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第十話……『深く…………』

ホームセンター『ココメリコ』、 彼が探索を行う店舗のトイレの位置は、 入口を入ってすぐのフロアから横に伸びている通路を進んだ先にある


割れたガラスから入った風が未だ冷めやらぬ熱を僅かに冷ました


「外は……まだ明るい、 そりゃそうかある程度早い時間に出てきたんだから」


外が完全に暗くなる事は避けなければ行けない、 だが外は明るく時間もまだ昼前頃だと思う……


「わかるか、 時間なんて、 ここ最近は時間に追われない生活を過ごして居るからな………」


ゴーン ゴーン


入口フロアに飾られたアンティークなオシャレ掛け時計が12時の鐘を鳴らす


「もうこんな時間かよ、 時の立ち幅でかすぎ………………はっ………」


時間ばかりを気にしていたあの頃とは違う、 自由に、 もっと自由に生きても良いはずだ


外の景色から目を離しトイレへの通路を進む、 通路の壁にはアルバイト募集中のポスターが貼られている


「アルバイトなどと言う煌びやかな響に騙されては行けない、 要は仕事だ、 仕事はクソだ!!」


自由に言いたいこと言ってやる!!


「仕事はよォ!! えっとあの、 クソでよぉ!! そのあの、 本当にクソで、 ………もうとにかくクソ……………だ!!」


…………言ってやれなかった……………


辺りがし~んと静まる、 何も無かった、 何事も無かった………そんな事を思いながらポスターから目を離し、 男子トイレのドアの前に立つ


ガチャり、 ノアノブを捻ってドアを開け………………


………………………………………


「しゅみ!?」


………………………………………………………………………


バタン!!


勢いよくドアを閉めた


「…………居るやん……………ん?」


このトイレのドアは内開きの開き戸だ、 敵がドンドンと内側からドアを叩く音が聞こえる、 つまり敵は今開くドアの真ん前にいるって事か…………なら


「あれが出来るな」


昔から彼の内側にある凶暴性が憧れた展開、 まさかこれが出来る日が来ようとは


「歯ぁ食いしばれよ鳥頭!!、 セバスチャンキック!!」


内開きのドアを外側から思いっきりケリつける


「じゃじゅみぃぃ!?」


蹴りつけたドアが敵を吹っ飛ばしてやった感覚が足に伝わる、 すっげえ楽しい!!


