表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

№3 吟遊詩人マリーは仕官したい~前編~

 吟遊詩人マリー登場。


 窓の外はやまない雨が続いている。

 エリザが鬱屈とした気持ちを抱えていたある日のこと、父ディオラ王がつとめて明るく切りだした。

「エリザ、エスメラルダに会わせたい人物がいるのだ」

「また」

「またですか」

 2人は同時に言った。

「まあ、そう言うな。今回は2人に余興を楽しんでもらおうと思ってな、吟遊詩人で天使の声の異名を持つマリー=エステファンがそなたたちの為に吟じたいといっておるのだ」

「はあ」

「そうですか」

 2人ともなんとも気乗りのない声をあげる。

 かつては、異世界アイドルグールプKOJI12(トゥエルブ)で、世界を熱狂に巻き込んだ彼女たちには、今更極上エンタメとそう聞いても心には響かなかった。

「まあ、そう言わずに。かの者の歌を聞いてみようぞ」

「はあ」

「まあ」

 2人は渋々了承した。

 王は柏手を打つと、従者たちが吟遊詩人を連れてきた。



「はあい。お招きに預かりまして恐悦至極でっす。おらぁ吟遊詩人のマリーどえっす」

 純白のワンピースの裾まである漆黒の髪をなびかせて吟遊詩人のマリーは颯爽とクセのある訛りともにやって来た。

「訛りが個性的ね」

 エリザは思わず、そこに食いつた。

「まあ可愛らしい」

 エスメラルダは微笑んだ。

 顔はほっぺかが赤く、田舎者からでてきた童女と言った感じで、独特な方言のイントネーションがそれを際立たせている。

 しかし、身体は出るところは出た我儘ボディなのだ。

「おらぁ、嬉しいだあ。こっただ有名でめんこいお2人の元で仕えるなんて」

(おいおい・・・)エスメラルダ。

(聞いてないよ)エリザ。

 2人は一斉に、ディオラ王を睨みつける。

 王はそっぽを向いた。

「おらぁ。信じらねぇ」

「ちょっと、待って」

 エリザは手で制す。

「ん?どうしただ」

「実は初耳なの」

 エスメラルダは事実を述べた。

「は~そっただこと言ったって、国のかあちゃさ、もう言ったべよ」

「エリザ・・・エスメラルダ殿、マリーと言えば天使の声を持つ・・・」

「父上、これからここは、私たちの国では無くなります。今更仕官だなんて」

「王様、彼女の将来をこれからずっと守れますか」

 2人はゆっくりと王を諭す。

「しかし・・・これほどの者はおらぬぞ・・・」

 王が渋い顔を見せた。

「父上」

「そういうことではありません」

 エリザとエスメラルダは王をさらに嗜める。

「んだども!」

 マリーは深々と頭をさげる。

「おらぁ、お二人さの事、お慕いしてるだ!なにがなんどもお仕えしたいどす」

「いろいろと思い、混じってるわね」

「ねぇ」

 2人は顔を見合わせ、マリーを見る。

その瞳には揺るぎない熱情が宿っている。

エリザは肩をすくめ、エスメラルダは頷いた。

「わかった。あなたの魂の歌を聞かせて頂戴」

「話はそれから」

 彼女たちは、その瞳に答えた。

「がってんだ!」


 マリーは、ずた袋の中からマンドリンに似た楽器(あくまでも異世界)を取り出す。

「いくど!」

 マリーは深く息を吸い込む、ポロン、音が奏でだす。



 おらぁマリーだど     作詞・作曲 マリー=エステファン


 おらぁはマリーだど

 めんこいめんこいマリーだど

 マリーの花咲く笑顔は

 びーてぃふるしゃいんでぃんぐでー

 ラックス・スーパー・リ〇チだど

 おとく、おとく笑顔のスーパーセール

 たども、安売りはしないど

 だっておらぁは、えんじぇるぼいすマリーだど

 ららららららららららら~

 今日もやっぱり~

 マリーだど

 マリーだど

 マリーばい

 マリーじゃけえ

 マリーどすえ

 なまらマリー

 めんそれーマリー

 キュンどぇすマリーどぇっす

 おらぁマリーだど


 熱唱!そして熱唱。

「どうだあ?」

 振り返るマリーに審判の札があがる。

「採用」

 ディオラ王。

「審議」

 エリザ。

「審議」 

 エスメラルダ。

「なんでだどぉ~」

 後編につづく。



 後編につづく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