重を、 刃に、 敵の剥き出しの脳天目掛けて、 振り下ろすっ!


「柳木刄韋刈っ!!! これで決着だぁ!!」


ッ、 グシャアンッ!!


「グガァアアアアアアッ!?」


既に破壊された頭部、 そこに更に掛ける追い討ち、 骨が腕を這いずる様に、 ナタへと巻き付く、 喰らう刃っ


バシャアアアンッ!!


「ガッ!? ……………………………」


追撃によって東部の七割程が消失、 獣は片目しか残っていないが完全に白目を向いて居る、 最後の絶叫……


スタッ……… ガッ…………



「おわっ!?」


着地の瞬間、 足がふらつく、 ダメージは治っている筈だが、 ここに来て疲れが祟ったか


ドサッ………


尻餅を着く、 冷たい地面と、 打ち付けた事で熱を持つおしり、 目の前に見上げる獣……………


「いてぇ、 最後の最後でコケる何て、 柳木刄韋刈、 てめぇ、 俺の事ダサいって思ってるんじゃねえよな?」


獣は何も語る事は無い、 ただ、 損壊した体のまま、 倒れること無く日本の足で未だ立っている


「勝った俺が地面に伏せて、 負けたお前が立って見下ろしてる、 死に様勝負ならお前の勝ちだよ」


なぁ……


獣の物言わぬ肉体に、 それでも日暮の独り言とも言える語り掛けは止まらなかった


「俺は、 色々言ったけど、 お前の過去には全く興味無いよ、 父親殺しの理由とかな、 あっ、 でも強くなった方法は知りたいかも、 何処で鍛えたんだよ、 ……それと殺した熊はどうしたの? 食べた?」


はははっ………


「何か、 戦いってさ、 俺達の戦いって命を懸けてるからさ、 勿論戦いが始まれば決着として相手を殺すよ…… でもさ」


日暮は思っていた、 戦いの中で、 刃を交える度に相手の事を知るのだと、 語らずとも相手を理解していく、 戦いの中で友とも呼べる存在になる


日暮は違った、 ついこの間まで、 戦い等無く、 人と語らう事で友好関係を作って来た、 言葉無しには始まらない


「お前との出会いは最悪、 いきなり腹パンで、 人生で初めて腹に穴が空いてさ、 無我夢中で戦って、 確実に俺の肉体に、 記憶に、 本能に、 魂に、 俺に刻んだ」


痛みがフラッシュバックする度に吐きそうになった、 何度も腹に穴が空いて居ると勘違いしそうになった、 それ程鮮烈な痛み


だからこそ、 日暮は決して忘れようとはしなかった、 繰り返し思い出し、 意図してフラッシュバックを行った


覚悟とは意志の問題だ、 もう一度始まる戦い、 それからの別の戦い、 戦いから逃げる気が無いのなら、 いつかの為にその痛みを精神的に克復し乗り越えなくてはならない


「俺は、 この街で、 始めてお前と戦ったあの日、 技術面とは違う部分で、 確実に強くなったよ、 お前との戦いで、 死なずに生き残ったと言う経験が俺を強くした」


だからこそ


「ありがとう、 今日、 お前との戦いに決着をつけて、 俺はもっと、 更に先に……」


……………


ボシュウウッ!



獣の全体が熱を持ったように赤く、 沸騰した様に蒸発を始める、 これは能力発動前の……


(……っ!? やべっ、 まだ死んでない! 間に合うか能力……)


確かにクールタイムは開けている、 倒したと思って油断してダラダラトークしている間に、 敵は最後の最後掛けてたってことかよっ


「っ、 ブレイッ…………」


日暮は叫ぶ手前気が付いた、 膨れ上がる血管、 先程までの推進力を産む力は、 その血管の躍動が外側に向かって居た


だが、 今は内側に、 まるで力を中心に溜める様に、 これはさっきまでと違う……


(……推進力を産むことによる突進じゃない! なら、 何だっ)


空気圧の進行は、 ぶつけ合いではなく……


「ブーストっ!!」


ボンッ!!


体を加速させることによる後退、 距離を取れと本能が言っている、 先程までと種類が違うからか、 こちらの方が一瞬早く能力を発動する


体が空気圧に押され、 加速を始め……


………


にやり


獣が、 いや韋刈が、 白目を向いていた筈の目が生き生きと、 楽しそうに、 笑った


外側に向け放出するエネルギーを、 自分の内側に溜める、 抑圧された推進力は互いに内側で反発し合い、 爆発的な力となり、 外郭を破壊し溢れ出す



ボガァアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!


ドガァアアアアアンッ!!!


……………


ゴロゴロ……… ドサッ


あぁ……


「………自爆、 また空を見上げてて笑っちゃうね」


回避が成功した、 何とか生きてる、 最後の最後の自爆?


