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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私の旦那は魔王さま

作者: ポコ太

 キラキラと輝く一粒の宝石。


 朝日にそっと透かすと綺麗なエメラルドグリーンが光を放つ。ゆっくりと隣を見れば静かな眠りについている一人の男性。

 瞳は瞑っていて分からないがサラリとした黒い綺麗な髪を少し触ろうと触れそうなところで。



「・・・ふむ、夜の続きか?」


 パチリと髪の色と同じ黒曜を塗りつぶしたような綺麗な色が、私の瞳を捉えてトロリと優しく微笑む。今でもこの人の顔を見るとドキリと脈をうち、頬がほんのりと赤くなるのが分かる。

 握られた手をお返しとばかりに包みこみ、眠っていた男性の胸元へ擦り寄りそっと瞳を伏せる。


「いいえ、今日は私にとって決別の日なので」


「ああ・・・そうだったな。やっとだな」


「えぇ、やっと果たせます・・・私の復讐が」















 あれは。昔程ではない、数ヶ月前の出来事。


 まだ幼く世間に無知だった私、ニーナ・コロネウス公爵令嬢だったあの頃。

 煌びやかな中、壇上の上で男女が二人それを囲うように周りに数人の綺麗な男が。視線の先にはビクビクと体を震わせそうな位の悪意ある睨みや嘲笑うかのようなヒソヒソ声。



『この俺様の寛大な措置で、貴様を《暗黒の領域》に追放するっ!!』



『なっ!?そんな殿下、私は本当にリリンさまを虐めたり国家転覆を計ろうなどしておりません!』



『えぇい煩い、此方にはニーナ貴様の悪行が証拠として残っている。観念せよっ』



『うふふっ・・残念でしたニーナさま。これでアンドリューさまの愛は全部リリンに注がれるの、本当は虐めた事を謝って欲しいけどね』


 何がなんだか分からないままニーナは直ぐに公爵家の馬車を探すも何処にもない。焦りながらもニーナは高価そうな純白のドレスをたくし上げ、自身の足で公爵家へと向かう。





 どれ位経ったのだろうか。

 息を切らせてようやくたどり着いた自分の屋敷に足を入れようとすると、顔馴染みの門兵がニーナを止める。


『え?オ、オルガンさんにモージアナさん?』



『申し訳ございませんが公爵家以外の者は立ち入りを許可致しかねます』


『お引き取りを願います』


 二人とも苦しそうな表情を見せ、内容を教えてくれた。

 婚約者であったアンドリューから婚約破棄を告げられていたと同時に、公爵家ではとある話が舞い込んでいたのだ。


 ニーナの弟、テリーから姉が殿下に婚約破棄されたと言うのと、殿下から公爵家の家系からニーナを外し養子としてリリンを迎えさせるようにとの命令が。

 王命では無いものの王家のしかも時期皇帝であるアンドリューからの通達に満場一致で、ニーナを公爵家から追放と抹消で話が纏まっていた。

 テリーの手紙からもリリンとは仲良くしていると半分酔狂みたいな文もあったが、ここで殿下に媚びでも売っていれば後々良いことがあると考えての事。

 昔から家族は自分に冷たい所はあったが、いつか必ず向き合えて笑いあえる日が来ると思っていたのに。


 ニーナの体が崩れ落ち、ポロポロと瞳から涙が零れ落ちる。




 逃げる様にニーナは暗黒の領域と呼ばれる入り口まで逃げ込んでいた。門兵のオルガンとモージアナから貰った最小限の生活用品と少量の路銀。

 周りは手入れがされていない森に、奥へと進めば進むほど真っ暗で恐怖と不安でしか無い。ゴクリと唾液を飲み込みながらニーナは足を踏み入れる。


『大丈夫大丈夫、私は大丈夫・・・っ!?』



 ガサッと草むらから音がするとビクリと体を震わせる。

 野うさぎが顔をヒョコリと現れ何食わぬ顔でニーナの所を横切る。ホッとしたのも束の間、突然に辺りが暗くなりゆっくりゆっくりと上の方は視線を向ければ。

 グオオオオォォッ!!!


