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レトロゲームを勧める少女  作者: みくた
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後編

 帰宅した俺は動作チェックも兼ねてソフトを互換機に挿し込んだ。

 ゲームを起動すると数秒もしない内にタイトルロゴがデカデカと画面に表示される。

 起動は問題なし。これならゲームも問題なさそうだが、ついでにプレイもしてみる。

 どうやらこれはアクションRPGのようだ。


 ちょっとだけのつもりだったが、プレイ時間はとっくに三時間を超えている。

 このゲーム、セーブポイントが地味に少なくセーブのタイミングが掴み辛いのだ。しかし、それを除けばゲームバランス、ストーリー、音楽の全てが素晴らしく全く飽きが来ない。

 しかし、それとは別に一つ気になる事がある。

 ゲームの後半に差し掛かった辺りから、妙な視線というか気配を感じる。

 何度か部屋を見回したが、特に異常は見られない。

 俺には霊感がないからその類の事は信じてはいない。だが、怖いものは怖い。でも、何があるというわけではない。

「気のせいだな。」

 俺は導き出した答えを口にし、自分に言い聞かせるとゲームを続行した。

 ここまで来たんならクリアまでやってやろう。


 そして、空が白み始めた頃、俺はエンディングを迎えた。

 画面にはスタッフロールが流れ、最後に表示されるプレイを感謝する文字。

「終わったー。面白かったー。」

 そして、コントローラーを持ったまま達成感を噛み締める俺。

「あ、ありがとうございました。」

 耳元でそう囁かれ、ずっと感じていた謎の気配が消える。

「え!?」

 驚いて振り返っても朝日が差し込みつつある部屋には誰も居なかった。

 だが、その声には聞き覚えがあった。

 このゲームを勧めてきたあの少女の声だ。

「君だったのか・・・」

 真実を悟った俺はそう呟くと、いつの間にかタイトル画面に戻っていたゲームの電源を切った。


 明け方までゲームをしていた俺はまる一日を睡眠に費やし、目覚めたときには既に日が沈みかけていた。

 変な時間に寝てしまったせいか頭がはっきりしない。

「・・・あれ?」

 部屋に違和感がある。不自然に明るい。

 明かりの元を辿るとテレビがついている。

 テレビつけっぱで寝たか?ていうか、プレステなんて起動したっけ?・・・ああ、君がやってたの・・・

「・・・って、え!?」

 一人称視点で草原を走り回るゲーム画面の前に座るセーラー服を着た半透明の後ろ姿を認識した瞬間、頭の中で渦巻いていた眠気が一気に吹き飛ぶ。

「あ!・・・ごご、ごめんなさい。勝手に・・・」

 中古屋にいたあの少女が慌てふためきながら謝罪する。

「成仏したんじゃなかったの?」

「するつもり・・・だったんですが、直前にこのなんか凄そうなゲーム機を見つけて、ちょっとだけやってから逝こうとしたら止まらなくなってしまって・・・」

 どうやら彼女は新たな未練を生んでしまったようだ。しかも、プレイしているゲームはオープンワールドアクション・・・下手をすれば彼女は永遠に成仏出来ないかも知れない。

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