いや……


「あ~あ、 やられたなぁ、 明山日暮、 ベラベラ言ってた様に、 お前の勝ちだよ」


韋刈だ、 生きている、 人の姿………


いや


「あはは…… 何でそれで生きてんの?」


獣姿の時に欠損した部位をそのままに、 吹き飛んだ片腕と、 身体中の抉れた傷、 その殆どを損壊した頭部


見た目の割に真っ直ぐとした足取り


「獣が出てきたか、 獣の時は記憶が無いんだよな、 お前に負けて仕方なく出てきたみたいだが…… 延命にもならなかったな」


はぁ……


「明山日暮、 お前は強いよ」



全身が痺れる、 その言葉、 奇妙な事に獣の頭部を破壊した時では無く、 韋刈の言葉を受けて初めて、 勝利の実感が湧いて出てきた


そうだ、 こいつは壁だ、 乗り越える壁、 穿つべき因縁、 それでいて、 その強さは日暮にとって無意識の内に憧れへとなっていた


どんな時、 何と戦う時も崩れはしない、 自分の強さへの絶対的な自信、 揺らがない、 倒れない、 嘆かない


強さ


目の前の男に強さを認められた時、 日暮は大きな、 大きな一歩を踏み出す感覚に陥った、 選択の岐路にて、 見据えた道へ、 後戻り出来ないその道へ確実な一歩を進み出した


あぁ……


後は、 もう一つだ、 過去も、 今どうしてその体でたっているのかも興味は無かった、 たった一つだけ、 言葉に出すことは無い、 心の中で強く決定した


殺す


スタッ……


日暮は立ち上がる、 もう理解する為に言葉を紡ぐ必要も無い、 戦いの会話と、 言葉による対話では言語が違うんだ、 何となく分かったよ


放っておいても直ぐにでも目の前の男は死ぬ、 今この奇跡的に生きている一瞬は、 命を懸けた戦い、 その決着の為と解釈した


グッ


刃を握り、 構える、 既に能力のクールタイムは開けている、 最大最高火力で相手を屠る


互いに言葉は要らなかった、 どこか近くの既に崩壊した建物、 それが悲鳴を上げ更に崩れ落ちる音がした


ドガシャァンッ!


ッ!


バッ!


踏み込む日暮、 ナタを構え……


「ははっ! おっらぁっ!!」


韋刈が地面から何かを蹴りあげる様に足を振るう、 そういえばここは、 韋刈が獣となる前に、 追い詰められた日暮が寝転がっていた地点


あの時、 日暮は地面に打ち付けられていた、 その打ち付けたそれは、 地面へと刺さったまま……


キラッ!


ッ、 ビシャアアアンッ!!


「寸鉄っ」


グシャッ!!


っ!?


蹴り挙げられた韋刈の寸鉄は、 確実な速度と威力を持ったまま、 日暮の胸へ突き刺さった、 肋骨が圧を受け粉砕する感覚


そうか、 相手もただで死ぬ気は無いか、 そりゃそうだ、 相打ち、 狙ってくるよなっ


ああ………


「っ、 あははははっ! そう来なきゃなぁっ!!! 柳木刄韋刈っ!!」


欠損したままの体、 韋刈は片腕を封じられている、 今の蹴り上げ、 あと一瞬で決着が着く状況で、 更に蹴りは出しずらい連携として出すのはもう一方の拳


だが、 韋刈の拳は致命傷になり得る、 この戦い、 連戦でいよいよ回復のエネルギーが枯渇しているのを感じる、 胸の傷は治るだろうが、 それは優先しているから


手足などの細かい傷は癒えて居ない、 次致命傷を貰えば死ぬ


良い……


この緊張感が、 生への執着が、 確実な制度と、 力を、 感覚的に導き出す


「ブレイング・ブーストッ!!」


接近、 空気圧がナタを強く押す超加速、 しかし韋刈が拳を出す、 最も早いストレート、 この距離、 加速仕切る前に拳は到達する


読むまでも無い、 狙いは寸鉄が穿たれた胸、 壊れた肋骨は心臓を守らない、 それを助けに完全に打ち砕くだけの威力を有した拳だ


後はもう、 信じるしかない、 自分の力を、 能力を、 その状況から出来ることは無いのだから


その加速したナタが、 前身の硬直と共に、 最大加速、 最大火力、 火花を散らす、 一撃


ッ!


ボォオオンッ!!


タンッ……


韋刈の拳が寸鉄に触れた、 ナタよりも速く、 そのまま押し込まれるかに思われた拳、 だが……


不思議な事に、 まるで止まった様に感じた一瞬、 その未だ嘗てない程研ぎ澄まされた感覚の中で韋刈が笑った


「もう力入らねぇよ…… 明山日暮、 亜炎天あえんてんで、 待ってるぜっ」


………………



ビシャアアアアアアアンッ!!!!