『デスベアードっ?!』


 ニーナが驚くのも無理もない。デスベアードは凶暴で対象のものをロックすると鋭い爪と牙で体を引き裂き、破壊の衝動が止まらないと魔物図鑑に記載されている。

 危険度は3。1はスライムという弱い魔物、それに対して最大の5は人間の敵でもある魔王とされている。ゴクリと唾液を飲み込み、やらなければ自分が死ぬと分かり護身用の剣を身構える。

 間合いを取りながら。デスベアードの弱点は右肩の後ろ。

 大丈夫と念を押していると目の前のデスベアードが消えた。一瞬の事でなんだと思ったら広げていた間合いをいつの間にかデスベアードがニーナに近づき・・・

 ザクリッ!


『・・・え?』



 突然だったので理解をするのに時間は掛かったが、デスベアードの爪がニーナの左腕に深く食い込んでいるのが瞳に映る。やっと理解したのかニーナが叫び声をあげ、痛みと共に傷口からはドクドクと血飛沫を飛ばしニーナとデスベアードに降り掛かる。


『ぁぁぁああああああっ!!!離せ離せ離せ離せ!』




 その後は無我夢中でデスベアードと戦いを繰り広げ、やっと弱点の右肩の後ろに剣を突き刺すとデスベアードも雄叫びをあげて絶命。

 頭がクラクラする。

 体が怠く思い通りに動かず、地面に横たわり段々と目が霞むのが分かった。ボンヤリとした中で画像の様なものがカタカタと流れ始め。






『ああ嫌だ嫌だ。どうして貴女は祖母と同じ髪色なのかしら、思い出してもムカつくわ』

 ゴメンなさいお母さま。良い子にするから打たないで




『その美貌しか取り柄がないお前は何故私の役に出たてない。出来損ないが・・・』

 もっと、頑張るからお父さま。私を褒めてほしい




『あんたを一度も姉だと思った事が無いね、リリンさまが僕の本当の姉だったらと何度願った事か』

 テリー、どうして?




『貴様に愛は感じない。どうせただの政略結婚だ、貴様も権力に溺れる者だろう』

 違います違います!私は貴方の事を・・・っ




『本当の事言うけどねニーナさま。うふふっアンドリューさまってばーーーーなのよ?可哀想なニーナ』

 あ、ああああっ!!







 酷いっ、酷い酷い酷い酷い!



 たとえその言葉が意識を失っていく中での映像でも大体はいつも蔑ろにされていた。私がいかに頑張っても誰も認めてはくれない。


 全ての顔が嫌悪した表情・・・絶対、復讐してやる。











 誰かがポツリと呟いた。

 《その憎悪、面白い。是非次に目覚めたら逢おうぞ》


 ボンヤリとしか見えなかった真っ黒な黒髪をしたとても美しい人?が声をかけられた様な。手を必死に必死に伸ばそうともその人には届かなかった。






「はっ!」

 ガバリッ…


 次にニーナが目を覚ましたのは見知らぬ天井だった。

 此処は・・・何処?と、辺りを見渡すと何処かの部屋の様だが。ズキリと左腕が痛みに悲鳴をあげそちらを見ればぐるぐる巻きにされた綺麗な包帯。

 痛みが伴う体を無理にお越し、ベットから離れて立ち上がろうとすると。


「あら?お嬢さん、まだ寝てなくちゃ駄目よ」


 ニコリと笑って机の上に美味しそうな匂いがする物を置いて布団を綺麗にするお婆さん。頭にハテナマークをたくさん出しながらニーナもぎこちない笑みを見せるとその奥から。


「やっと目を覚ましたか、人間の娘」


 暗い闇夜に濡らされたかのような綺麗な黒い髪と瞳をしたとっても美しい男性だった。お婆さんはぺこりと頭を下げ、部屋から出て行くと残ったのはニーナと男性のみ。




「あ、の・・・・・」


「ふむ、名前を名乗らないのもアレだな。我はルイス、貴様ら人間が【魔王】と呼ぶものだ」



















 §§§§§§§


「って、言うのが彼で。ルイスと私の出逢いです」


 うっとりとしながらも少女は隣に静かに見守る人物へと視線を向ける。

 豪華な聖堂の中央部には天井が跡形も無く崩れ落ち、その瓦礫からは夥しい血痕が流れ出る。この場には緋色の長い長いカーペットには尻もちをついた優男風な青年と、未だに苛ついた表情を見せる可愛らしい女性。