ナタを構え、 開いたドアから中に入っていく敵は………痛そうに顔を擦りながら倒れ悶え苦しんでいる、 ハハ、 汚ねぇ……


「鼻が赤くなってるぜ、 どこかにぶつけたか?」


喋りながらも警戒しつつ近づく、 敵の目は恐怖に染まっている、 動けそうに無い


「それともあれか、 花粉症か?」


だんだん楽しくなってくる、 生来の血に飢えた性が、 もっと残虐になれと、 そっちの方が楽しい


「今お薬切らしてまして~、 でもご安心ください大抵の事はこのナタで解決しますので」


振り上げたナタが鳥頭に死を連想させる、 死の恐怖が鳥頭の動きを完全に止める


「って言うか、 もう死ね」


無抵抗の敵にトドメを刺す、 その事実に気づいた途端急に感覚が冷める、 自分が求めてるのはこれじゃねぇ……………さっさとこいつを殺そう………………


ぽちゃんっ………………その瞬間すぐ近くで水の跳ねる音がした………………………


「しゅみぃ!!」


途端鳥頭が動き出す、 まるでカウンターを初めから狙っていたように正確に、 しかし目はどこか虚ろだ、 何かに操られて突然動いたような………………


場違いな思考は痛みによって動きを止める


「いってぇぇ……ぇなぁ!!」


低い体制からの鳥頭の引っ掻き攻撃が腹を掠める……


でも運が良い、 傷は深くは無い、 だからその痛みは逆に怒りを誘発する薪になる


「死ねぇクソガキがぁ!!!」


ナタを頭蓋に振り下ろす、 凄く気分のいい音がして、 数秒後敵は動かなくなった


「クソが!! クソが!! クソがぁ!!!」


怒りに任せて、 死んだであろう敵の体を何度も蹴りつける、 しかし息があがるとそれも終わった


「はぁ……はぁ………クソッ……………………はぁ………もういいや……………」


頭が冷静になっていく、 呼吸を深く吸う………臭いここトイレだったな………


「はぁ………俺キレやすいんだよな、 落ち着いて行動しなきゃな…………………よし、 もうよし」


冷静に状況を分析する、 服をめくり傷の確認、 やっぱりそんな深くない


そのまま手洗い場まで移動する、 やっぱり鏡がある、 手当をしよう……………


「洋式には入ってねぇだろうな?」


洋式トイレのドアを開く……………床が少し濡れている、 汚いがこれといって何も無い、 洋式トイレが有るのみだ


一様入ってきたドアも閉めておく、 誰かが入ってきたら音で分かるように、 そうしてやっと手当に取り掛かる


水で濡らしたガーゼで、 傷を拭いていく、 背中の傷を何とか拭いたら、 今度はアルコールで消毒する


「いってぇぇ、 しみるぅ」


またしても背中が届きずらい……もうドバっと出して背中伝わせてで良いか……


億劫さを感じると適当さが増すどうしようもない性格


背中に腕を伸ばして……ポトン…………アルコールの容器を落としてしまう


「あ~ まじなんなん?」


愚痴を零しつつ取ろうと屈んだ気づく………


「何か、 地面びちょ濡れじゃん…………………何時からこんなに濡れてたんだ?」


シャャャャャ…………………


「ん? 下の水道管亀裂入ってるな、 水漏れしてる…………小便器の管も割れてる、 さっきの奴出れなくなって中で暴れたな………」


そう言いながら手当を進める、 傷薬を塗ってガーゼを当て、 最後に包帯を巻く…………完成だ


「適当だけど、 良いよな、 問題は………無いだろ」


具合を確かめる為少し動いて見る、 パチャ パチャ パチャ


「……………気付いたら水浸しだ………早く出よう」


思い立ったが行動、 足を出口に踏み出し……………


ガタン!!


大きな音が背後からして反射的に振り返る、 何だ?、 今音が聞こえてきたのは…………


「洋式の中だ……何も無かったはずだろ」


焦る……汗が伝う……何だ?、 ナタを構え……………


ドタン!!


はっ!! 音にビビる、 今度は反対、 入ってきたドアから音が、 音の正体は直ぐに分かる鳥頭が一体トイレへと侵入して来た


それに気を取られてしまった、 ドタン!! 背後からの気配、 横目で少し確認する、 鳥頭の手だ


でもただの手じゃない、 びしょ濡れで水が滴っている、 水の中から出てきたようだった


そして………


「でけぇ!?」


いつもの鳥頭と来るべて3倍ほど手のひらがでかいうえに、 長い


数メートル離れた洋式からここまで手を伸ばして来ている、 そして逆からは侵入して来た鳥頭……


やばい、 挟み撃ちだ…………


近づいてくる脅威に対して、 世界がまたゆっくりと動く、 思考が加速する……………


……………………………床………………………


床を見る、 タイルがひび割れて水が染み込んで行っている


考えづらい事だけど………………床下は、 空洞か?


有り得るはずは無いだろう、 水道管が通っているとか? なら床に何があるって……………


…………………床下に広大な空間の気配を感じるよ………………………………


…………………………………………………………


……………………………………


……………………


再び世界が加速を始める、 謎の実感があるこの床下に逃げれば助かると………………


なら………………


「ブレイング・バースト!!!」


床に向けて力を放つ、 床は呆気ないほど簡単に崩れ、 俺の体は深い闇の中へと吸い込まれて行った……………





…………………ほう…………ここに来るか、 小僧………………




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