バシャアッ!


……


グルングルン……… ベシャッ………


舞った韋刈の首は、 その顔は笑っていた、 そうだ、 お前が気づかせてくれた、 亜炎天


あぁ……


(……首洗って待ってろよ、 俺はもっと強くなってそこにたどり着くからな……)


見上げた空、 深い青色に染まった、 吸い込まれそうな程に、 夜明け前、 その涼しい風に、 火照った体を晒す


心地よく、 気持ちが澄んでいる、 事の終わりを理解した体は、 一気にのしかかる様に重さを感じた


疲れが肩に覆い被さる、 眠い、 でもそれはきっといい疲れだった、 決着を終え、 新たな道のりへ踏み出す、 新鮮な空気を肺に一杯に吸い込めば、 春先の午後の様な清らかな心で今を生きる


モンスターも新たに向かってくる事は無い、 色々あったし急な戦いだったけど、 長い夜の終わりを前に、 日を遮る暗幕がはけた清々しさに息を吐いた


白だ、 深い青が、 本の一瞬の彩りの時を終え、 空に光彩の白が入り交じる、 長かった夜を照らす光が、 闇の中で生じた出来事を浮かび上がらせる


白に照らされ、 廃墟と化したこの街が、 人の生活を支えた建造物の死骸、 その瓦礫が、 転がり物言わぬ亡骸が


崩れ落ちた、 今しがたの友と、 今、 地に立ち、 その生命の躍動を感じる日暮が


ああ、 全てを照らす、 朝だ


日暮は亡骸を前に、 血の滴るナタを、 その鮮血の赤を光に照らし笑った


………………………………………



………………………



……


その戦いを、 傍観するもの達が居るとも知らずに


「っ、 きゃああああっ!!」


っ!?


日暮は後方で響いた悲鳴に驚きその方を振り向いた、 ざっと二十人程の男女、 誰しもが口を大きく開けてこちらを驚愕に染まった顔で見ていた


こんな所にこれだけの人、 流石に理解が追い付かない、 何故こいつらは、 何のためにここに居るのか、 驚いたのはこっちの方だ……


そんな事を呑気に思っていた日暮の耳に、 一人の男性の声が届いた……


「ひっ、 人殺しっ!!」



わっ、 と、 その言葉はそこにいた人達の耳に、 心に届いた


「殺人鬼だっ! 殺人鬼が外にいるぞっ!!」


殺人鬼? 人殺し…………


ああ、 そうか、 当然すぎて、 当たり前過ぎて、 問題視する声が無くては気が付かなかった


(……俺は今、 人を殺したんだ)


大きな一歩を踏み出した、 数分前の日暮では絶対に到達する事の出来ない所へと至ったと、 そう思った


そう思うと……


「人殺しっ!! 人殺しっ!! あっ! あいつ、 明山日暮だっ! 本当に人殺しだったんだ!!」


あ~あ、 せっかくいい気分だったのに……


(……うるせぇな)


血の滴るナタはまだしまって居ない、 一人も、 二十人も対して変わらないか……


日暮は清々しい程に研ぎ澄まされた感覚で、 喚く者たちへと踏み出そうと……


………


「おーーいっ! みなさーん! 何処ですか! 戻ってきて下さーい! 外は、 外は危険でーす!」



「日暮ーっ、 日暮いるかっ! 」


知っている声だ、 大望さんと、 土飼さんか、 目の前の奴らは避難者共で家出、 土飼さんは日暮を探しにか……


ザッ……


不意に足が止まった、 殺すって、 何処まで殺せば良い? このうるさい奴ら? それとも…………


「あっ! 大望さんと、 土飼さんだ! 殺人鬼はここにいまーす!」



「出てけっ! このシェルターから出てけっ! ここから出ていけー!」


ヒーロー気取りかよ……


あ~あ……


「こいつらは兎も角、 他の二人を殺すのはつまんないな」


出てけか……


ヒラ


日暮は向けた足取りを逆方向へ向ける、 シェルターに背を向け、 廃墟と化した街の方へと足を進める


「俺の居るべき場所はここじゃない、 言われなくても飛び出すよ、 こんな所」


タン…… タン……


思い足取りを引きずるように一歩一歩打ち付け、 日暮は人と歩む道を捨て


進み始めたばかりの目の前の道を、 強く歩みだした………

この物語はフィクションであり、 全ての話に登場する組織や、 団体、 事件や人物名等に、 実在する組織団体、 事件、 人物名等とは全く関連しない物です。


まあ、 偶に好きなゲームの名前とか出ますけど、 そこは多めに見てい下さい。

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