 青年は豪華な紺碧色のタキシードを纏い、女性は淡いピンク色のとても美しいドレスを身に纏って。右側と左側には沢山の人達や騎士達が呆然とした顔でうっとりとした少女と静かに見守る人物を見た。


 コツリ…


 ヒールの音をたてながら少女は完璧なカーテシーを見せ隣の男性を見やる。その男性は人間離れをした容姿なのだが何処か神秘的な美しさと知性を兼ね備えた、青年とは全く正反対の品格が現れていた。





「どうしてっ!どうしてアンタがルイスさまと居るのよ!!“悪役令嬢”がなんでこの()()()()に出てくるのよっ」


 怒り狂った様にニーナに睨みつけるのはリリン。


 喚いてはいるが腰を抜かしているらしく立てない姿に少し笑いが溢れる。

 他にその騒いでいるリリンの隣では情けなくいい歳してお漏らしをしたのか下半身が濡れているアンドリュー。まぁ、多分。ルイスが睨みをきかせているのだろう、どうして私はこんな人を好きだったのだろうか。

 その奥の参列で元家族も見つけた。

 父だった人は瓦礫の一部が腹に刺さったのだろう。

 血を流している。

 母だった人は弟だったのを抱き抱えながら、まるで恐ろしいものを見ている様だった。


「リリンさまが仰ることは分かりかねますが、ただ。一つ、分かるのが・・・ふふっ」


「な、なによっ!何笑ってんのよ」



「私も思い出したのです、前世を。この世界がとあるゲームと似通っているのを・・・これをルイスに話すと『だったら自由に破壊すれば良い。お前はもう、退場しているのだからな』と、言ってくれたので」


 微笑みながらまるで、幼い少女が嬉しそうにはしゃいでいる様だった。ルイスはそんな彼女を横目にパチンッと指で弾く。と、同時に天井が一気に消え去り青空だった筈の空はどんよりと曇っていた。

 それだけでは無い。


 曇っている色の点々に黒々した点の様なものが次々と増えて行き・・・・・辺り一面を覆い尽くすほどとなる。



「そろそろ領地を広げたいと思っていたからな。ニーナ、本当に良いのか?」


「えぇ。えぇこの国は私を見捨てたのですから故郷は御座いませんし、家族は貴方と貴方の民だけです。・・・それに新しい命も」


「は?もしかしてアンタ・・・?!」





「ルイスは私の旦那でもあり、魔王でもあります」


 ゆっくり。ゆっくりとリリンの方へと歩むニーナ。対してざまぁの代償がこれからふりかかるのに恐怖するリリン。


 さぁ復讐するお時間ですよ?覚悟は良いですか

ニーナ

元公爵令嬢でルイスの妻。

ミディアムで薄紫色の髪に碧色の瞳を持つ。大人しく優しい性格だったが婚約破棄騒動で性格が変わる。


ルイス

とある領域の王で人は魔王と呼ぶ。

黒曜の色をした髪と瞳を持つ、怒ると瞳が紅く光る。冷たい印象を見せるがニーナにはトコトン甘い。


アンドリュー

とある国の殿下でニーナの元婚約者。

金色の髪に蜂蜜色の瞳を持つ。そのまま突っ走る性格でなんでもこなすニーナの事を嫌っていた。


リリン

アンドリューの婚約者で子爵令嬢。

ロングで桃色の髪に茶色の瞳を持つ。権力にしか興味無く、ニーナを蹴落として婚約者に。

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